【緋彩の瞳】 右手と左頬 ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

右手と左頬 ②

「もしもし、ねぇ聞いてよ。アッサム様が綺麗な年上っぽい人とお茶して、何て言うかラブラブしているように見えるんだけど。これって浮気なの?それとも、アッサム様とダージリン様のカップルって言うのは都市伝説なの?」

 ルクリリはアッサム様と聖那さまと言う人がカフェのテラスに座ったのを確認して、ペコに電話した。コーヒーを飲んでおられる。とてもにこやかで楽しそうだ。後輩に見せるやれやれと言った様子の笑みとは違い、何と言うか、無邪気で可愛らしいと言うか。ダージリン様の前でもあんな風に笑っている姿を見たことがない。
『ルクリリもですか?』
「も?何が?……も?ってどういうこと?」
『今、ダージリン様をお見かけして、見知らぬ女性と楽しそうにお茶をしているんですよ』
「はぁ?そっちもなの?お2人ってカップルじゃないの?」
『うーん、周りはみんなそうだって言っているけれど、私たちはご本人たちに確認したわけじゃないですし』
 でも、いくら何でもそんな噂が広がっていることを、当人たちが知らないわけもないだろう。知っていて否定しないと言うことは、ほとんど事実と言ってもいい。でも、あのダージリン様と言う隊長はよくわからない部分もある。面白いから放っておく、なんてこともあったりするかもしれないし。
「アッサム様、凄く楽しそうだよ。相手の人もかなりの美人」
『こちらも楽しそうですよ。頭のよさそうなキリッとしている美人さんです』
 ただの知り合いで、こんなに幸せそうな顔をされたりするだろうか。とても近しい人であることには間違いない。見たことないような笑みで、甘えているようにさえ見える。
「………ダージリン様が本妻で、こっちは浮気相手とか」

船と陸地、それぞれに恋人がいる……なんて。

『そんなまさか』
「そっちはどんな感じなの?」
『とても楽しそうです。なんだかダージリン様が幼くなったような感じですね』
「うーん。私、気になるから見張っている。あと、グリーン様に連絡して、どこの誰なのか調べてもらおうかな」
 3年生なら、アッサム様たちの愛人……いや、交友関係を把握されている可能性もある。教えてくれるかどうかはわからないけれど。
『でも、例えば本当に浮気相手だったとしたら、一大事じゃないですか?』
「………それもそうか」
 ペコも取りあえず、見張っておこうかなって言いだすので、とりあえず30分後にまた連絡をすると言って、電話を切った。







