【緋彩の瞳】 不思議な未来へ ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

不思議な未来へ ②

外に出たがる穂菜美を宥めながら、パソコンでアッサムが小さい頃に流行っていたアニメ動画を見せつつ、タブレットでこういう現象の過去の事例がないかどうかを探しても、出てくるのはそう言うものをネタにしている映画や本の紹介ばかり。やはり、これは何かの冗談って思っている方が気持ちは楽かもしれない。真剣に悩んで病院に連れて行ったところで、アッサムが疲れているって診断されてしまうのがオチだろう。

 グリーンから、ダージリンのサインが必要だといくつか彼女の携帯にメールが送りつけられてきた。船舶関係の重要書類のため、今日中にいるとのこと。プリントアウトしたものにダージリンのサインを書きこんで送信していると、3話程見たアニメにも飽きたようだ。
「お外行きたい」
「………あと1時間くらい待って」
「どうして?」
「子供服がないのよ。買いに行って着替えたら、こっそり出してあげるから」
 つまらないってダダをこねる穂菜美に、アッサムは戦車道の過去の記録映像を見せた。2年前の聖グロが決勝戦で黒森峰と戦ったときのものだ。アールグレイお姉さまが黒森峰を追い詰めた、素晴らしい戦いだった。
「あ、ママ!!」
「えっと………そうね」
 1年生のダージリンがマチルダⅡから顔を出している姿を指さして、ママと叫ぶ当たり、自分が小さくなってしまっているという脳の構造ではないようだ。いくつかの創作話では、子供の身体で記憶は大人のままだったりしたけれど、彼女はそうじゃないらしい。真剣に見ている穂菜美を膝の上に乗せて、アッサムはその時の戦いの記憶をよみがえらせながら、時の隊長だったアールグレイお姉さまが、どれだけ凄かったかということを聞かせた。
「ママの髪型、可愛い」
「そう?そうね。この髪型を気に入っているのよ」
「ほなみも、これがいい」
 セミロング程の髪を指でなぞってみる。そう言えば、オレンジペコお姉さまがイライラすると、人の髪をいじる癖をお持ちで、今のダージリンの髪型は、オレンジペコ様がいろんなアレンジを試して、ダージリン自身が気に入ったスタイルだったはず。それまでは、三つ編みを2つ作って、下ろしていた。
「うーん、ちょっと小さくなるけれど。いいわ、やってあげる」
 あまり、人の髪をアレンジしたことのないアッサムは、ヘアピンと櫛を片手に、画面を見つめる穂菜美の髪を結って、いつも隣でまとめている手の動きを思い出しながら、なるべくそれになるようにして、しっかりとピンでとめた。鏡で見せると、満足げにポーズを取っている。この辺り、今のダージリンもそうだ。やっぱり本人に見える。見慣れた髪にしたから、余計に。




「3人とも、後ろ向いて」
「え~!ケチ!」
「パンツはく姿まで、眺めるんじゃないの!」
「でも今は子供ですよ?」
「そうですわ!プリティな子供ですわ!」
「命令に従わないつもり?」
「ズルい、職権乱用反対!」
「「反対!!」」
「ダージリンが戻った時、裸を見たって報告するわよ?」
「「「………」」」
 洋服を買ってきてくれたルクリリたちは、タータンチェックのスカートとシャツ、柄で揉めたらしい下着をアッサムに渡してくれた。立ち上がるとすぐに大人用の下着がずれ落ちてしまうため、抱っこしていたアッサムはベッドの上に立たせて、3人に回れ右をさせると、苺柄の子供用パンツをはかせて服を着せた。
「よし、OK」
「お外、出る?」
「うーん、そうね。公園にでも行きましょう。車に隠して外に出れば、まぁ、なんとかなるわね」
「「「行きます!」」」
「あなたたちは授業」
 ふて腐れた3人の顔が並ぶ。ダージリンは、この人たちもママのお友達?って不思議そうに見上げているけれど、ただのお手伝いの人よって告げておいた。靴のサイズがわからなくて買えなかったと言うので、ブランケットを頭からかぶせて抱っこすると、ローズヒップに持って来させたランドローバーの助手席に座らせ、チャイムが鳴り響く学校の敷地を抜け出した。



 途中、新しい靴で足が痛いと言いだした穂菜美の踵に、水ぶくれができてしまった。アッサムは絆創膏を貼って、手を繋いで遊具のある公園に連れて行った。ブランコに乗る背中を押してあげたり、平均台のように細い場所を、手を繋いで歩いたり。一通りの遊具で遊ばせて、ダージリンも小さい頃は普通に子供らしかったんだと思うと、一体いつのタイミングで誰があんな風にさせたのだと、優雅にお茶を飲むダージリンを想ってはため息をついた。でも、そんなダージリンを好きになったのはアッサムなのだ。こればかりはどうしようもない。こういうのを惚れた弱みって言うのだろう。
「お姉さん」
「なぁに?あ、私の名前はアッサムよ」
「あっさむ?」
「えぇ、そう。アッサム」
「あっさむ、おなかすいたわ」
 遊具に飽きてきたのだろう。普段、入ることなどないファミリー向けのレストランでお子様ランチを食べさせた。口の周りを汚さずに、上手に子供用のフォークを使い熟している。厳しくしつけされているというのは、よくわかるものだ。自分もそうだったし、それが普通だと思っていたが、こうやって穂菜美を、ダージリンを見ていると、どうにもこうにも痒いものだ。美味しいかと聞いても、小さく頷いている。たぶん、さほど美味しいものでもないのだろう。ウイットなジョークで遠まわしにマズいって言うのを期待したけれど、流石にそう言う知恵を得たのは、もう少し年齢を重ねてからのようだ。
「ママが、人が作ったものはおいししくいただきなさいと言っていたわ」
「そう。流石、お姉ちゃんになる穂菜美はいい子ね」
 オレンジジュースを飲み干した保奈美は、赤ちゃんが生まれたら一緒に遊ぶのって、可愛らしく笑っている。
 ダージリンから妹の話を聞かされたことはあまりない。別の学生艦にいて、確か戦車道ではなく、馬術の選手になるために馬術部の強い学校を選んだはず。ダージリン自身は、おそらく母親と同じ道を選んだのだろう。選ばされたかどうかはわからない。聖グロで隊長を務めていたのなら、憧れたのかも知れない。夢を現実にさせる力を、ダージリンは持っている人なのだ。
「穂菜美は、大きくなったら何になりたいの?」
「ほなみ、ママが戦車乗る人になりなさいって」
「そっか。穂菜美は戦車に乗りたい?」
「乗りたいわ。だって、あっさむが見せてくれたママはかっこよかったから。ほなみもあんな風になるの」
「……そう」
 未来の自分の姿に憧れているなんて。この子は過去から来たのか、今のダージリンが小さくなったのだとしたら、この子は過去じゃない。だから、つまりは未来の自分に憧れて、ダージリンが聖グロに入ったとしたら、それはアッサムのせいで、でも目の前にいる穂菜美は、今のダージリンが小さくなったわけで。


……
………

 データとしてまとめようがない。何がどうなったのか、何をどう考えればいいのか、過去の事例が一つもない以上、対処の方法がないのだ。もし、ダージリンが元に戻ったら、小さい頃に知らない部屋でアッサムに似た人と遊んだかどうか聞いてみよう。でもその場合、覚えているって言われたらどうすればいいのだろう。それだと、やっぱりおかしなことになってしまう。もう、取りあえず深く考えたりしない方が良い。精神安定上、その方が良い。



関連記事

*    *    *

Information

Date:2016/07/18
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/746-950696c7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)