【緋彩の瞳】 月明かり

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

月明かり

「外に行くわよ」
「………え、あ、はい」

 夕食後、部屋でいつもの様にお茶をと思って寮へと歩みを進めるより早く、ダージリンに腕を取られて学校の外に出た。


 どこへ向かおうとしているのかはわからない。
 足元を照らす街灯は同じ歩幅を数えるたびに現れて。
 そのたびにダージリンは、夜空を見上げて何かを確認している。


 そう言えば今日は、中秋の名月だ。月を観に行こうと誘わずに同じ歩幅で歩む彼女の隣。
 きっと、真っ暗な場所を求めているのだろう。
 アッサムは掴まれた腕を解いて、今度はその手を取り、暗闇の場所へと誘った。

 石畳が続き、学校裏にある公園。秋の始まりに吹く潮風と、定期的に耳に届く海水の跳ねる音。
 握りしめた手を引いて、眩しいほどの月明かりだけを頼りに、ベンチに腰を下ろした。


 桜が咲けば、夜桜を。
 薔薇が咲けば、夜の薔薇公園に。
 ひまわりが咲き乱れたら、後輩たちと。
 天の川を見上げては、ひそやかに指を絡め。
 モミの木を綺麗に飾る季節は、想いをプレゼントに込めて。
 チューリップが芽を見せる頃、彼女のポケットで手を温める。


 春も夏も秋も冬も、廻る季節をすべて、この船の上で彼女と過ごす。
 そうやって季節を感じることを、彼女はとても大事にしている。
 そしてその大事にしていることの傍に、アッサムを置いてくれる。その時を共に生きている。


「今年も月がとても綺麗ね、アッサム」
「眩しいくらいですわ」
「あなたも、とても月が綺麗だと思うでしょう?」
「はい」

 ゆっくりとこの船が月の輝きを求め進む、先に待っている季節、その場所にダージリンがいる。
 繰り返される日々は、二度と同じ日など訪れない。

 ただ、待ちわびるだけだ。


 そのことがどれほど、幸せなことかだなんて、伝わらなくてもいい。


「来年も、月が綺麗だといいですね、ダージリン」
「あら、とても綺麗なはずよ」
「この学生艦ではない場所でも、月は綺麗ですか?」
「当たり前よ。あなたと見上げる月は、どんな場所でも、たとえ満月じゃなくても、とても綺麗に見えてしまうのだから」
「そうですね」


 背中をなぞるように、指に髪を絡めて抱き寄せられた。
 彼女の肩によりかかり、同じ月を見上げる。


 星の光も敵わない程の月の光。
 柔く白い光が身体を包み、じっとアッサムを見つめてくる。
 


 あぁ、とても月が綺麗。


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Date:2016/09/18
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