【緋彩の瞳】 片想いと戦いと ①

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

片想いと戦いと ①

 開始早々にクルセイダーは2個隊に分かれた。ローズヒップとクランベリーが敵の背後を狙いスピードを出して迂回しようとしている中、バニラとカモミール車は隠れているフラッグ車を探し回っている。堅実に隊列を組み行進するマチルダⅡとチャーチル。片や、あちこちに走り回るクルセイダー。なんというか、1年生たちらしい。ルクリリとローズヒップの考える作戦らしさが良く見えてとれる。4度やり直しをさせた作戦は、それでも粗さが目立ったが、練習時間を考えるとそこを落としどころにすることが最善として、ダージリンは許可をした。一言、これで本当にいいと思うのなら、必死になって進めろと伝えた後、おそらくルクリリはダージリンたちには何も言わず、作戦に改良を更に重ねてきているようだった。ヘッドフォンからは、誰ひとり紅茶を飲んでいる様子が聞こえてこない。きっと、緊張しすぎて、完璧に忘れているようだ。

アッサムが淹れてくれた紅茶はとっくに冷めていた。アッサムも最初の一口だけ飲んで、じっとモニターと無線に集中している。互いに様子を睨み合うような形で、なかなか攻撃が始まらない中、バニラたちの部隊がフラッグ車を発見してから、チャーチルとリゼ、キャンディ車がフラッグ車へと方角を変え、部隊が4つに分かれ、そこから大きく流れが変っていった。

プラウダも今回はかなり落ち着いて、冷静に対応してきている。相手の出方を互いに探り合いながら、時間だけが流れるような展開だ。

アッサムも隣で、じっと見守るだけ。真剣な瞳がモニターのクルセイダー部隊を追いかけている。だんだん不安そうになる瞳。

時間の経過につれて、1両、1両と白旗が上がり始めた。マチルダⅡ3両、クルセイダーは2両撃破された。相手の撃破は3両。想定していたよりも、多く撃破している。
「大洗女子が15両対6両で戦ったのよ。まだまだいい方よ」
「そうですね」
ローズヒップとクランベリーがリミッターを解除しているようだった。敵フラッグ車が雲隠れしてしまわぬように、チャーチルの前に引きずり出そうと、走り回っている。追いつくまでの距離はまだある。
「プラウダも相変わらず、逃げ回っておびき寄せるのがお好きね」
「クルセイダーもよく動き回っていますから、なかなか上手く行っていない様子です」
ヘッドフォンから、ローズヒップとルクリリが叫びながら確認し合う声が聞こえる。合間にペコがフラッグ車の位置の特定と、向かわせるべき場所を指示しているから、ちゃんと連携は取れているようだ。全員が、ルクリリの指示の通りに動けている。

「次、どうなるかしらね」
「チャーチルの後ろから、敵が近づいているのを、ルクリリはわかっているのかどうか」
「わかっているでしょう」



マチルダⅡが盾になったために1両やられたが、プラウダの車両を2両撃破した。スピードを上げて逃げるより、犠牲を出して撃破する方法を選んだようだ。

『ローズヒップ、DAの最後の作戦は?』
『OKですわ!』
『よし!いけぇ!』

ヘッドフォンからルクリリの声がして、隣のアッサムがパラパラとノートを捲っている。
「ダージリン様、最後の作戦って何でしょう?」
「知らないわ」
「知らないのですか?」
「そこに書いている以外、あの子たちの秘密なのでしょう」

プラウダが全力でチャーチルに向かってくる。後ろ、横と3方向から真っ直ぐに。モニターに映し出されるキャンディのマチルダⅡが撃破されて、白旗が上がる様子。相打ちでIS2を撃破した。
「ダージリン様なら、どうされます?」
「逃げるわね、IS2の脇を通って」
「そうですね。でも、追いつかれます」
「まもなく、あちらのフラッグ車もチャーチルの前に来て、4方を囲まれるわ」
「前方から2両、3方向から1両ずつ」

相手にはクラーラが残っているから、チャーチルを仕留めにかかるのも時間の問題だ。一方的に攻撃を受けながら、決して止まらないで撃ち返そうとする姿。逃げることもなく、真っ直ぐにフラッグ車との距離を詰めて行く。

