【緋彩の瞳】 Kiss your lip ④

緋彩の瞳

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みちる×レイ小説

Kiss your lip ④

「みちるさん」
「…………暗い顔して、どうしたの?」



 12時前には頑張って行くからと、6日になる1時間前にメールが入った。レイは夜ご飯も食べることができずに、ソワソワと庭を何度も何度も眺めては、諦めの溜息と、今更これでよかったのかって不安が押し寄せて、空っぽなのに何かを吐きそうになりながら、もう何時間も落ち着きを失っていた。今更ながら、申し訳ない程度の蕾のチューリップのことなんてなかったことにして、みちるさんのマンションに場所を変えた方がいいのか、なんて思ってもみる。でもきっと、そんなことをしたら、それこそなぜなのかと聞かれるに違いない。

本当のことを、言えばいい。
咲かなかったことを。
まだ、もう少し時間がかかってしまうことを。











「間に合わなかったの。全然」
「…………え……何のこと?」


12時を迎えても、時計は日付が変わったことを音で知らせるようなことはせず、ただただ秒針を動かし続けるだけだった。夜のこの時間は、いつも裏庭からレイの部屋に入る。開かれた雨戸。部屋の明かりがみちるを包み込んで、レイがそこで待っていてくれたのだと知った。楽しそうな表情で、お帰りなさいって言ってくれると想像していたのに、なぜか表情は落ち込んでいる。


「レイ?」
「えっと……ううん。えっと、何でもない。その……お誕生日、おめでとう」
後ろ手に隠されていたものが、みちるの腕の傍に差し出された。
綺麗な包装をされた細長い箱。
「ありがとう。開けてもいい?」
「えぇ」
抱きしめてキスをして、ただいまって伝えて、お帰りって言われて。
そう言う想像を全部省略して、レイはみちるにプレゼントをくれた。

嬉しいっていう思いがあるのに、気持ちがちょっとだけ付いていけない。

仕事道具と、仕事関係者に貰ったプレゼントの紙袋たちをすべて畳において、それから畳の部屋のこたつに足を入れた。

一度深呼吸をして、それから心を落ち着かせる。

レイからのプレゼントを心待ちにしていたなんて、隠す必要なんてない。正直、マンションではなくてレイの部屋に呼んだということは、何かサプライズでもするつもりかしら、なんて期待も多少はあって。
「みちるさん、何か温かいものでも飲む?」
「いいわ、大丈夫よ」
少し落ち着きなく視線が左右に揺れているのは、レイなりの照れ隠しなのだろう。包装紙を破かないようにそっとテープを外して、真っ白い箱を開けるとバブルラップで何かが包まれているものが見えた。
「何か壊れやすいものなの?」
「うん、まぁね」
そっとそっと包まれているものを剥がすと、そこには綺麗なチューリップが現れた。


「綺麗。………硝子なのね、これ」
「うん」

薄いピンク色のチューリップ。少し重い硝子のそれは、生花にはない輝きを放っていた。
「とても綺麗だわ」
「気に入ってくれたのなら、よかった」
「嬉しい。ずっと、枯れることなく飾っていられるのね」
大切にそっと愛でていれば、永遠に綺麗に咲き続けてくれる。まさかレイが花をくれるとは思わなかった。硝子でできた花なんていうのは、想像をはるかに上回るものだった。
「……大げさよ、みちるさん」
「本当に、ずっと飾っておくわ」
「そう?」
少し頬を赤くして、可愛らしく笑顔を見せてくれる。やっと、やっとレイのその顔を見られてホッとした。きっとレイは今日まで、こうやってみちるの手に渡るまで、プレゼントを選ぶことに悩んでいたのかもしれない。
「レイ」
チューリップをきつく抱きしめて、割れてしまわないように。そっとバブルラップに包み、箱に戻した。代わりにレイを抱き寄せた。頬に唇を押し当てると、薄いピンクの唇の跡が付いた。
「ねぇ、レイ」
「ん?」
「ピンクのチューリップの花言葉って知っているかしら?」
「え?……そういうの、考えないで買っちゃったわ。良くない意味なの?」
腕の中のレイは、一瞬にして真顔になった。花言葉なんて気にも留めないだろうってわかっていて、この後どんな表情に変わるのかしらって思うと、嬉しくて。
「愛の芽生え。あと、誠実な愛っていうのがあるわ」

ほら、ドンドン顔が赤くなってしまう。
一緒に向かえる誕生日が3回目でも、いつまでもレイがみちるを想ってくれているのだと感じ取ることができる。飽きることがない。


「……知らない。っていうか、チューリプの色ごとに違うの?」
「えぇ。白は失われた愛」
「……白じゃなくてよかったわ」
「紫は不滅の愛」
困った表情を見せて、それを隠すようにみちるの肩に額を押し付ける可愛い仕草。
ずっと、レイに飽きることがない。
「…………いずれにしても“愛”なのね」
「3月の誕生花なのよ、チューリップって」
「それも、ごめんなさい。知らなかった」
硝子の花を扱うように、レイに優しくキスをする。レイから何かを欲しいというよりも、こうやってレイがみちるのことを想って、プレゼントを選んでくれたと言うことが、とても幸せなことだって、伝わればいい。

そして、傍にいさせてほしい。
また、来年もこうやって、抱きしめたいという我儘を聞いて欲しい。





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Date:2016/03/06
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