【緋彩の瞳】 Because I love you ③

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Because I love you ③

「アッサム?」
「そう。好きなものを選んでいいとお姉さま、おっしゃったわ」
「構わないわ。でも、どうして?」
「……響き、なんとなく」
 夜、ドライブに保奈美を連れて行き、桜が散り始めている公園をのんびりと歩いた。久しぶりに繋ぐ手は、小さい頃から慣れ親しんだはずだけれど、すっかり少女になってしまっている。少し見ない間に、子供じゃなくなったって言うと、背中を叩かれた。
「そう。じゃぁ、明日にでもダージリンと揃って授受の儀を紅茶の園で行いましょう」
「やっぱり、そう言うのはあるのね」
「幹部になるのだから、軽率な行動は慎むようにね」
「………お姉さまと、手を繋いで夜桜って大丈夫ですの?」
「この船の責任者は私よ」
 保奈美、いや、アッサムは頼りなさそうに見上げてくる。勝手なルールを作ったりしないでくださいね、と告げられた。アッサムをチャーチルに乗せることはすでに、勝手に決めたこと。もう遅い。
船上の桜は地上に比べて早く散ってしまう。学生でいられるのも、あと1年。
「アッサム、明日からは毎朝、幹部席で一緒に朝ご飯を食べましょう」
「はい」
「うるさいオレンジペコに、美味しい紅茶を淹れてあげなさい」
「はい」
「時々、お兄さんの機嫌を伺って、学校に寄付をもらうように」
 アッサムのお兄さんは、妹を溺愛しすぎるシスコンだ。アッサムの学費も寮での生活費も、お小遣いも、兄が出すらしい。ご両親からもお小遣いが振り込まれてくるようだから、アッサムの懐は相当潤っているだろう。何というか、溺愛も度が過ぎると怖いくらいだ。とはいえ、溺愛されているアッサムはそこのところをうまく利用しているようだから、将来のためにしっかり貯めているに違いない。
「それは、お姉さまがなさってください」
「あなたの妹がねだっている、って電話するわ」
「……もぅ」
 散りかけの桜は綺麗だと思う。月の光を遮る建物の何もない船の上。手を引いてゆっくり歩きながら、ふと、バニラのことを想った。手を繋いで歩いたことなんて、1度もない。
きっと、これからもない。
「お店が閉まる前に、紅茶の葉っぱを買って帰りましょう。アッサムティーを」
「本当?じゃぁ、ついでに彼女の分も」
「ダージリン?」
「えぇ。お姉さまからって言えば、喜ぶわ」
「……そう。いいわ、買ってあげる」
 愛らしく微笑むアッサムは、どうやらダージリンがお気に入りのようだ。何となく同じ戦車に乗りたがっているようにも思えたが、第一希望にチャーチル砲手と書いたものを受け取っている。元より、チャーチルに乗せることしか考えていない。
「明日から、訓練が楽しみね」
「はい」

 しっかりと握りしめている手。戦車道なんてまるで向いていない、華奢な身体。小学生の頃、よく戦車に酔ってフラフラになり、担架で運ばれていた。それでも、ここまでやってきた。小さい頃からアールグレイのマネをするのが好きで、アールグレイが戦車道を始めたから、アッサムも戦車道を始めた。いつも、追いかけてきてくれた。小さい頃から、兄のお嫁さんになる人だからと、慕ってくれている。兄妹のいないアールグレイには、アッサムもアッサムの兄も大切な人で、親が決めたとはいえ、アッサムの兄と結婚することを嫌だと思わない。ただ、恋も愛も存在しない。それだけだ。でも、アッサムの身内になれる。本当に妹になるのだ。可愛い妹。ずっと、失わずにいられるのだから、それでいい。


「お姉さま、明日の朝はアッサムティーでもてなしますわ」
「楽しみにしているわ」


毎朝、いつもバニラティーを飲んでいたが、明日からはしばらくアッサムティーを飲むのだろう。


バニラは何を想うだろうか。





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Date:2016/07/26
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