【緋彩の瞳】 Because I love you(R15) ⑥

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Because I love you(R15) ⑥

「………ダージリン」
「大丈夫なの、アッサム」
 戦車に酔うのは中学1年生の時以来、久しぶりだ。あの時もお姉さまが車長で、今日みたいに抱きしめて背中をさすってもらっていた。初めて乗る戦車に身体が馴れるまで、アッサムにはやっぱり時間がどうしても必要らしい。自分のことだけれど、こればかりはどうしようもない。
小学生の頃は2か月近く酷い目に合って、親や兄から辞めた方が良いと言われていたが、お姉さまがカッコよくて、どうしてもあんな風になりたい、その夢を捨てきれずに続けていた。慣れさえすれば、戦車に乗ること自体は好きだ。頭の中で瞬間に射程距離を計算し、相手を撃破することができた時の喜び、褒めてくれるお姉さまの傍にいることが楽しい。中学3年になるまでそう思っていた。嵩森穂菜美に出会わなければ、ずっと、お姉さまの背中だけを追いかけていただろう。今も、お姉さまと同じ戦車に乗れることは嬉しいと思う。
「大丈夫、思った以上にひどくはなかったから」
「気分が悪くなったの?」
「少し。でも、チャーチルはそれほど辛くもなかったから、いずれ馴れるわ」
 部屋で休んでいると、ドアがノックされて、そこにはダージリンが立っていた。心配そうな目で見つめて来てくれる。マチルダⅡを飛び出した姿は見えていた。怒られている声も聞こえていた。

「どうぞ、入って」

ようやく、寮生活を問題なくスタートさせられる程度に部屋は整った。引越しのための段ボールもすべて整理が終わり、ネット回線も快適につながっている。機能性のある机とアッサムの身体の大きさに合わせた特注の椅子。無駄に高級なシングルソファー2脚に硝子テーブル。
「アールグレイ様は、御存じでいらしたのでしょう?」
「えぇ。どうなるかもわからないし、取りあえず乗ってから考えましょうと」
 IHコンロのボタンを入れ、ティーカップを2つ取り出して、ダージリンティーの茶葉の缶を開けた。性急に沸騰させようとする音が、ポットに泡音を作り出していく。
「先に知っておきたかったわ」
 ソファーに腰を下ろしたダージリンは、アッサムをジロリと睨むように見つめてきた。心配してくれていた瞳。本当に心配だったから、怒っているのだろう。
「ごめんなさい。お姉さまは承知の上だったから」
「確かに、今の私はチャーチルとは何の関係もないわね。でも、訳も分からず心配するこっちの身にもなって」
「………えぇ。そうね。何か、お姉さまに怒られてしまった?」
「アールグレイ様は何も。オレンジペコ様が」
「後で、私も謝りに行きますわ」
 砂時計をセットして、しばらくの沈黙が続く。小さくサラサラと鳴る砂の音。じっと見つめて、とても長く感じた。温めたティーカップに注がれるダージリン。柔らかい香り。アッサムはよく、ダージリンの茶葉とアッサムの茶葉をブレンドさせたものを家で飲んでいた。それが凄く好きな味なのだ。
「どうぞ」
「ありがとう。アッサム、吐き気とかはないの?寝ていたのでしょう?」
「いえ、医務室で少しだけ休んで、もう大丈夫よ」
「そう」
 中学の学生艦の寮にも飾っていた写真立てが、ずらりと棚の上に並んでいる。そこにはお姉さまとの写真も多くあり、去年、ダージリンたちと選抜チームを組んだ時の集合写真もある。たった1枚しかない、嵩森穂菜美の写真だった。あの時に仲良くなったノンナと2人で写真を撮ることは平気だったけれど、隊長を務めていた彼女に声を掛けられなかったのだ。かといって、同じ学校になった今更、写真を撮ろうなんて言えるわけもない。毎日顔を合わせ、こうして今、向かい合って座っている。
「アールグレイ様も、無邪気に笑うことがあるのね」
 写真を眺めながら、家族と共にお姉さまが写っている写真を見て、ダージリンはどういう関係かと言うことを聞きたそうに指差した。
「お姉さまは、不器用な人を演じているだけだと思うわ」
「そのようね」
「小さい頃から可愛がってもらっていて、とても優しい人よ」
「中学よりももっと前ね」
「えぇ。姉みたいに慕っているの」
 清楚なお嬢様であるお姉さまが、どうして戦車道を始めたのかなんて、子供の頃のアッサムにはわからなかった。何となくカッコイイ。見ていてそう思ったからその背中を追いかけていた。今もお姉さまが、茶道や華道ではなく、こんなオイルまみれになるような戦車道を続ける理由は何だろう。アッサムの家系も、お姉さまの家系も、戦車道の家元でもなければ、誰ひとり、戦車道をしていた人はいない。
「そう。同じ学校に入れてよかったわね」
「………えぇ」
 本当は、聖グロに入ったのは嵩森穂菜美を追いかけたから。いずれ打ち明けられたらいい。
そう言えるほど、アッサムの実力がダージリンに追いつくことができれば。






