【緋彩の瞳】 優しくしないで

緋彩の瞳

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その他×海未小説[ラブライブ!]

優しくしないで

「海未ちゃん?」
同じ歩幅で歩いていた海未ちゃんが立ち止る。

心地よいリズム
ことりに合わせてくれているリズム
それが当たり前のリズム

「すみません、携帯電話が」
ポケットに手を入れて、バイブ音を鳴らす携帯電話の画面を操作する視線が、ことりを見つめ返そうとしない。ゆっくり文字を追って左右に揺れる瞳の色が、恋色へと変わっていく。

「どうしたの?」
「絵里からです。BiBiの曲作りのことで相談があるようですね」

練習が終わって、着替えて校門を出たばかりなのに、このタイミングで絵里ちゃんが携帯で連絡を入れてきたって言うのは、きっと、みんながいるときに言えなかったからだと思う。誘う勇気を持ち合わせていない癖に、携帯電話に縋るなんて。

「それで?」
「あ、はい。今から少し時間が欲しいと」
「どうするの?」
「どうすればいいですか?」
「ことりに聞かないでよ」
「………えっと、そうですね」


毎日一緒に帰ろうって、約束をしたことはない。肩が触れ合ったら、当たり前のように隣を歩く。ことりが重たいものを持っていたら、知らない間にそれが海未ちゃんの手に渡っていて、気が付いたら家の前まで送ってくれている。

ずっと、それが当たり前に続くなんて思っていたのは、海未ちゃんのせい。

海未ちゃんが悪い。


「曲のことなら、真姫もいるでしょうし……。違うユニットとはいえ、衣装はことりも担当していますから、せっかくなので絵里たちと合流しましょうか」
「……絵里ちゃんは、真姫ちゃんを連れてこないと思うよ」
「え?そうですか」
「鈍感さんだね、海未ちゃん」


絵里ちゃんが海未ちゃんを気に入っているって、本当はわかっているくせに
海未ちゃんだって絵里ちゃんのこと、好きなくせに


「えっと……その、すみません。では、絵里には日を改めてもらいます」

ことりが一生懸命口角を上げて、作った笑顔を見せれば見せるほど
海未ちゃんの眉は気まずいといわんばかりに、怯えた子犬みたいな形になってしまう

「どうして?きっと、絵里ちゃんは勇気を出して連絡してきたと思うよ」
「ですが……」
「別に、今日は私との約束もしてないよ?」
「えっと……はい」

その表情を見せ付けられるたびに、思い知らされる
海未ちゃんがことりの気持ちを知っていて、知らないフリしていることを

「行かなくていいの?2人で色々、おしゃべりして来たら?」
「よいのですか?」
「うん、ことりは帰ったら、海未ちゃんたちのユニットの衣装を考えるから」
「でしたら、その……お手伝いをした方が」
「頭の中にしか構想がないから、まだお願いすることはないよ」
「……そう、ですか」

こうやって、海未ちゃんの気持ちを揺さぶって、揺れている瞳を見つめても、さわやかな空気が肺を満たさないことは分かっている。

だけど

困らせることを楽しんでいるのか、心苦しいと思うのか、本当はもう、自分でもよくわからない。



自分の想いの終わらせ方がわからない


終わらせたいと希っているのか
それとも

あの揺らぐ感情を利用して、傍にいてと希えば
『友情』が海未ちゃんとことりを
堅結びしてくれるのではないかと


海未ちゃんの初恋を、今ならまだ、ことりのものにできるんじゃないかと

今なら、まだ……



「すみません、ことり。では、お言葉に甘えて、絵里と話をしてきます」

困った眉のまま、瞳が一度だけ握り締めた携帯電話を見つめた。
海未ちゃんの隠しきれない想いは、それだけで伝わってくる。


「……うん。楽しんできてね」

ことりの想いを知っていて
知らないフリをして
それでも、自分の恋心には嘘を吐けなくて
海未ちゃんはそういう人で


だから、あとはことりがこの想いを終わらせるしか、道は残されていない。



「ことり、いつも、その……応援してくださって、ありがとうございます」


海未ちゃんが、じっとそれを待っているということも。
いつまででも待ち続けるつもりでいることも。

「がんばって、海未ちゃん」
「じゃぁ、また明日」


絵里ちゃんの元に向かう軽やなリズムは、さっきまで合わせていた2人のそれよりも、ずっと嬉しそうで楽しそうで、幸せそうに耳に響いた。


「あ~ぁ。海未ちゃんって、本当……どうしようもないおバカさんだよね」



早く、この恋を終わらせることができたら……
そうさせてくれないのは、海未ちゃん自身なんだと



早く気が付いてくれたらいいのに


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Date:2016/02/26
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