【緋彩の瞳】 Because I love you(R15) ⑪

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Because I love you(R15) ⑪

「……んっ、ちょっとそれ…痛いわ」
 初めてセックスをした頃から、いつもアールグレイはバニラを背後から抱いていた。
背中を抱きしめて、背中に唇を這わせ、きつく吸い付き、噛み付き、乳房をまさぐり、指を乱暴に中に入れて、激しく動かす。2年経った今も、そのスタイルが一番好きらしい。バスルームでセックスをしても、立ったままでも、必ずバニラの背後を抱きしめる。眠るときも、背中を抱きしめて眠る。キスなんてしない。お休みと言って、アールグレイの胸に顔を埋める隙を与えてくれたりしないのだ。
「痛いの?」
「最近、乱暴者だわ」
「そう?」
「アッサムと食事に行けない腹いせ?乱暴に激しさが増した気がするわね」
「……そう?」
「んっ……あ、それがいいわ」
 ここしばらく、アッサムが何か食欲がなさそうで元気がない様子だった。オレンジペコが意図的にアッサムとアールグレイを引き離そうと躍起になって、夕食の時間になるたびに、ダージリンがアッサムを連れてどこかへ消えてしまっている。そのおかげなのか、アッサムは、調子を取り戻した。朝も昼も、ちゃんと食事を取る姿を見られるようになった。自分が原因だったと悟ったのだろう、アールグレイは少し、ダージリンにアッサムを任せることにしたようだ。お陰様で、オレンジペコと3人と言う、窮屈な夕食を強いられてしまっている。でも、オレンジペコはアールグレイを監視しているのだろう。
「あ、あっ、ダメ、イキそうっ」
「イクときは乱暴にして欲しいんでしょ?」
 アールグレイは、バニラのことをただのセフレだと思っているから、このゲームは暇つぶしなのかもしれない。毎日毎日、同室で眠る時は必ずバニラを四つん這いにさせる。下着を付けて寝るなんていうことは、最初の1か月ほどであきらめがついた。バニラの家の手違いでベッドが届けられず、アールグレイのダブルベッドで眠るようになって、戯れに背中に抱き付いてくるその手を取り、最初に誘ったのはバニラだった。
「ん、………あっ!あぁっ!」
 震える身体。腕で支えられなくてベッドに沈んだら、指の感触が消えた。きちんと服を着て眠るアールグレイの、そのシャツのボタンがいつも、背中に当たって痛い。それでもその腕の中に身体はすっぽりと納まってしまう。
「………ねぇ、アールグレイ」
「何?」
「あんまり、ペコと喧嘩しちゃだめよ」
「してないわよ」
「夕食のたびに、にらみ合って。アッサムは子供じゃないわ。ダージリンと仲良くしているのはいいことよ。元気になっているみたいだし。あなたが縛りつけることでもないわ」
「………そんなこと、気にしていないわ」
「そう?あの様子、あれは相思相愛のように見えるわね。見つめ合って、楽しそうだわ」
「そう」
「案外、あなたが邪魔だから、元気がなかったのかも知れないわね」
 アッサムの瞳は、ダージリンに恋心を抱いているように見える。本人がどこまで自覚をしているのかはわからないが、アールグレイを慕う感情とは明らかに違う想いで、ダージリンを見つめている。その可愛らしい瞳が微笑ましい。ダージリンもまた、アッサムのことをとても気に掛けているようだ。最初はぎこちなかった2人の関係は、ペコの策略のおかげで距離を縮めることになった。でも、それはアールグレイに妙な噂が立ったおかげだろう。
「そう言えば、今度横浜に戻るけれど、また男とデートでもするの?」
「どうかしらね」
「どこの誰なの?」
「知って、どうだと言うの?」
「そうね。あなたが処女かどうか、その人に聞いてみたいわ」
 バニラがアールグレイの身体に触れるということは、今までなかった。一方的にセックスをされた後、満足げにバニラの身体を抱いて眠る。そのアールグレイを抱く体力は、毎回残っていない。胸にすら触れるチャンスもなく、また、それは求められていないと言うのはわかっていた。
「子供のころから結婚しようって言っていた女が、処女じゃなかったら、あの人どう思うかしら」
「…………結婚相手なの?」
「えぇ」
「そっか。彼氏より凄いことね。整備科も腰を抜かすわ」
 アールグレイがこの部屋から出て行き、どこかの大学に行ってしまえば、当然、こんなことをする関係は自然消滅するだろう。例えば、初めて会ったときに、一目で恋に落ちたのだとアールグレイに告げたとしても、それがどうしたと言うのだ。バニラのことをセフレだと思っている彼女の心を繋ぐものなど何もなくて、この関係はベストだと思える。外でベタベタとデートすることは、アールグレイには似合わない。お願いしても、嫌そうな顔をされる気がして、冗談でさえそんなささやかな夢に誘わずに月日は過ぎた。
「バニラは、私の処女が欲しいの?」
「あらやだ、くれるの?」



「…………………無理ね」



 数秒の空白の間に、何を想ったのだろうか。アールグレイは誰を想ったのだろうか。
「大事な男がいるのなら、もうセックスはやめましょうか?」
 最初の頃に誘っていたのはバニラだけれど、ずっとずっとこういう行為をし続けているのはアールグレイだ。出会ったころから、結婚相手が決まっていると知っていたら、こんな関係を持たなかっただろうか。いや、拒否をされない限り、同じことを望んだだろう。刹那の想い出でも構わない、と。
「私が処女を奪われるわけじゃないのだから」
「……あらやだ、私の処女を返して」
「奪って欲しいと言って誘ったのは誰?」
「私」
「したくないのなら、もうやめましょうか?」
「…………ズルいのね、アールグレイ」
 きつく乳房を握るように抱くアールグレイの腕の中で、バニラは目を閉じた。

始めた時から、刹那の恋でいいものだと思っていた。溺れるようなものにならないように、部屋でセックスするとき以外の彼女の行動には、すべて無関心でいようと決めていた。その程度がちょうどいい距離なのだと。いろんな方面からモテる人。同じ部屋でセックスをしてもらえる関係だけで、それは十分幸せなこと。元より、彼女が誰かと恋をしようとも構わないと覚悟はしていた。

「バニラ」
「………何?」
「もう一度しない?」
「腕で身体を支える体力、もうないわ」

 そんなことを言いながらも、うつぶせるように背中を押されて、強引に足を開かされる。果てても果てても、アールグレイの気まぐれ次第。嫌だと思えない自分が悪いのだ。満たされていく想いはすぐに空っぽになってしまうのだから、無理にでも抱いてと希う気持ちはいつもある。明確に男の存在を今まで口にしてくれなかったのは、気を使ってくれていたのだと思いたい。そして、明らかにされたということは、身体の関係の終わりがすぐそこにあるという、アールグレイからのメッセージなのだ。

顔を見ずにセックスをしていてよかった。

零れ落ちた雫の存在を、アールグレイに知られることはないだろう。




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Date:2016/08/15
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