【緋彩の瞳】 右手と左頬 END

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

右手と左頬 END

誰も、声を出さなかった。電車を降りて止めていた車に乗り込んで、オレンジペコの運転で制限速度を守って学生艦のブリッジへ向かった。ダージリンとアッサムの間に挟まれて座っているローズヒップは、頬を腫らしたまま。それでも泣き止んでいる。
 5人揃って船長に頭を下げ出港させた後、1年生を隊長室に待機させて、アッサムと2人で学院長のところに謝罪に行き、更に住民代表の方にも謝罪に出向いた。出港が遅れたために、沖合で待機していた輸入船の代表にも電話で謝罪をし、陽が完全に暮れるまで、出来る範囲の謝罪をし続けた。

「ペコ、紅茶を淹れて」
「はい、アッサム様」
「ルクリリ、もういいわ。ソファーに座りなさい」
「はい」
「………ローズヒップ」

 ダージリンたちが隊長室で、あちこち電話を掛けている間、1年生3人は板張りの床に正座をしてじっとしていた。ダージリンもアッサムもやめなさいと言わずに、電話が落ち着くまで、放っておいた。彼女たちなりの反省の態度だ。のんきに紅茶を飲んでいるような子なら、ダージリンたちの見る目がないと、諦めもつく。

「はい、アッサム様」
「………ほら、いらっしゃい」
 外が完全に暗くなった頃、電話も落ち着いてやっとひと段落ついた。アッサムはソファーから立ち上がり、両手を広げている。


「アッサム様~~~!!!」


 痺れた足を絡ませるように立ち上がったローズヒップは、アッサムに縋り付くように抱き付いた。

あの広げられた両手の温もりをダージリンは味わうのは、もう少し後になりそうだ。

「本当に馬鹿なんだから」
「ごめんなさいですわ」
「あなたはしばらく船から降ろさないわ」
「はいですわ」
「陸地練習も、あなたは整備科と船で待機よ」
「はいですわ」
「………本当、馬鹿なんだから」
「アッサム様~~」
「本気で叩いて悪かったわ」

 数時間が経過して、腫れも引いた頬。真っ赤に腫れあがっていたのだ。どれだけ本気だったのかはわかる。後輩たちを溺愛しているアッサムだから、心配で仕方がなかったのだろう。

「どうぞ、ダージリン様」
「ありがとう、ペコ」
「今日、お会いしたお姉さま方は、2つ上のOGですか?」
「そうよ。今度、改めて謝りに行きましょう」
「はい」

 ルクリリとローズヒップに挟まれて座るアッサムから、やっと楽しそうな笑みがこぼれた。

謝り続けて疲れ切った喉に、温かいダージリンの味が広がる。
 たぶんダージリンが守りたいと思ったのは、アッサムの笑顔なのだ。後輩に何かあれば、アッサムを苦しませてしまう。そんな状況に追い詰めたくはない。


「………ローズヒップ」


「は、はい!何でございましょうか、ダージリン様」

 アッサムにしがみつくように甘えていたローズヒップは、即座に反応して隊長机にぶつかる勢いで近づいてきた。

「次にアッサムを怒らせるようなことがあれば、私がぶん殴るから」
「………は、はい!も、も、もう迷子になりませんわ!!!」
「紅茶を飲んだら、夕食に行きなさい。3人揃って食堂に行って、その場にいる生徒に頭を下げておくように」
「はいっ!」
 ルクリリもペコも勢いよく紅茶を飲み干すと、7時を回った時計を見て、慌てて隊長室を出て行った。





 夕食を食べる気力もわかず、寮へ戻った。ダージリンの手を取って部屋に入り、胃の痛みを吐き出すような溜息を吐く。とにかく横になりたくて、制服のままベッドに身体を預けた。ダージリンもすぐ隣に寄り添うように寝転がり、アッサムの身体を抱きしめてくれる。

「さっきね、生徒に病院まで付き添ってもらったという、お年を召した女性の方から電話があったわ」
「………そうですか」
「杖をついていて心配だからって、目的地まで付き添ってくれたそうよ。とてもありがたかった、と」
「………そうですか」
「優しい子だった、と」
「……そうですか」
「感想は?」
「疲れましたわ」
「そうね」
「まだ、動きたくありません」
「えぇ、そうね」

 縋るようにダージリンの胸に顔を埋める。
ホッとするダージリンの体温。
このまま気を失ってしまいたい。



「大丈夫、アッサム?」
「………大丈夫じゃありませんわ」
「あの子を叩いた右手が痛い?」
「……そうですわね」


顔を上げてキスをねだった。
あちこちに謝罪をし続けた唇は温かい。
頭を撫でてくれている手の温もり。
キリキリと痛んだ胃の痛みが消えて行く。


「せっかくお姉さまたちと楽しくランチしていたのに」
「そうね。できればもっといいタイミングで、ペコたちを会わせたかったわね」
「………仕方ありませんわ。私たちの失態ですもの」

 お腹は空いているが、とても立ち上がれそうにない。ダージリンで満たされるものだけで身体を癒すにはこと足りそうな気もする。いつも、朝から晩までほとんど傍にいるけれど、こうやって身体が触れる時間は部屋にいるときくらいだ。外で手を繋ぐこともしなくなった。今はローズヒップ達の手を握りしめていることの方がずっと多い。だから、この瞬間だけがアッサムの癒しなのだ。愛らしい1年生たちの笑顔は見ていて幸せだとは思う。だけど、ダージリンじゃなければ、ダメなのだ。

「アッサム」
「ん……」
 疲れた身体にダージリンの温もりがのしかかってくる。その身体を受け止めて、首筋を這う唇にため息を飲み込んだ。
「そう言えば、聖那さまがダージリンはまだヘタレなのかって、聞いてこられたわ」
 思い切りローズヒップの頬を叩いた右の手のひらに重なる、ダージリンの左手。指を絡めてきつく握りしめてくる。
「触らせてくれないのは、アッサムでしょう?」
「……それはそうですけれど」
「私の左頬は、何度ローズヒップと同じ目に遭ったかしら?」
 言いながら、セーターの上から胸に触れる右手。アッサムは押し返すことも、その甲をつねることもせずに、されるがままだ。何となく、今日は嫌と言う気持ちが持てない。
「………ちゃんと手加減していますわ」
「そう?もう少しだけ、触れていてもいい?」
「………はい」
 隊長として、あちこち謝罪に走ったのだ。かなり疲れ切っているだろう。それでも、いや、だからこそアッサムに触れて気持ちいいと思ってくれるのならば、嫌だと思うはずもない。「どさくさに紛れて、何をしていますの?」
「愛情を表現しているのよ」
「叩かれたいんですの?」
セーターをまくり、シャツの中に右手を入れて、フロントホックに手を掛けたダージリンは、アッサムの右手を握りしめて、張り手を封じたままだ。
「次に聖那さまにお会いした時は、ヘタレと言われたくないのよ」
「………うちは問題児が多すぎですわ」
 乳房に触れてくる温かい手のひら。今まで、触らせることを許してこなかったのは、どっちが悪いのだろう。キスを交わして、縋るように乳房に触れる背中を抱きしめた。セーターを脱がされ、シャツのボタンもすべて外されて抱き付いてくる。もう、嫌だとか恥ずかしいだとか、文句を言う元気が残っていない。

人の頬を叩くのは1日1度、1人限り。

明日の朝まで、ダージリンの頬を叩くのはお預けだ。


 


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Date:2016/09/05
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