【緋彩の瞳】 きらきら ②

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

きらきら ②

「……歌詞ですか」
静かな図書室で話をしても、咎めてくる人はいない。今は真姫と園田先輩の2人しかおらず、図書委員もさぞかし暇と言わんばかりだ。
「押し付けられたとはいえ、ことりは衣装を担当している以上、お願いできません。穂乃果はそもそも、語彙力に問題があるといいますか…」
「それで、園田先輩が歌詞を書くということになったわけですか?」
弓道部のエース園田海未先輩は、ハートマークを飛ばすクラスメイトの妄想とは違い、ショボンとした顔で肩を落としている。これ、後ろの席の子に言ったら、それはそれで素敵とか言うのね、なんて考えながら、何となく絶対言ってやらないでいようって思った。
「………穂乃果が勝手にライブのポスターを作って掲示板に張り出してしまった手前、オリジナルじゃなければいけないということになってしまいまして」
真姫もそれは見た。ついでに、園田先輩が幼馴染という高坂穂乃果さんを怒っていたところも見ていた。
「そうですか……まぁ、頑張ってください」
国語辞典、英語辞書、フランス語辞書、ドイツ語辞書、イタリア語辞書、古今和歌集、源氏物語、三国志から一体何のインスピレーションを得ようとしているのか、わからない。こんな薄暗いところにいるよりも、桜が散り始めているこの季節の一瞬を楽しんで外をウロウロした方が、まだ歌詞が出てくるんじゃないかって、そんなことをアドヴァイスしようかと思いながらも、別にそんな優しくしても、真姫には関係のないことだと思いなおす。

でも、何と言うか、困った眉を見ていると、ついつい言いたくなる気持ちになる。
どうしてだろう。

「真姫、何かアドヴァイスをしていただけませんか?」
「………出た、エスパー」
園田先輩は、真姫が考えていることをまるで読んでいるようだ。
咳払いをひとつ、急いで視線を逸らせる。
「そんなもの、できませんよ」
「でも、真姫は歌を作っていますよね?」
「いや、まぁ、あれは誰かに聴かせるとかじゃなくて、自分のためですから」
「でも、ちゃんと私には真姫の想いは伝わりました。そういう、人に伝わるような言葉を産むにはどうすれば」



天然のタラシね。




1年生の間で彼女の名前は、1日1回以上囁かれる。後ろの席の子が言うには、他校の女子生徒からも人気があるんだとか。試合に出るたびに、ファンを増やすらしい。弓道部に入るらしい子はスクールアイドル部にも入部したらいいのに、曰く、舞台上に立っている園田先輩を観たいとかいう、よくわからない理由で入部する気はないとか。いや、真姫にはどうでもいいことなんだけど。

「……それは、相当、園田先輩が純粋なんだと思います」
「いえ、真姫の歌はいい歌でした。歌詞も曲も。愛してるばんざーいって」
「ちょっ!」
口ずさみ始めた園田先輩の口を、慌ててふさいだ。いきなりのことで、心臓はまるで冷水をかけられたように飛び跳ねて、顔は熱を出した時のように熱くなっていく。園田先輩は、もがいて逃げると言うわけではなかったが、じっと真姫を見つめてくる。
真っ直ぐに見つめてくる。

「………は、恥ずかしいのでやめてください」
何が恥ずかしいのか、よくわからなくて、真姫は視線を上と左右に振った。小さく頷くのを確認して、そっと手を外す。
「えっと……曲のテーマとか、まず、決めた方がいいですよ」
「テーマ、ですか?」
なんでアドヴァイスしてるんだろう。自分で自分に突っ込んだ。
「やみくもに辞書を並べたって何も出てこないですよ。たとえば、春をテーマに書くとか、友情をテーマに書くとか」

恋をテーマに、とか。
言わないけど。

「あぁ……なるほど、そうですね。テーマですか。できれば、私たち3人のこれからの、何と言うか、始まりにふさわしい感じがいいですね」

なぜ三国志と源氏物語があるのだろう。
何と戦うつもりだったのだろうか。
誰と何を奪い合うつもりだったのだろうか。

「じゃぁ、それで、園田先輩が自分たちの始まりにふさわしいと思う単語を10個くらいまず並べて、そこから作文を作るみたいに言葉を作ってみては?」
これ、完全にアドヴァイスになってると思う。真姫も正直、自分でもなかなかいいこと言ってると思ってしまった。こんな大サービスしてしまうつもりなんてないのに。
「なるほど……真姫は流石ですね。とても参考になります」
何か、言葉が閃いたのだろうか。その澄んだ瞳が子供のように”キラキラ“している。



……
………何よこの生き物、可愛いんだけど



初めてひらがなを覚えた幼稚園児みたいに、園田先輩は真っ白なノートにシャキッと背筋を伸ばして向かい合った。


始まり
喜び
熱い
鼓動
希望
未来



「………あの、真姫」
「何ですか?」
「その、隣でじっと見つめて声に出すのは……」
1つ1つ書いていく無邪気な様子を見つめていると、ラブレターを書いているのを隠すように、園田先輩がノートに覆いかぶさった。何か、顔が赤い。


何、この生き物。
可愛い。


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Date:2016/02/14
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