【緋彩の瞳】 願わくば、この恋を END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

願わくば、この恋を END

「ダージリン様は、その、そう言うことは誰かとお話されないのですか?」
「聞いてくれる人がいるのなら、してみたいものだわ」
「………聞いてもよろしいのなら、私がお聞きしましょうか?」


ここは神様の目の前で、罪を告白する場所だ。


「では、そうね。私だけが一方的に言うのも何か寂しいから、嫌でなければ、お互いに質問するのはどうかしら?」


友達でいて欲しいという想いを消さないでいてくださる


お優しい人なのに


とても、お優しい人なのに


「わかりました。えっと、ダージリン様が好きなタイプは?」
「面倒看のいい人かしら。誰からも好かれて、常に人が寄ってくるような感じの人。アッサムは?」
「……優しくて、落ち着いた人がいいですね」
「優しさって、色々あるわ。あなたにだけ優しい人か、万人に優しい人なのか」

ダージリン様の視線はアッサムを捉えていない。たぶん、神様を見上げておられるのだろう。痛む左手を押さえないように気を付けながら、アッサムも同じ神様を見上げた。

「そうですわね、私と言うよりは、私が大切に思う人に優しい人であれば」

あの1年生たちの顔が思い浮かんでしまう。

「そう、なるほどね。アッサムらしいわ」
「そうでしょうか?」
「いいわ、次の質問は?」
「えっと……好きな人と行ってみたいところ、ですか?」

この会話、ダージリン様は面白いと思われているのだろうか。
教会で神様に向かって話すことなのだろうか。

「今は秋に咲く薔薇が綺麗だから、少し寒いけれど、薔薇園に行ってみたいわね」
「つまり、ピクニックですか?」
「えぇ。のんびりした2人の時間が欲しいと思うわ」
「そうですか。そうですね、私もそう言うのはとてもいいと思います。あまり、好きな人とどこかへ遊びに行くと言うイメージを持ったことはありませんが」

好きな人と

“ダージリン”と、どこかへなんて考えたりしない。

傍にいるのならどこでもいい。

部屋の中でも、図書室でも、薔薇園でも。映画や遊園地のような人の沢山いる場所はお気に召さないであろうから、静かな場所を選んで、特に何も会話をせずとも、ただ傍にいる。
想像しただけで、幸せに違いないと思えた。



触れられぬ左手が、その幸せを掴めないことをもう、嘆くことはない。
それは幻想なのだから。



「ないの?好きな人がいるのでしょう?」



慎重に言葉を選んでいるはずなのに、どうしてダージリン様は確信を持って尋ねられるのだろう。そうやって、NOと言わせない言葉の使い方を上手く交わすことができないと知っていて、聞いてこられるのだ。


「………………いえ、いません」


「神様の前で嘘を吐くのね。罰が当たりますわよ」
「罰はもう当たりましたわ」


余計な事を言ってしまった。
左耳に吹きかけられたようなため息の音。
思わずきつく、両手を握りしめる。


「すでに、神様に嘘を吐いたの?」
「いえ、神様よりもとても……とても大切な人を欺いてしまいました。それは神様に罰を与えられるべきことでした」
「それは、あなたの好きな人のこと?」

「どうでしょうか。いえ、………そうですね、そうかもしれません」

「どんな罰を受けたの?」



恋しいと想う


それがすでに罪なのだ



「………その人とは、友達にすらなれない。なることが…苦しいという罰……です」



そして、親愛の情を預けてくださるその優しさすら、受け取ることができない



「アッサム?」



恋を乗せて廻る血液の中に、毒を盛ることができたらいいのに
ダージリンへの想いを消してしまうような毒を
恋を終わらせて、友情を選ぶような毒を
その手を握りしめても、痛みを感じないような毒を




「ごめんなさい、また、あなたを泣かせたのね」


泣いている自覚などなかったが、俯いた瞬間にぽたりと左の手の甲に雫が零れ落ちた。


これは未練

ただの、未練



見たことのあるハンカチが差し出される。
アッサムのハンカチだ。
いつか、紅茶を零されたダージリンに渡したままだったもの。
あのあと、ダージリン様はずっと持っていらしたのだ。


「私はまだ、あなたへの償いが終わっていない、罪人の身分であることを忘れていたわ」


受け取ることすらできずに、俯いたままでいると、右手が頬に近づいてきた。

ピリピリと襲う痛みは、柔らかな布の隙間から襲ってくる。



清らかで


優しい痛みが




「……ダージリン様」
「傷つけないように、気を付けてきたつもりだと言うのに。ごめんなさい、私ではきっと、お友達として、恋の話を聞く相手にはふさわしくないわね。だからアッサムの友達としてもきっと………」


顔を上げれば、真っ直ぐに見つめてくる赤くなった瞳があった。



もう、これ以上罪を増やさないで

傍にいたいのに

左腕を切り離してでも構わないから、傍にいたいと願ったのに




「それは、違います」



ハンカチを握るその手を左手で包み込んで握りしめた。
じわりと恋の痛みは、身体に流れ込み、瞼に熱を集めようとする。



今、泣いてしまうことは許されないのに。



「アッサム?」





「……私が……私が、悪いのです」






あなたが好き





とても好き






好きだから






震えるように呼吸を繰り返す唇に、海と同じ味が触れる。
拭うこともできずに、この涙がどこへ流れて行くかなんて、考えることすらできなくて。


「ごめんなさい」


あまりの無様に、両手で顔を覆って俯いた。
ダージリンに見られたくはない。
これ以上はもう、死ぬ方がよっぽど楽だわと思えるほど、恋の熱が瞼へと集まり、勝手に涙を作っては、身体から吐き出させようとする。




周りが海になってしまっても、この想いは身体から無くならない程、溢れているというのに。





「アッサム」




ずっと、ずっと好きだった




傍にいたいと願った想いは
その背中を見つめたいと願った想いは






きっと、ずっと







恋だった








「私は……………あなたが……好きです、ダージリン」









嗚咽に紛れて吐き出された罪の告白を







神様はきっとお赦しにならないだろう






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Date:2016/05/16
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