【緋彩の瞳】 Because I love you ⑲

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Because I love you ⑲

 大会が終わって、残り少ない夏休み。保奈美の実家に顔を見せても、知人の別荘に行ってしまったときかされた。裕一さんは止めようとしたけれど、保奈美に一喝されてしまったそうだ。麗奈は裕一さんとご両親と食事をして、その場にいない保奈美の話で盛り上がりながら、婚約指輪をこの夏の間に保奈美を連れて、東京のお店に見に行くようにと勧められた。微笑みながら小さく頷いて見せたけれど、5月には指輪を一緒に見に行きたいと言っていた保奈美は、付いてきてくれるだろうか。学生艦を降りてすぐに何度か電話をしたが、出てくれる気配もない。頬を叩いてしまったことをまだ、怒っているのか、あるいはバニラのことについて、何か考えているのか。軽蔑をされているのかもしれない。かといって、こちらから積極的にそのことについて、保奈美に事情を話すというのも、必要はないのだ。バニラとはもう、終わったのだ。最初から恋人でもなければ、彼女の存在が裕一さんとの結婚という未来を阻害するものでもない。

 かといって、その未来が欲しいのかどうか、麗奈にはわからない。

「保奈美に麗奈が遊びに来ているって電話したんだけど、友達と遊んでいるから戻らないって言われたよ」
「そう」
「麗奈以外の子と遊ぶなんて、保奈美も大人になったな」
「そうね」
「あいつは、いつも麗奈にくっついていたんだもんな。麗奈と結婚するって言う話になってから、ずっと“お姉さま”って呼んで。我が妹ながら、本当に可愛げのある子だ」
「そんなことを言うから、気持ち悪いって言われるのよ」
 結婚する相手ではあるが、2人になることなんてほとんどない。必ず保奈美が間にいた。保奈美と2人で遊ぶことのほうがずっと多かった。保奈美は腕に抱き付いてきて、甘えるのが上手で。嬉しそうな顔を見ることが好きだった。結婚することを嫌だと思えないのも、保奈美がすぐ近くにいるからだ。
「昨日も今日も、電話しても罵倒されるだけでさ。もしかしてあいつ、恋人と遊んでいたりするのかな?」
「どうかしら?」
「何だよ、知っているの?」
「プライバシー保護」
「何だよ~。妹なんだぞ」
「ますます、言えないわ」
「女子校に通わせているのに」
「裕一さんが通わせているわけじゃないでしょう?」
 学費も寄付も、裕一さんが勝手に好きでしていることだと追い打ちを掛けると、拗ねて膨らんだ頬。麗奈の電話には出ないが、裕一さんからの電話には出るのなら、やはり怒っているからなのだろう。ダージリンと楽しく過ごしているのなら、邪魔をするわけにはいかない。  
入学した日から、保奈美はダージリンを特別な眼差しで見つめていた。出来る限り隣にいたいと瞳が語っているのは、誰が見ても明らかだった。麗奈を追いかけて聖グロに入ったのか、それともダージリンがいると知って聖グロに来たのか、本当のところどっちなのか、確かめたところで仕方がない。保奈美の入学が決まった時、学生艦にいる間は出来る限り傍にいて、あの子を可愛がって守ってあげたいと思っていたが、保奈美はそれを望んでいるようでもなかった。勝手に麗奈がそう思っていただけなのだ。保奈美はずっと、麗奈を慕ってくれていると。これからもずっと、変わらずに仲良くやっていけると。
「くそぅ。いっちょまえに恋愛なんてしていたら、お小遣いを減らしてやる」
「高校生なんだから、恋くらいしてもいいじゃない」
「いや、あんな可愛い奴なんだ。相手だってそれなりにふさわしい奴じゃないと」
 互いに恋しいと言った瞳で見つめ合い、人目があると知ってか知らずか、手を繋いで歩いていたとオレンジペコが話していた。戦車道の中ではほとんど公認の仲とされている、なんてバニラも言っていた。オレンジペコが背中を押しているような気もするが、嘘ではないはずだ。
「恋愛くらい、保奈美の自由にさせてあげて」
「僕は何でも、保奈美の自由にさせているさ。聖グロだって戦車道だって、保奈美がやりたいって言ったからやらせている」
「じゃぁ、どこの馬の骨とも知らない人を連れて来て、恋人だって言っても?」
「いや……まぁ…うーん」
「大好きだから、その人とずっと一緒にいるって言われたら?」
「………まぁ、保奈美が好きなら」
「兄の許可っていることなのかしら?」
「それもまぁ、そうだな」


 ここで、結婚をしたくないって言えば、彼はどんな表情をするだろう。妹には寛大だが、血の繋がりのない麗奈の我儘を聞く義理なんて、何もない彼に言ったところで、どうすることもできない。



結婚をしたくはない。



 結婚をしたくないわけじゃない。ずっとそう思っていた。だけど、結婚をしたいと思えない。彼の表情を見ていてそう思った。保奈美の未来を想う彼は決して、麗奈の未来を想ってなどくれないだろう。優しさがないと言うわけではない。彼が守りたいものの中に、麗奈の人生は含まれてなどいないのだ。そして麗奈もまた、彼の未来を大切にしたいなどと、欠片も思ったことはなかった。結婚をしてしまえば、気にならないだろうと思っていた。さほど今の関係と変わらない、穏やかな日々が繰り返されるだけなら、悪いことではないと。

「保奈美が羨ましいわ。素敵な恋ができて」
「なっ、やっぱりあいつはあれか?そういう奴と一緒なのか?」
「……ノーコメント」

 バニラは今、どこで何をしているだろうか。





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Date:2016/08/24
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