【緋彩の瞳】 願わくば、この恋を ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

願わくば、この恋を ②

その音が近づくたびに、血液がドンドンと想いを身体中に廻らせていく。
想いが、唇を震わせようとする。



……
………
…………


靴音で誰なのかがわかる。どんな場所でも、例え彼女がどんな靴を履いていようとも。
そのリズムはいつも、アッサムの傍にあったから。


「隣、いいかしら?」



「………はい」



青い制服のセーターがちらりと見えた。見上げるより早く、ダージリン様はアッサムの左隣に腰を下ろし、そして手を合わせてお祈りをする。

その数十秒の間、アッサムはその手をじっと見つめていた。


二度と、触れることが許されない。


「………どうされましたの、こんなところで」
「見慣れた車がここに停まっているのが見えたのよ」
「そうですか。ペコは?」
「先に帰したわ。まぁ、置いてけぼりと言うか」



アッサムがここにいると分かって、わざわざ立ち寄ってくださった。
何か今、アッサムと話したいと言うことがあったのだろうか。


「あなたがここにいるから、私はまた何か、傷つけるようなことをしたのかしらって思ったわ」
「いいえ、何もありませんわ」
「また、一晩ここにいるつもりではないのね?」
「用事があって来たついでに、お祈りをしていただけです」

何も変えることなどできないのだ。
どれ程、神様に慈悲を乞うても、この想いはただ、ゆっくりと流れてゆく時間の中で、懐かしい痛みとなることを待つだけでしかない。学生艦を下りる頃にまた、ここに想いを置き去りにしたいと乞いに来なければならないだろう。



「…………余計な心配をして、悪かったわ」
「いえ」
「お邪魔なら、出て行くわ」
「いえ……いてください」



いなくならないで
いて欲しい
でも、触れられない


神様はまた一体、アッサムにどんな罰を与えようとするのだろうか。



「静かね」
「はい」
膝に置かれているダージリン様の右手が視界に入り、吐き出すべき呼吸を飲み込んでしまう。このまま時間が流れることを怖いと思いながら、早く過ぎればいいのにという想いは、何かしらの行動をしなければならないと言う焦りも生む。

「………そういえばこの前ね、ノンナと少し話をして」
「はい?」
「いえ、どうと言うことはないのだけれど、彼女とは仲がいいのでしょう?」
「えぇ、昔からの付き合いなので」
視界に入っているダージリン様の右手は開いては閉じ、スカートを握りしめては、指先で皺を伸ばし。

何か、困った様子に見える。

ノンナは余計なことを言ったのだろうか。
いや、彼女はそう言うことをする人間ではない。

「友達と言っていたわ。友達として、恋の話を、その、そう言うことをするって」
「………えっと、ノンナが言ったのですか?」
「えぇ。その、好きな人のタイプとか、デートしてみたいところとか、そう言うことを話したりして、楽しいって言っていたわ」

ノンナは、お節介を焼く人だったらしい。
ダージリン様の言う通りのことを告げただけに違いないのだろうけれど、アッサムからしてみたら、なぜそんな余計な事を、と思わずにはいられない。
でもこれは、ノンナがあげたトスなのだろうか。
ダーリン様はなぜ、そんな話題をアッサムに振るのだろう。

友達として、普通にそう言う会話をできる関係になりたいと思っておられるのなら、ノンナのトスは敵側に絶妙に渡ってしまっている気がする。

想いを告るべきだというノンナの表情。

友達としていて欲しいと思ってくださっていたダージリン様を、悲しませろと言うのだろうか。


「ノンナとは、普段、戦車道の話ばかりなのですが。そうですね、久しぶりに2人で会えた時にそんな話をしたかもしれません」
「そう。やっぱり、その…仲の良い友達とは、何でも話せるのね」
「普段、離れている友達ですし、積もる話も色々と」
「………そう。毎日一緒にいても、友達ではない関係では、何も話せないものね」



触れてもいない左手だと言うのに


言葉だけで、視界にその右手が入るだけで
アッサムの左手を切り刻もうとする


関連記事

*    *    *

Information

Date:2016/05/16
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/723-ac10beda
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)