【緋彩の瞳】 便利な機能 ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

便利な機能 ②

『ダージリン?』

 そう言えば、後輩がいない時にアッサム様はダージリン様のことをダージリンって呼ぶんだった。普段、あんまり聞かないから、そう言うのを聞いているとやっぱり想い想われているんだなってわかる。

「アッサム、あなた一体どこにいるの?」
『ちょっと、外に。グリーンから電話を受け取りましたの?』
「えぇ。試しに電話をしてみたの。とてもよく聞こえるわ」
『そうですか。使い方は教わりました?』
「ルクリリが教えてくれているわ」
『……ルクリリ?』
 なぜ、その名前が出るんだって言わんばかりのアッサム様のお声を聞いて、どうやらアッサム様はグリーン様に重要な役目を押し付けたんだとわかった。そしてそれを更にルクリリに押しつけてきたんだ。


 酷い先輩たちだ。


「えぇ。でも、通話は出来たわ」
『そうですね。通話とメールくらいは使えるようになってください』
「わかっているわよ」
 アッサム様も、それくらいでいいと思っているのなら、パカパカするやつを取り寄せてお渡しすればいいのに。何というか、宝の持ち腐れってやつだ。
『もう少ししたら、帰りますから』
「待っているわ。ペコたちも一緒なの?」
『はい』
「気を付けて帰って来てね」
『はい。いい子にしていてください、ダージリン』
 
 残念ながら、好きも愛しているも聞くことは出来なかった。でも、取りあえずお2人とも楽しそうなのはわかる。通話が終わって画面が真っ暗になったので、ダージリン様に真ん中のボタンを押して、ちゃんと通話の履歴に残っているかどうかも確認をしてもらった。

「通話の仕方、わかりましたね?」
「大体は」
 履歴からたどる方法もお伝えしたし、アッサム様にさえつながれば、ダージリン様の命に別状はない。アッサム様と通話できなければ、命にかかわるだろう。

「メールは、アドレスが変わってしまうので、そのあたりはグリーン様とアッサム様に聞いておきますね」
「あら、どうして?」
「どうしてという質問にお答えしても、きっとダージリン様にはスマホの仕組みがわからないと思いますが、聞かれます?」
「………結構よ」
 頬を膨らませて、ぷいっとそっぽ向かれても、聞いてもわからない癖にって言い返したい気分だ。やれやれってため息をついていると、ルクリリの携帯にメールが届いた。

 情報処理部から、幹部関係者にダージリン様の携帯電話のメールアドレスが変わったと一斉メールだ。流石。抜かりない。これもアッサム様が事前に指示をされたに違いない。ダージリン様がご自分で、登録している人全員に一斉に告げるよりずっと効率がいいのだ。戦車道関係者以外の人へは、きっとアッサム様から通達が行っているはずだろう。

 っていうか、ダージリン様の携帯電話は一応、私物のはずなのに、アッサム様にも情報処理部にも、情報が筒抜けって大丈夫だろうか。その気になれば、メールだってチェックし放題なんて、プライバシーもないし、浮気もできないんじゃないだろうか。
「ダージリン様、前の携帯電話ってパスワードを設定していました?」
「していないわ。したら、アッサムが触れないもの」
「………左様ですか」
 浮気なんてする気が、露ほどにもないと言うのは、悪いことじゃない。と言うか、アッサム様が弄ることを想定されている携帯電話って、何だろうか。色々突っ込みたいけれど、まぁ惚気として受け取っておこう。

「パスワード、設定してみます?」
「したらどうなるの?」
「他の人が操作できません」
「困った時に、アッサムが触れないの?」
「まぁ、パスワードを教えておけばいいことですが。でも、全然知らない他校の生徒が拾ったり盗んだりしたら、勝手に使われてしまう可能性もあります。それはとても危険です。ダージリン様は良くても、ダージリン様のフリをしてその人が嘘の情報をこのスマホから送ったりすることもできてしまいます」
「それは困るわね」
 うーん、と腕を組んで悩むダージリン様は10秒ほどそのポーズを維持した後、渋々とパスワード設定を承諾された。とりあえず簡単な数字4つで、絶対に忘れないものを決めてもらう。
「ご自分の誕生日はダメですよ。人か想像できそうなものはダメです」
 早速と、09とボタンを押したところで、ルクリリはストップをかけた。バックボタンを押してもらい、推測されるのは避けてくださいと頭を下げる。
「じゃぁ、もうこれにするわ」
 1210と数字を押して、決定ボタンを押したダージリン様の頬は心なしか赤いような気もするが、その数字は何の数字だろうか。誰かの誕生日かなって思ったところで、あぁ、はいはいアッサム様ね、って思い当たった。後で、アッサム様は当然パスロックをされたことを知って、番号を教えろと迫って来られるはずだ。この数字を知って何を思われるだろう。


 今までとは違って、文字の入力がとてもメンドウなものになってしまったのだけれど、それには慣れていただくしかないし、たぶん、ダージリン様はほとんど文字入力なんて必要とされないはずだ。メールは読むだけで、返信もあんまりされない。必要なことがあれば電話をされるお方なのだ。メールしてくる人だって分かっていて、必要なことだけしかメールをしてこない。ダージリン様のパソコンのメールアドレスはアッサム様が管理されておられるから、戦車道連盟や学院長、学生艦関係者から来るメールは全てアッサム様のメールアドレスに転送されて、アッサム様がお読みになり、必要なものはプリントアウトされて、ダージリン様の元に届けられるシステム。

 何というか、羨ましい身分だ。

「ルクリリ、これは何?」
「これ?」
「この、カメラのマーク」
「いや、まぁ、普通にカメラですよ」
「使い方を教えなさい」
「タップして、白い丸を押すと、シャッターが押されます」

 昔から、分からないのなら触ろうとするなと、鬼の形相でアッサム様に怒られ続けたダージリン様だから、まず触ってみる、と言うことをしないのは、身体に沁みついておられるようだ。ルクリリに言われた通り、ダージリン様はカメラアプリを立ち上げて、なぜか勝手にルクリリを盗撮した。

「……なぜ、私を撮るんですか?」
「シャッターを押せと言ったわ」
「ティーカップでも撮ればいいじゃないですか?」
「それで、撮影したものを確認するのはどれ?」


 そこから、想像以上に綺麗な画質ではっきりと写っていることに気を良くされてしまったダージリン様は、スマホを手に、隊長室をウロウロし始めてしまった。



 子供におもちゃを与えてしまったような気分だ。

 ため息をついたルクリリの姿の360度すべてを被写体にされた。カシャカシャ鳴りまくりだ。


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Date:2016/09/18
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