【緋彩の瞳】 閉じ込めた想いは END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

閉じ込めた想いは END


「アッサムを知らない?」
寮に歩いてくるクラスメイトに声を掛ける。食堂にまだ残っているのではないかと聞いて、流石にその場に自分が顔を見せる訳にはいかないだろうと思いとどまった。主役だった人間が後片付けの場に顔を出すと、周りが迷惑なだけだ。妙な焦りを落ち着かせつつ、仕方がないので部屋に戻った。プレゼントを整理して、花を花瓶に飾り、アッサムの部屋のドアが開かないかどうか、耳を澄ませる。待っても待っても、彼女は戻ってくる気配はない。1時間が経過した。一度、アッサムの部屋のドアを叩いてみる。絨毯敷きの廊下がその音を吸収するように、静けさは心にだけしか響かない。


彼女は一体、どこで何をしているのだろう。
ダージリンは、一体何がしたいのだろう。



 夜も遅くなってきた。この時間までまだ、食堂の片づけが終わらないと言うことも考えにくい。部屋に戻り、彼女の携帯に電話をしてみようかと思い悩む。受話器を何度も上げたが、手がダイアルに触れることを嫌がっている。声を聞いて、部屋に呼び出して、祝ってくれとでも言えばいいのだろうか。それはまた、立場を利用した押し付けになってしまうのではないか。そんな想いと、そうじゃなくて自分の素直な気持ちなのだと。どちらもダージリンの気持ちなのだと。でも、それでも彼女はそう読み取ってくれるかなんて、わからない。

「………何をやっているのかしら」

結局重たい受話器を手放した。食堂ではないどこかにいるのだろう。探しに行くしかない。


アッサムの部屋の前を通り、もう一度ドアをノックしてみる。やはり戻ってきていない。

「……どこにいるのかしら」

廊下を進み、階段を下りようとしたところで、見知った人間が階段の下でじっとしている姿が見えた。なぜ、3年生の寮の玄関にいるのだろう。誰かを待っているのだとしたら、おそらくアッサム。

「どうしたの、ローズヒップ」
階段を下りながら声を掛ける。ハッと肩を震わせて、彼女は顔を上げた。
「ローズヒップ?」
「……ダージリン様」
階段を下りると、いつもの元気いっぱいの笑顔が消えている顔がはっきりと目に見えてくる。
その様子を見て何かがあったのだと知った。
目が赤い。

「どうしたの?」
「ダージリン様は、アッサム様のことはお好きですか?」
「………は?」
「お好きですか?」

真っ直ぐに、涙している瞳が見つめてくる。
アッサムに何かあったのだろうか。
アッサムはローズヒップに何か、話しをしたのだろうか。それとも、何か変な考えを突っ走って、ローズヒップが余計なことを言いに来たのだろうか。

でも、彼女の目は赤い。

「何?いきなり、何を言っているの?」
「アッサム様はダージリン様のことをお好きだと思います。ダージリン様はアッサム様のこと、お好きですわよね?」

「………えぇ、もちろん」

アッサムのことが好き。
どうして、ローズヒップに確認を取られなければ、声に出せないのだろう。

「アッサム様、泣いていましたわ」
「………泣いていた?」
「不要になったからと、私にこれを押し付けましたの」
ローズヒップは、小さな紙袋をダージリンのお腹に押し付けてきた。
知っているブランドのロゴの入った紙袋。
「アッサム様が用意していた、ダージリン様へのプレゼントですわ」

それがなぜ、ローズヒップに”不要“なものだと渡ったのだろう。
ダージリンはいつ、アッサムを傷つけるような失態を犯したと言うのだろう。
昼のことだろうか。
あんな些細なことで。
いや、それがきっかけになった別の何かがあるのだろうか。


「アッサムは本当に泣いていたの?」
「どうして………どうしてアッサム様が泣かなければいけないのですか?ダージリン様がアッサム様に意地悪をなさったのですか?」
「何を言っているの?」
「アッサム様を泣かせるのは、ダージリン様以外いるはずありませんでしょう?」

目を赤くして、睨むように見つめてくるローズヒップ。ダージリンを攻め立ててくる。押し付けられた紙袋を両手で受け取った。崩れた紙袋から見えるピンクの包み紙。

「アッサムはどこ?」
「………風に当たってくるとおっしゃっていましたわ」

何も知らない間に、アッサムを傷つけていたのだろうか。いつ、どんな言葉で。
何もわからない。だけど、ローズヒップの言う通り、アッサムが泣くのなら、それはダージリンのせいだろうと言うのはわかる。

「船尾の方角?」
質問に小さく頷くローズヒップ。


「アッサム様を泣かせるダージリン様なんて、大嫌いですわ」


はっきりと言い切ったローズヒップの言葉。初めて人から言われた言葉に、肩が震えた。
零れ落ちそうになる涙をゴシゴシと袖で擦りながら、ローズヒップは逃げるように去って行く。


大きな音を立てて開かれた玄関。勢いが良過ぎて、開きっぱなしになっていても、構わず走り、闇に消える背中。

ダージリンはその場に立ち尽くしたまま、肩の震えが納まらずに、一歩を出せなかった。
アッサムを探しに行かなければ。
泣かせてしまったアッサムを。


あらゆることを想定して、いつでも冷静沈着。それが身に沁みついているはずなのに。
真っ白になってゆく思考回廊と、真っ暗闇に放り出した身体。


「アッサム……」

なぜ、泣いているの。
泣いていると聞かされただけで、なぜこんなにも不安になるの。



この苦しさは

アッサムのことを……




関連記事

*    *    *

Information

Date:2016/04/11
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/701-21f0b4db
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)