「ローズヒップはフラッグ車に真横から攻撃するつもりでは?」
アッサムがモニターを眺めながら、意図的にローズヒップが大きく旋回しているのを指さした。
「……遅いわ、もうクラーラの射程内よ」

ローズヒップの車両が、プラウダのフラッグ車T34/76の真横からまっすぐ激走してくる。クランベリーがT34/76に追いついて横に並び、車体ごとぶつけてスピードを止めようとしている。

「あっ!!!」

アッサムが立ち上がった。

ルクリリが車体を急旋回させる指示を出している最中、T34/85からの砲撃がチャーチルの後ろに着弾した。
その3秒後、ローズヒップのクルセイダーは、クランベリーが必死に車体を当てながら動きを鈍らせているフラッグ車に向けて最高スピードで走って来て、至近距離の一撃を与え撃破した。

停止することができずにクルセイダーはT34/76に衝突して、真っ黒な煙を上げて、クルセイダーにも白旗が上がった。
それでも、それよりもわずかに早く、チャーチルの白旗は上がっており、モニターを見守っていた聖グロの生徒たちは、言葉を失い静かになっていた。


「………面白い試合だったわ」
「急旋回が3秒遅かったですね」

観ていて、面白かった。

いかなる時も優雅、だなんて。

欠片も似合わない戦いだったけれど、アッサムの言う通りがむしゃらで、必死さが伝わってきた。
「お姉さま方からのクレーム、留守番電話じゃなくて、真面目に出なければいけませんわね」
「……バニラお姉さまのお電話は、私が受けましょう」
「あら、アッサム。いつも逃げ回っていたのに」
「DA作戦、ですわ」



『我らがダージリン様とアッサム様のです』


自信満々のルクリリの声を思い出した。


「………いい、作戦だったわね」
「えぇ、本当に。ルクリリのフォロー、お願いします。褒めてやってください」

どこの何が、一体ダージリンとアッサムなのかはわからないけれど。
モニターの前方で3年生たちは立ち上がり、拍手を送っている。
だけど、後方に座っている整備科と情報処理部の1,2年生たちは、みんな俯いて悔しそうに泣いていた。本気で勝ちに行ったのだと、彼女たちの涙が物語っていた。



整列し、一礼をして試合が終わるのを見届けて、プラウダ側の歓喜の声が耳に響く中、うつむいたまま動かない隊員達へと近づいた。
「全員、怪我はない?」
「……ローズヒップが額を切りましたが、軽傷です」
「そう」
アッサムがローズヒップの前に立ち、そっと髪を掻きあげる。わずかに血がにじんでいるようだが、表情からして問題ないだろう。
「お疲れ様、ルクリリ」
「………申し訳ございませんでした」
俯いたまま、ルクリリはぽつりとつぶやいた。
「謝る理由はあるの?」
「勝てませんでした」
「そうね」
「………私がもっと、機転を利かせれば勝てたのに」
「成功とは、情熱を失わずに失敗から失敗へと突き進むことよ」
「でも、この試合に勝たなければ……」
誰かの小さな嗚咽が引き金となって、みんながタンクジャケットの袖で涙をぬぐい始める。泣きだす子たち。ルクリリは唇を真一文字にして堪えている。
「アッサム様、ごめんなさいです。アッサム様のために勝ちに行ったのに、勝てませんでしたわ」
「………そうね。あと少しだったわね」
「負けは負けですわ」
「じゃぁ、次は勝ちなさい」
鼻を啜りながら、ローズヒップが声を上げて泣く。周りもそれに感化されて、声を上げて泣きだした。アッサムは慰めるようなことをせずに、一歩傍を離れたようだ。耐えられないのかも知れない。
「ルクリリ、あなたは良い隊長になれるわ」
「……負けたのにですか?」
「ほかの部の子たちも泣いていたわ。それだけ、全員を本気にさせて、あなたに想いを託したと言うことなのでしょう。誰でも出来ることじゃないわ。胸を張って学生艦に戻りなさい」

俯いて握った拳を震わせる。
泣かずに堪えようとするルクリリの背中を、泣かなかったペコが優しく撫でていた。


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Date:2016/05/16
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