【緋彩の瞳】 淡く広がるこの想いは END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

淡く広がるこの想いは END

「ペコとの逢瀬はどうだったの?」
食堂での夕食後、寮へと戻る途中にダージリンが足を止めて振り返った。海上をゆっくりと進む船の上は夜空が綺麗で、人口の光のない場所まで、散歩に行こうかしらと何となく考えていたところだった。
「残念ながら、告白ではありませんでしたわ」
「あら、それは残念だったわね」
「3人揃って参上されましたの」
「羨ましいわね」
「まるで女子校みたいにキャーキャー言って、ひとしきり騒いで嵐のように去って行きました」
「ここは女子校よ」
「あら、そうでしたわね」
ダージリンが足を止めたから、アッサムも足を止めた。振り返った姿を見つめたまま。
「それで?他愛ないガールズトークを楽しんだということ?」
寮から漏れている重たげな光が“教えろ”という表情を照らしている。

こう言うところはわかりやすい。

「どなたかのお誕生日が近づいておりますでしょう。そのことですわよ」
「………では、私は今年も何も知らないフリをして、驚かなければならないわね」
「そういうことです。上手に演技をしてください」
満更でもないように腕を組んで嬉しそうな表情を見せるあたり、何となくあの3人に通じるものもある。嫌でもあの1年生はボロを出すに違いない。勝手な行動を取って、あらぬ疑いをかけられて祝う本人に怒られる可能性もあることを思うと、素直に言っておく方がいいのだ。多少の悪さなら、見逃してくれるだろう。
「楽しみね。あなたは何かしてくれるの?」
「ご希望があれば伺いますわ」
去年、大勢でお祝いをして、個人的に何もしていないことをダージリンは気にしているのだろうか。かといって、アッサムの誕生日はどうだっただろう。去年は先輩主催のお茶会を開いてもらって、彼女も来ていたはずだ。ティカップをもらっただろうか。いや、それは先輩からだった。お互いにお互いの誕生日にお祝いなどしていないのだ。でもそれを今の今まで、気にしたことはない。
「そうね、考えなければいけないわね」
1歩、2歩。アッサムはダージリンの横へと歩みを進めた。

左の小指でそっと、青いセーターの袖に触れてみる。

「難題をぶつけて困らせたりしないでくださいね」
「さぁ、どうしようかしら?」


この小指が望んでいるものは、たぶん。


「部屋でお茶でもいかが?」
ダージリンが誘って来た。前と同じように是非にと答えようと思ったけれど、言葉に詰まってしまう。
「………アッサム?」
「いえ、今日はあの子たちの相手をして疲れてしまいましたので」
「そう?」
少し開かれた指は、彼女の指を掴もうとして。
それは自分からするべきことではないと思い、止めた。
そのすべてを見られていたのだろう。
動かせない指を温かいダージリンの右手に握られた。


「ダージリン?」
「嫌?」


「………まさか」


大げさに首を振るなどはしなかったが、強い言葉で否定もできない。

嫌ではないが、このまま身を任せたまま、ゆっくりと流れる感情に帆を張って、
追い風に身を任せることが正しいのか、アッサムにはわからないのだ。

「とても近い人の心を知ることは、そう簡単にはいかないということかしら?」
「………だとすると、私はまず、私自身のことを知る努力が必要ですわ」

脱力してゆく指に、痛いくらいダージリンの力が加わる。
傷つけるようにきつく握りしめてくる。


「私は待っていれば、と、思っているのだけれど」
長い間、その背中を見つめていたのだから、彼女が何を考えているのかある程度はわかる。アッサムが2年ぶりにダージリンと呼んだ時に見せた、ホッとしたような笑みも。


触れる指に感じる淡い想い

彼女に“想い”を悟られている


「待っていてください」

何故なのか、いつからなのか、これが一体何なのか
緩やかに風に身を任せていれば、どこから始まり、どこへ向かうものなのかわからなくなってきてしまっている



今が心地いいとさえ思う



「それがあなたの今の想いなら。では、そうね……誕生日まで待っているわ」
「やっぱり、難題を押し付けるのですね」
「あらやだ、私がいじめているように言うのね」
「そうは申しませんが」

握られている指を優しく引っ張られ、歩みを合わせた。
この巨大な船が向かっている方向は向かい風だが、涼しくて気持ちがいい。

「知っている?チャーチルは鈍足で装甲が分厚いのよ」
「チャーチル搭乗歴がもっとも長いのは私ですよ、ダージリン」
「そうだったわね」
「あなたより、チャーチルのことを知っていますわ」

チャーチルの車長のことも、同じくらい知っている。
言いきることができればいいのに。

「じゃぁ、車長のこともよく存じているのね」

彼女はアッサムの考えていることを読んでくる。
答えられないと分かっていて。

「聖グロで傍にいるのがもっとも長い……はずですわ」
「そうだったわね」

近くて遠い
そう感じていた

「ですが、“ダージリン”のことは」
「それは安心なさい。私も私のすべてを知っているわけではないわ」

握られた手を振りほどかずにその横に寄り添う。
ほんのわずかでも身体を傾ければ、腕も触れるほどの距離。

「私は知ることはできますか?」
「アッサムができなければ、誰ができるのかしら?」
「……ネットで検索してみましょう」
「紅茶の美味しい淹れ方くらいしか、出てこないわよ」
「そうでしょうね」
握られていた指に力を込めた。その動きがダージリンの右腕に伝わり、ゆっくりと手を繋ぎなおす。

彼女の小指の側面を4本の指で包み込んだ。

「あら、恋人繫ぎをしてくれると思ったのだけれど?」
「自惚れが過ぎましてよ」



心に淡く広がるこの想いは………


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Date:2016/04/01
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