【緋彩の瞳】 光の雫

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

光の雫

瞼は開いているだろうか
この瞳が何も捉えられないのは

ここが暗闇だからなのか

犯した罪の矢がマーズの瞳に刺さり
光を求める術を断たれたのだろうか

左腕を動かしても
本当に動かしているかどうかわからない
瞳を左右に揺らしてみても、何一つ何かを捉えることができない


光を失った


前も後ろも、そしてマーズ自身が何者であるのかも

何一つわからない


歩み方も
声の出し方も
赦しを乞う方法も



「……ヴィナ」




光が欲しいと強く希った
マーズだけの光を

この身体が罪で汚れているのであれば
罪を照らす光が欲しい

浴びた血飛沫がどす黒くなり
この瞳に映るすべてが罰でしかなくても

光さえあれば






「魘されていたけど、大丈夫?」
「…………ヴィナ………」


声が聞こえた。
耳が正常に音を捉え、言葉の意味を理解しようと痛みを伴って頭の中を駆け巡る。

「………ここは?」
「レイちゃんの家の、レイちゃんの部屋の、レイちゃんのベッド」
「………ヴィナ……」
「そうよ、私よ」


夢、だった。

そう理解するまでには、それほどの時間を必要としなかった。
美奈の声が全身に廻るのに10秒もいらなくて、小さなため息ひとつ分で十分だから。


「ヴィナ………」

腕を動かすと、自分ではない人の温もりが触れる。
きつく握りしめれば今度こそ、赦しを乞えるような気がした。

「嫌な夢でも見た?」
「何も………何も、見えなかったわ」
「今は?」
「………見えている、と思う」


広いのか狭いのか、それすらもわからない一面の暗闇
腕を伸ばすことすら、困難だった暗闇の世界


孤独に慣れていたはずの身体が
永遠に孤独に縛られるのだと知った世界


「ちゃんと、見てよ」

息が一瞬できなくなるような、優しい光が胸を圧迫してくる
ついさっきまで、強く希った光の旋律

この身が燃え尽きる刹那に
二度と、この光を求めないと自分に言い聞かせていたのだと、思い出した


思い出して、この世界は、あの世界ではないのだと、知ることができる




「………ごめん、美奈」
「うん、そうよ。私は愛野美奈子だよ。レイちゃんは、火野レイ」
「そうね」
「私が隣で寝ているのに、勝手に1人の世界に行かないでよ」
「……ちゃんと、美奈が捕まえていないからでしょう?」


両腕できつく、この光を失いたくないと抱きしめた。

温かい光
眩しくて痛くても、瞳を逸らしたくない


求めたくないと願ったあの刹那
それでも、求めてしまう光の旋律



「……苦しいよ、レイちゃん」
「美奈のせいでしょ」
「何それ、誘ってんの?」


もっと、照らして欲しい
心臓を突き刺すように

もう二度と、暗闇に引きずられないように


「………陽が昇るまで、ずっと抱いて」
「何時間あると思ってんの?」

薄闇の中、じっと見つめてくれる愛しい瞳
愛していると言わなくても
愛していると伝えてくる瞳


「美奈」

その光に照らされなければ、この瞳が緋彩に染まらないのだと
彼女は教えてくれた


「私は傍にいるって、ちゃんと身体に教えてあげないとね」
「……そうね」

ひんやりとした感触は
柔らかな光となって唇に舞い降りた


愛していると言う囁きが鼓膜を震わせる

身体中に注がれる光
強く希った光


「………好きよ、美奈」


「うん。前世の頃から知ってる」



この光だけを信じている







緋彩の瞳 旧サイト開設より 10周年 
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Date:2016/02/27
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