【緋彩の瞳】 だーじりんじゃらし END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

だーじりんじゃらし END

「……グリーン様、何ですかこれは」
「ダージリン様からのプレゼントです。はい、これもつけて」
「………いや、ちょっと」

 ルクリリはふさふさした犬耳を付けさせられたあと、高そうなブランドの首輪を渡された。大型犬用と書いてある、
「休みの間に、一体何があったんですか?」
「ダージリン様は犬がとても好きだそうです」
「………それで?」
「喜ばせて差し上げなさい」


 また、ローズヒップが何かしでかしたペナルティとでもいうのだろうか。これは一体なんだ。ローズヒップは茶色い犬耳を付けさせられて、髪をひとつに括っている。あれは尻尾か何かのつもりだろうか。

「どうして私たちが、ダージリン様の前で仮装しないといけないんですか?」
 文句を言っているペコは腕に犬の手を装着して、帽子タイプの犬耳を被っていて、すっかり子犬仕様が出来上がっている。案外乗り気なんじゃないだろうか。
「ダージリン様、また変な趣味に目覚めたに違いありませんですわ」
「いや、あんたも楽しそうに言ってる場合?」

 どうしてこう、ペコもローズヒップも諦めが早いのだろう。3人をこの姿にさせるのはダージリン様だけのご趣味なのだろうか。アッサム様はご存じなのだろうか。助けに来てくださらないと言うことは、つまりはそう言うことなのだろうか。いや、ダージリン様のことだ、何でもアッサム様が関知していると思ったら大間違い。予想を上回るから、あのお方は偉大なのだ。

  ……変な意味での偉大。


「はい、首輪つけたわね。じゃぁ、行きましょう」
 まさか、リードまで付けられるのではないかと身構えたが、流石にそんなことはされなかった。隊長室に向かう間、すれ違ったキャンディ様が絶句しておられる。もう本当、勘弁して欲しい。
「お嫁に行けなくなる」
「行くつもりだったんですの、ルクリリ」
「ローズヒップはずっとそれ付けて、四つん這いになってろ」
「なんですって~!」
「やるのか、こら!」

 目障りな犬耳を掴んでやろうとしたら、グリーン様にお尻を叩かれた。本当に3年生はみんな、暴力的でいらっしゃる。まぁ精神にダメージを与えると言う意味では、ダージリン様がぶっちぎりだけど。

「こらこら犬たち、暴れるんじゃない」
 グリーン様は情報処理部なのに。もうすっかり、ダージリン様とアッサム様に毒されておられる。3年間を共に過ごすって、これくらい何とも思わなければ無理なのだろう。

「………もう、諦めましょう、お2人とも。きっと私たち、ただの玩具にされているだけですよ」
「ペコがあっちの手綱を引いておかないからだろう?」
「それはアッサム様のお仕事です」


 静かにしろとグリーン様に怒られて、ふて腐れながらも口を閉じた。隊長室をノックすると、機嫌よさそうなダージリン様の声が返ってくる。


「代わりの犬をお連れしました」

 代わりと言って、グリーン様は一礼をして、嫌がる3人を隊長机の前に並ばせる。何だろう、この幸せそうな顔のダージリン様。お休みの間に、一体何があったのだ。

「あらあら。とても可愛いわね」

 相変わらず、麗しい微笑みでいらっしゃる。ダージリン様の傍で立っていたアッサム様は、クスクスと笑いを堪え切れずに、口元をタブレットで隠しておられた。これは、事情を知っておられる顔。唯一助けてくださるはずのアッサム様も、共犯のようだ。

「一体どういうことですか、ダージリン様」
 グリーン様はカメラマンになり、許可なく撮影を始めてしまう。顔を隠すと怒られる気がしたが、笑ってなんて差し上げなかった。

「アッサム、この犬は日本語をしゃべれるの?」
「おかしいですわね」
「それに反抗的な目つきだわ」
「本当に。隣の小型犬の方が可愛いですわね」
「そうね。尻尾を振っている子も可愛いわ」