「それで、どうなの?ダージリンは3年生になって、絶好調?」
「変わりませんわよ。可愛い1年生が入って来て、機嫌よく職務をこなしていますわ」
「そうなんだ。1年生に優秀な子はいるの?うちの妹、ちょっとおとなしいし、馬鹿だから」
 ふわふわの銀色の髪を耳に掛けなおして、聖那さまは機嫌よくアイスコーヒーを飲まれている。
今日、聖那さまたちと会いたいとお願いしたのはこちらからだ。OG会にもあんまり顔を出してくださらないお姉さまたち3人。余計な口出しをするつもりはないからと、卒業される時に言われたが、それにしても放置しすぎで寂しいのが本音。
「聖那さまの妹、4月末にティーネームを授けましたわ。バニラにしました」
「あらやだ。本人は嫌がってない?」
「いえ、喜んでいましたよ」
「そう?妹をお願いね。おとなしくって本当、お姉さまは心配よ」
 バニラの場合、おとなしいと言うよりも、周りが通常よりうるさいような気がする。ローズヒップやルクリリと肩を並べてしまえば、本当におしとやかで静かに見えてしまう。問題児は少ない方がいい。バニラはいい子だ。
「いい子ですわ。ちゃんとダージリン様の指示通りに動ける、聞き分けのある子です」
「あらやだ、どういう意味?」
「スピード狂でもなく、速度を守る良い子です」
 頬を膨らませる聖那さま。拗ねておられるけれど、お姉さまの指示を無視して、勝手に走り回りクロムウェルを大破させたことを、忘れておられるのではないだろうか。そのクロムウェルの修繕費用の寄付金を、何が何でも徴収しなければならないのだ。アッサムは、いくらシスコンの兄とはいえ、そこまで寄付をお願いすることはなんとなくできずにいたのだ。すでに、レストアに相当な金額の寄付をしてもらったのだ。大破させた人間から、まずは徴収したいもの。
「成功は大胆不敵の子供よ」
 結局、大破させたあげく、1年以上も動かすことができずにいるのだから、成功とは言えない。カラカラと氷をストローでかき混ぜながら、ニコニコされておられるこの反省のなさ。今のバニラがこうならないことを願ってやまない。
「聖那さまはおいくつなんですの?まぁ……放置していたお姉さまにも問題はありますが」
「でしょう?全部、麗奈のせい」
 お姉さまと聖那さまからの寄付金を募らなければ。資金繰り関係は全てアッサムが管理しているが、ローズヒップという問題児のおかげで、わずか1か月の内にクルセイダー会からの寄付金が湯水のごとく流れて行き、どうにもこうにもならない。
「お姉さまと、毎日楽しくお過ごしですか?」
「まぁまぁね。相変わらず、かしら」
「そうですか」
「そっちはどう?ダージリンとラブラブ?」
「変わらず、ですわ」
 卒業されるまでの間、何かと聖那さまは、ダージリンとアッサムにちょっかいを出してくることが多かった。ファーストキスを目撃されるし、手を繋いで歩いていたら手刀で邪魔をしてくるし、ダージリンと電話をしていれば、近づいてきて勝手に聞き耳を立てるし。よく愛菜さまがグーで聖那さまの頭を殴っていらした。とても人気のあるお方だったが、アッサムの知っている聖那さまと、他の生徒たちがい抱いているイメージの聖那さまは、まったく違うお方だった。お姉さまは相変わらず、ダージリンとアッサムのことには無関心を貫いたまま卒業された。今でも、電話で話をしてもダージリンのことは聞かれない。
「変わらないの?まだチューより先はないの?」
「………」
 愛菜さまがおられないと、聖那さまは絶好調にそう言うことを聞きたがる。ダージリンは、いつも適当にあしらって笑っているだけだった。あのあしらい方が、そもそも、何もないですと態度に出しているようなものなのだ。
「ダージリン、ヘタレが治らないの?」
「………聖那さまに関係ありませんわ」
「何もないことを純愛とは言わないのよ?」
「ですから、聖那さまには関係ないですわ」
 空になったコーヒーカップを思わず手に取って、空気を飲み込みそうになる。そう言う姿を見ることが、聖那さまの目的だと言うことは重々承知している。それでも、アッサムは誤魔化しをしてしまうのだ。
「アッサム、可愛い」
「……お姉さまに言いつけますから」
「どうぞ」
「愛菜さまにも言いつけますわ」
「………久しぶりに愛菜に殴られてしまうわ」
 熱くなる頬を、水の入ったグラスで冷やしたい気分。早く待ち合わせ時間になればいいのに。