「…………ねぇ、アールグレイ」
「何?」
「頻繁に夕食にあの子を連れだしているけれど、整備科の子猫ちゃんたちから、何様ですかって詰め寄られたわ」
「何様?何が?」
 四つん這いになる銀色の髪を掻き分けて、背中に歯を立てた。昨日付けた痕のすぐ隣。乳房に回した両の手で乱暴にその柔らかい感触を確かめても、バニラは痛い、とは言わない。
「ん…、あなたの可愛いアッサム」
「アッサムが何?」
「あなたが連れまわすと、あなたのファンが嫉妬するわ」
「……整備科たちの機嫌を、バニラが取ってあげたらいいわ」
「そうね。胸でも揉ませてあげちゃおうかしら」
「いいんじゃない?」
 その乳房をきつく握るように愛撫して、優しくしないセックスをする。乱暴に指を動かしても、バニラは簡単にあえぎ、簡単に果てる。その姿を見ることが唯一、この学校で楽しいと思えるひとときのように思う。保奈美を、アッサムを可愛がる時間は、聖グロにいなければ味わえないものではない。これからも会えないと言う関係ではない。

戦車道という道そのものも、本当にやりたくて選んだと言うわけじゃなかった。作戦を立て、戦い、打ち勝つ。その中に身を置いて、何か知らない自分を見つけられるような気がしたが、知らないものを探しても、目的すらわからないのだ。

この道は無意味な迷路だった。

むしろ、戦車道は自分というものから逃げるためのものだったのかもしれない。アッサムにはそんなこと言えるわけがない。背中を追いかけて来てくれている以上、せめてあの子の道を導く手助けくらいは、してあげなければならない。

「あらやだ、嫉妬しないの?」
「整備科にそんな度胸がある子なんていないでしょ?」
「……いくらセフレだからって、野放しにしていたら、他の女のものになるわよ?」
「野放しも何も、この部屋で暮らしているじゃない」
「そうね…そうなのよ。同室にセフレがいるから、毎日こんな目に合って」
「どんな目?」
「……んぁっ。待って、強すぎ……」
 背中を弓なりにして果てる、その曲線がとても綺麗で、縋り付いて眠るとあっという間に意識が飛んでしまう。バニラを抱きしめて眠ることに慣れた身体は、この学生艦から離れたらどうなってしまうだろう。
「バニラ」
「………何?」
「整備科の子に、アッサムに変なことをしたら、追放するって言っておいて」
「すでにダージリンから整備科の子猫ちゃん達に、醜い嫉妬だって鼻で笑われていたわ。大したものよね。子猫ちゃんたちは2年生なのに」
 バニラは振り向いて、試すように口角を上げる。指を3本に増やして、抵抗する中をこじ開けるように泳がせた。


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Date:2016/07/31
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