【緋彩の瞳】 十五夜の知識

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

十五夜の知識

「本当……綺麗だね」
「まぁ、十五夜だからね。晴れていてよかったわね」
「レイちゃんと一緒だから、きっと綺麗に見えるんじゃない?」
「自惚れてるわね。十五夜だからよ」




『あなたへの月』




家に来いなんていう誘いは、今まで一度もなかったから、
ものすごく色々いい方向ばかりのことを考えて階段を上ると、月明かりに照らされた女神が立っていた。

本能的に抱きつこうと広げた両腕から、音もなく逃げられてこぶしが鳩尾に直撃する。
あっけなくダウンを取られた。まさか、殴りたくて呼ばれたというわけかと、相変わらず読めないレイちゃんの心の内を少ない脳みそで推理してみても、まったくもって解けるはずもなくて。

「今日は中秋の名月でしょ」
縁側に座ったレイちゃんは、懐かしさと痛みを思い出させる夜空に輝く月を指さした。
「ちゅ、ちゅうしゅう?」
「……お月見の日よ」
「あぁ、なるほど」
幼稚園児に教えるようなレイちゃんの言葉でようやくわかった美奈子は、レイちゃんがそれを見せたくて美奈子を呼んでくれたことの方に感動を覚えてしまう。
「うちは高台にあるし、周りも比較的暗いから、月が綺麗に見えるの」
「そっか」
首が痛いくらいに見上げて瞳に映された満月
胸が熱いのは、レイちゃんを思う気持ちのせいなのか、前世から受け継いだ強い意志が月を恋しいと思っているのか。
「不思議よね。私たちは確かにあそこにいたのに、それでも月を見上げて綺麗だと思ってしまうのよね」
レイちゃんはどんなことを今思ったのだろう。
「でも、私たちの前世は確かに月で生きていたけれど、今の私たちは違うわ。だから、やっぱり綺麗だと思う感性は、私たちが今を生きているという証拠なのよ。私は、地球で、レイちゃんといる方がずっといいわ」
年に一度の十五夜を楽しむ、そういう時の流れに身をゆだねながら
果ても穢れもない月の王国にいるよりは、ずっとずっと幸せなのだから
幸せになりたくて、あの月は一度終わったのだから。
「………私も、その方がいいわ」
愛が心臓にめり込んだ。
月夜に照らされている女神の横顔は、十五夜なんて比べるに値しないくらい麗しい。
「あの、それ、誘ってるんだよね?」
「………単純な脳細胞ね」
抱きしめて唇を奪おうとすると、顎を持ってぐいっと月に強制的にむけられてしまう。





「本当……綺麗だね」

まだ、もう少し、月の美しさに見とれているレイちゃんを見て居なきゃいけない。
それはそれでその瞳が綺麗で愛しい。


「まぁ、十五夜だからね。晴れていてよかったわね」

三日月でも、満月でも、たとえ月のない夜でも、いつでも誘われたらどこにでも行っちゃうんだろうな、きっと


「レイちゃんと一緒だから、きっと綺麗に見えるんじゃない?」

好きだから


「自惚れてるわね。十五夜だからよ」

幸せそうな顔をしちゃうんだからさ

「レイちゃんの瞳に映っている満月、私に見せてよ」

欲しくなるでしょ。

今度はそっと優しく肩を抱いて、瞼の上にキスを落とした。



関連記事

*    *    *

Information

Date:2011/09/12
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/7-4795dee5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)