【緋彩の瞳】 Because I love you(R15) ⑭

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Because I love you(R15) ⑭

大会会場の港には2日前には寄港していた。陸地での最終調整を終え、試合の前日夜。戦車整備もすべて終えて、アッサムは早々、ダージリンの手を取りそそくさと寮へと帰って行った。夏が始まる前くらいから、何かと仲睦まじくしている。本当に、バニラには初々しく眩しく映り、時々からかってアッサムの頬が赤くなるのを観察するのは楽しいのだが、アールグレイはいつもそのすぐ傍で無関心を装っていた。
「……ねぇ」
「何」
「あの子たち、もうセックスしたのかしら?」
「……あの子たちって?」
「あなたの可愛いアッサムと、次期隊長さん」
「………知らない」
 いつものように、下着も服も着ることなく、言われる前に手と膝をベッドマットについた。背中にピリリと感じる痛みは、ここ最近激しさを増していて、鏡で見られる場所じゃなくてよかったと少しほっとしている。もう、きっとキリンの模様みたいになっているに違いない。それは決して愛や恋を刻む行為ではなく、所有物と主張しているようなものなのだ。それでも、止められないのだから、愚かなのはきっとバニラの方。

自分のことを愚かだと笑えるのなら、まだ、救われる想いがする。


「ダージリンがアッサムにしてあげているのかしらね」
「知らない」
「ダージリンは誰かみたいに、暴力的なこともしなさそうよね」
「さぁ」
「本当に、恋をしあっているみたいな表情だもの」


 羨ましいわ


 その一言を言う前に、指が中に乱暴に侵入してきた。悲鳴を上げそうになるのを飲み込んで、きつくシーツを握りしめる。

「………ねぇ、アールグレイ」
「何」
「もっと、濡らしてくれないと」
「どうやって?」


 例えば、抱き合ってキスをするとか。

優しく乳房を舌で愛撫するとか。

 好きだと言ってくれる、とか。


「分からないなら、ダージリンがどうやっているか、聞いてみる?」
 お尻を噛まれながら、太腿にあたるサラサラとした髪の揺れる音に、耳を澄ませる。アールグレイは何も言わず、愛撫もろくにせず、だけどずっとどこかしら、歯を立てて行く。その行為でも、愛液を呼ぶと知られていることが、寂しかった。


「バニラがあの子にセックスしてもらえば?」
「………ダージリンはあなたと違って、好きな人しか抱かないタイプよ」
「あら、そうなの。聞いたことがないから知らないわ」
「アッサムが羨ましいわ。相思相愛の人がいて」
 セックスどころか、キスすらまだしていなさそうな2人の、手を繋ぐだけで照れくさそうに微笑み、見つめ合う姿。あんな風に無垢で、キラキラ恋をしあえたら。あの瞬間を命いっぱい楽しんでいるような、そんな2人の姿は、あまりにも眩しすぎて、眩暈を覚えるほど。互いを敬い、守ろうとする瞳。
「相思相愛だけでは、性欲なんて満たせないでしょ?あなたは、私で満たしたいんでしょ?」
「………えぇ。だから、もっと濡らして、気持ちいいって言わせてよ」
「回りくどいことを言わないで、最初からそう言えばいいのに」
 明日に控えた決勝戦。緊張を逃がすことも、プレッシャーと向き合うことも、何もしようとせずに、アールグレイはいつもと変わらない。その強さは美しいと思う。彼女にとって、戦車道全国大会の優勝なんて、欲しいものではないのだろう。一度として、優勝したいと本心から告げられたことはない。戦車道に対する想いを本気で語っている姿も見たことはない。アールグレイにとっての戦車道は、人生にとって必要なことでもないはずだ。勝ちも負けも、淡々と受け入れている姿をいつも見てきた。
バニラは、彼女の感情をセックスで推し量ってきた。怒っている、楽しんでいる、それくらいだけれど。アッサムが入学してくるまで、楽しそうに笑ったり、何かを心配して落ち込んだりする姿など、本当に見たことがなかった。心に扉など、最初からない人なのだろうかと。それが、どこまでもむなしいと分かっていても、やっぱり、それでも恋情は身体からなくなりはしないのだ。


「…………アールグレイ」
「何」
「私、あなたが好きよ。とても好き」
 言葉は雫になって、枕を濡らした。それを拭う両手はシーツを握りしめたまま。愛液は腿を伝うことなく、乾きは指に何も絡めてはくれない。それでも、その言葉を声にすれば、彼女の指はバニラの中を泳ぎやすくしてくれるのではないか、そう思った。


「………そう」


指は泳ぐことなく抜かれて、身体に興味を失ったように、髪の感触も離れて行ってしまう。誰かの感情を受け止められる程、アールグレイに強さなどない。彼女は脆く、とても弱いから。


「あらやだ、怒った?」
「いえ。明日のこともあるし、今日はもういいわ」
「…………そっか。そうね。アールグレイは結婚相手がいるんだもの、私の感情なんて邪魔だったわね」


 さっさと服を着て先にベッドに寝転がるアールグレイの姿を捉えて、四つん這いになった姿勢のまま、バニラはため息をついた。完全に眠る体制を整えたのを見届けて、ようやくバニラも下着を手にする。
「アールグレイ」
「何?」
「……………何も」
「お休み」
「えぇ、お休みなさい」
服を着て、電気を消した。その隣で眠っても、いつものように身体にまとわりついてくることなどしないと、態度が語っている。乳房に手を当てて、バニラを湯たんぽのようにして眠る。そう言うアールグレイが好きだった。バニラにしか見せないものがある。感情について何も言わなくても、それでも必ず、眠るときは縋り付いてくる。そのことだけが、バニラには、少しは好かれているという妄想を維持させるものだった。
 お互いに背を向けて眠る。眠れなくても目を閉じた。溢れてくる雫が身体を震わせないように、両手で腕を抱きしめてみたけれど、何も考えないようにしても、勝手に涙が溢れてくる。それを止める術もない。ゆっくりと立ち上がり、そっと部屋を出た。止めてくれる声も降って来なかった。裸足のまま階段を駆け上がり、ペコの部屋のドアを叩いた。


「…………どうしたの?」
「泊めて」
小さく開かれたドア。バニラの顔を見て眉をひそめたペコ。呆れたようにため息を吐かれたけれど、仕方ないと迎え入れてくれた。その細い身体に勝手にしがみついて、勝手にそのシャツで涙を拭いた。
「アールグレイと喧嘩でもしたの?」
「………あの人が喧嘩なんてすると思う?」
「しない」
 優しく頭を撫でられて、それ以上何も聞かれずにペコのダブルベッドにもぐりこむ。いつもは背中を抱きしめられることで安心して眠れたけれど、何も聞いてこないペコの身体に抱き付いて目を閉じた。涙はいつの間にか止まっていて、最初から相手を間違えていたんだって冗談で言ってみようかと思ったけれど、そんなことを言えば、今度はペコを怒らせて、部屋を追い出されるだろうから。今は何も言わない優しさに縋って、何も言わずに甘えておきたかった。



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Date:2016/08/21
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