 何なのだ、これは。


「……と言うことで、あなたたち。隊長室に置いてあった、アールグレイお姉さまからお譲り頂いたティーカップが見当たらないのだけれど、御存じないかしら?」



 ……あ。
 まずい。

 とてもまずい。




「それは、ルクリリが割りましたわ!」
「「ローズヒップ!!」」


 2週間ほど前、ルクリリがそのティーカップで紅茶を飲んでいた時に、ノックもせずに勢いよく入ってきたローズヒップに驚いて、うっかり落として割ってしまった。3人で協議の結果、そっと隠して、そっと同じものを買いに行こうという結論を出し、この3日間、あちこちのお店を探しまくって、みんなのお小遣いを集めて買ったのだ。今日の夜、こっそり棚に戻すはずだったのに。


 やっぱりバレていたか。


「流石だわ、アッサム。情報処理部をまとめるだけあるわね」
「まぁ、この3人は叩かなくても埃が出ますから」

 アッサム様も携帯電話のカメラで写真を撮りだした。連射しまくっておられる。



「だから、素直に謝ろうって言ったのに」
 ペコは今更なことを言った。その場にいなかった彼女には不運だけど、常に連帯責任。痛みは3で割って1余るから、1はルクリリが多めに貰うことにしている。

「どこでばれました?」
 ダージリン様たちに気づかれないように、棚には別のティーセットを取りやすい位置に並べて、割れたティーカップはそこにありますと言わんばかりに、瞬間接着剤でくっつけてわざと後ろの方に置いた。木を隠すなら森の中作戦だった。

「少し前にね、アッサムが棚の中に違和感を覚えたのよ。ティーカップを割っていたと言うのは、少々物足りないくらいだったわね」
「本当ですね。でも、何も言わなくてもグリーンの指示に従ってコスプレすると言うのは、想定外です。文句を言いに走ってくると思っていましたわ」

 今回のお仕置きは、誰の提案でいらっしゃるのだろう。鼻を黒く塗られて四つん這いにさせられないだけマシ、と思った方が良いのだろうか。


「それで、大事なティーカップを割るような犬の躾はどうすればいいのかしら、アッサム」
「リードを付けて、学内を散歩させますか?」
「写真を拡大して、掲示板に貼ると言うのもいいわね」
「シール台紙にプリントアウトして、住民に配るというのもいいと思いますわ。次期隊長たちの名刺代わりに」



 ……
 ………
 ……………



「申し訳ございませんでした!!!」
「でした!」
「ごめんなさい、ダージリン様、アッサム様」


「あらあら、またしゃべった」
「日本語を話す犬なんて珍しいですね」
「教育がなってないわね。お座り」


 草むしりにトイレ掃除、倉庫掃除、トラック走、遠いごみ処理施設まで徒歩でのゴミ捨て、いろんな罰は受けてきたけれど、隊長職を受け継いでからの失態だからか、与えられる罰がえげつない。
 ルクリリたちは、正座をして手を付いた。


「わ、わんわん」
「ワンワン!!!」
「…………わぉーん」

 1人、反省せずにむしろ乗り気の声が横から聞こえてくる。本性だ、きっと。

「ほらね?アッサム。私には忠犬がいるからこれで十分楽しめるわ」
「そのようですね」



 ほらね?って、何?何がどうなって……いやまぁ、ティーカップを割ったルクリリが悪いから罰を与えられているわけだけど。


「アールグレイお姉さまに、この写真を添付して、お姉さまが愛用されていらしたティーカップをこの子たちが割りました、反省しています。と送っておきます」
「お願いするわ、アッサム」



「「「待ってください!」」」


「あらあら、またしゃべったわ」


 こらえきれずに噴き出して笑うアッサム様とグリーン様。ダージリン様の目はこの状況を心底楽しんでおられるようだ。怒りのピークが振り切って、こんな罰を与えたと言うわけではないのかも知れない。


 本当によくわからない。

 もう、分かろうとするのは無意味なことなのだ。


「ワンワンワンワン!!」
「わんわんわん!!!」
「……わぉーん」
 しゃべるなと言うものだから、ローズヒップと一緒になって吠えまくった。目じりに涙をためて笑っておられるお2人が、ずいぶん楽しそうだから。


 仕方がないから、戯れて差し上げることにしたのだ。


 まったく、お2人の相手は楽じゃない。







2016/09/17 Happy Birthday

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Date:2016/09/18
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