【緋彩の瞳】 右手と左頬 ①

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

右手と左頬 ①

横浜に寄港して3日目。2日間は実家で過ごした後、ルクリリはペコとローズヒップと3人で、ショッピングモールに向かった。生活用品の買い足しは学生艦の中にあるお店でもできるけれど、新入荷の服やサンダル、最新の雑誌なんかは陸地でないと手に入らない。学生艦の中にある食事ができるお店もあちこち通っている。まだ1か月。味に飽きたとまでは言わないが、それでも、陸地で食べるものの方が、ずっとおいしいのだ。潮の香りのない地に足の付いた感じ。大げさだけど、陸地に帰るとホッとする。
「おーい、ローズヒップ。迷子なの?」
 自分がどこにいるのか、さっぱりわからないと言うローズヒップからの電話。ペコが見張っていたはずだが、いつの間にかはぐれたらしい。ルクリリはもう高校生なんだから、取りあえず、1階のサービスカウンターにいるようにって告げて時間を指定した。ルクリリはまだ、沢山買い物をしたいのだ。イチイチ迷子を迎えに行く時間がもったいない。ペコにも時間はまだあるし、後で落ち合おうと言って電話を切った。


「………あれ、アッサム様?」


 学生艦を出る前に、ショッピングモールに一緒に行きたいとお誘いをしたが、アッサム様には丁寧に断られた。いくつか用事が入っていて、今回の寄港中はずっと、ルクリリたちとは遊んでくれないのだ。3人揃ってふくれっ面を見せたけれど、まったく効果なく断られた。そのアッサム様が私服姿で歩いておられる。傍にダージリン様はおられない。
戦車道関係の先輩たちによると、お2人は恋人同士なんだとか。誰一人確認を取ったこともなければ、本人たちから直接聞いたと言う人もいないらしいが、戦車道関係では1年生の頃からそういう噂があるそうだ。ルクリリはまだ、入学して1か月ちょっとだから、特に2人がラブラブしているところを目撃したこともないし、1年生の中でも目撃談は聞いていない。オレンジペコもチャーチルの中では、特に付き合っている風にも見えないとかなんとか。
「ダージリン様と逢瀬かなぁ」
 だとしたら、ルクリリが初めての目撃者になるのかも知れない。ただ歩いているだけでは意味がない。手を繋いでいるとか、肩を抱き寄せるとか。そう言う姿を見てみたいものだ。

 アッサム様が腕時計を確認して、周囲をキョロキョロしておられる。ルクリリもダージリン様を探すように辺りを見渡していると、全然違う綺麗なお姉さまに向かって手を振って近づいていく。


「お待たせしました」
「アッサム」
「お久しぶりです、聖那さま」
「本当よ。全然、連絡をしてくれないんだもの。拗ねちゃうわよ?」

そして、当たり前の様にハグし合うから。
二股?!!って声に出しそうになるのを慌てて飲み込んだ。

「バタバタしていましたの。聖那さまだって、連絡をくださいませんわ」
「あらやだ、じゃぁ、毎日電話しちゃおうかしら?」
「どうぞ。留守電設定にしておきますわ」
「アッサム、久しぶりなのに生意気ね」
 アッサム様の腕を取って銀の髪をふわふわなびかせている美人は、ニコニコ微笑みながら恋人のように手を繋いでおられる。
「どこに行きます?」
「うーん、もう少し時間があるから、お茶でもしましょう」
「そうですわね」
 柔らかい笑みのアッサム様が、遠くからでも楽しそうなのはひと目でわかった。周知の仲であるはずのダージリン様はどこにもおられない。ショッピングモールから出て行ってしまうお2人の後を、少し離れてルクリリは追いかけた。




これは一大事だ。


聖那さまって誰だ!!!







 ペコは、いつの間にか姿を消したローズヒップを探して、小走りにあちこちのお店を覗いていた。電話をして、何か目印を言ってくださいとお願いしても、綺麗なお洋服を着たマネキンがいるとか、柱がいっぱいあるとか、場所の特定のしようがないことばかりを告げてくる。まだ、本人もさほど困り果てている様子がないので、ペコはルクリリと時間と場所を確認し合い、ローズヒップもサービスカウンターっていうのはきっと大丈夫だと言うので、少し自分の買い物をすることにした。時間はたっぷりある。ショッピングモールの中にはないお店で、どうしても買いたい専門書が置いてある本屋に向かう途中、どこかで見たことがある人がいた。


ダージリン様。


「ダージリン、時間はまだあるのでしょう?ちょっとお茶でもする?」
「そうですわね」
「いいお店があるの。連れて行ってあげる」
「はい」

 全然知らない、綺麗なお姉さんと言った様子の人と、ダージリン様は寄り添うように歩いて行かれた。何だかとても嬉しそうな顔をしていらっしゃる。
「………ダージリン様って、陸地に恋人がいらっしゃる?でも、ルクリリはアッサム様とカップルだって言っていたような」
 戦車道の隊長。入学式早々、腕を掴まれて紅茶の園に連れていかれた。オレンジペコと言う名前はその日に授かった。よくわからないけれど、その時に入れて差し上げた紅茶がとても美味しかったそうで、同じように紅茶を淹れるのが上手だった先代のオレンジペコ様のお名前と同じにしたい、というダージリン様の希望だったはず。その先代の方がどんな人だったのかは、ペコにはわからない。紅茶の淹れ方なんてルールは同じなのだから、きっと、ペコの名前は何となく、で決めたのだと思う。ルクリリもローズヒップも、アッサム様が「雰囲気で決めた」とおっしゃっていた。最近になって、バニラとクランベリー、ニルギリ、ルフナもティーネームを授かった。バニラはお姉さんが聖グロのOGで、同じティーネームだったそうだ。たぶん、それを考慮されたのだ。
 ペコは成績上位3人の中に入っていて、チャーチル装填手を務めている。将来の幹部候補として、ダージリン様にくっついていろんなお仕事のお手伝いをしている。ルクリリとローズヒップも共に幹部候補。アッサム様は、いつも、問題児なのにどうして成績がいいんだろうって、ローズヒップとルクリリのことをぼやいている。学校が休みの日は、アッサム様は1年生の誰かをどこかに連れて行ってくれたりして、面倒をよく看てくださっている。今回船を降りるときも、てっきり一緒に遊んでくださるのかと思ったが、丁寧にお断りされた。ひっそりとダージリン様とデートでもされるのだろうかと思っていたけれど、ダージリン様は楽しそうに全然知らない女の人と、寄り添って歩いているのは想定外。
「………うーん」
 本を買いたいけれど、ダージリン様が一緒にいる人がどこの誰なのかとても気になる。少し距離を離して追いかけると、高そうなティールームへと入って行かれた。




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Date:2016/09/05
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