「オレンジペコのティーネームを?」
「えぇ。お電話で伝えようと思ったのですが、出来ればお会いして、直接お伝えしたいと思っていたので」
「そう。聖那の妹には、バニラを付けたとか?」
「えぇ。ペコ以外のティーネームは、すべてアッサムが名付けました。後輩の指導はアッサムに任せていますの」
 愛菜さまおすすめのお店。久しぶりに2人きりでのティータイムだ。愛菜さまの淹れてくださる紅茶が好きだった。アッサムも学年で1番美味しく紅茶を淹れられるが、愛菜さまの淹れてくださる紅茶もまた、違う温もりがあった。厳しい言葉をぶつけてくる時は、よく、紅茶を淹れてくださるお方だった。
「そう。アッサムからはたまにメールが来るわ。情報処理部の部室にエスプレッソマシーンを入れたとか言っていたわね」
「副隊長になって色々と任せていたら、勝手に自動販売機を設置して、みんなで炭酸ジュースを飲んでいるみたいですし、情報処理部もアッサムに何でも買ってもらおうとして」
「でも、あなたは知らない振りなんでしょう?」
「えぇ、まぁ。好きにさせていますわ」
 最初の頃は、アッサムから購入申請書類を見せられて、電子機器の利便性について話を聞いていたが、正直必要かどうかの判断ができなかった。要らないと思うと言えばムッとされるし、分からないと言えば、分かろうとする努力がないと言われるし。なので、もう説明はいらないから、アッサムの好きにしてと伝えたのだ。その代り、資金のやりくりもすべて、アッサムに任せた。
「私たちは3人いたけれど、あなたたちは2人で回しているから、ある程度放っておいてもいいんじゃない?そのオレンジペコちゃんは幹部としてはどうなの?」
「とても優秀ですわ、主席入学者ですもの。遊びにいらしてください。ペコに紅茶を淹れさせますわ」
「それは楽しみね。あの馬鹿2人を連れて遊びに行かないと」
 情報処理部の豊かな電子機器の山を見てしまえば、愛菜さまはアッサムにやり過ぎだと文句を言われるに違いない。ひそかに愛菜さま個人の寄付金を電子機器購入に回していることを知られてしまえば、余計に。
「是非。オレンジペコはとてもいい子ですわ。バニラも、聖那さまと大違いで、おとなしくてとてもいい子ですわ」
「そう?他に目ぼしいのは?」
「………まぁ、少々やんちゃな子はいます」
 ローズヒップとルクリリ。ダージリンにとっては面白い逸材で、将来的には部隊長をさせてみたいと思っているが、愛菜さまには免疫のないタイプだろう。学校に来られるのならば、あの2人を隠しておかなければならない。
「グリーンから、とんでもないのが入ってきたと聞いているわ」
「あら、情報処理部ってば口の軽いこと」
「グリーンは私が育てたのよ」
「そうでしたわね。アッサムがあれほどかん口令を敷いても、愛菜さまには勝てないと言うことですわね」
 情報処理部のグリーンは、アッサムとかなり親しい。タッグを組んで家電マニア。GI6として、2人でいつも走り回っている。よくわからない横文字を並べて会話して、ダージリンはおおよそ蚊帳の外。
「とんでもないのは、聖グロの生徒としては大丈夫なの?」
「どうでしょうか。後輩の面倒はアッサムがみておりますわ」
「何でもアッサム任せなのね。どこかの誰かみたい」
「麗奈さまのようになってしまいましたわ」
「なるな、とあれほど言ったのに」
「副隊長が優秀なんですもの」
 アッサムは今日、聖那さまとお茶をすると言っていた。惚気を聞かされるついでに、色々と聞かれそうなので、ダージリンはそちらには行かずに愛菜さまとお茶をする約束を取り付けたのだ。麗奈さまは用事を済ませたらこちらに来てくださる。久しぶりにランチをする。本当に5人だけでゆっくり食事をするのは久しぶりだ。
「相変わらず、仲睦まじいのね」
「今も、ずっと変わりませんわ」
 正式に学生艦の責任者になるまでは、自然に手を繋いで学内を歩いていた。でも、ダージリン様と周りから呼ばれるようになってから、人目の付くところではアッサムに近づかないようにしている。彼女を守るためだ。
 まるで、1年生に戻った気分だ。ダージリは本当に愛菜さまに可愛がってもらっていた。仕事のすべてを愛菜さまに教えてもらった。だから、オレンジペコのティーネームは、ダージリンにとって、一番身近な存在になるだろう人物に授けたかった。愛菜さまとペコは、性格は違うが、ダージリンにとって大事な存在という共通点がある。
「さて、アッサムたちと合流するわよ」
「はい」
「麗奈もきっと、楽しみにしているわ」
 お茶をごちそうになったダージリンは、アッサムたちと待ち合わせをしているホテルに向かうことにした。高層階にあるレストランに、すでに麗奈さまは向かわれているそうだ。



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Date:2016/09/05
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