【緋彩の瞳】 最高のプレゼント ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

最高のプレゼント ②

5分経って食堂に向かうと、戦車道を筆頭に多くの学生たちから拍手で迎えられた。隊長となって2度目の誕生日。生徒たちの作る歓声と拍手のアーチを潜り抜けて、用意された誕生日席へと向かうと、黄色い悲鳴に包み込まれた。隣の席は空白のままだ。アッサムの姿が見当たらない。何か、準備でもしているのだろうか。

「ダージリン様、おめでとうございます」
「ありがとう、ペコ」

 青い薔薇の花束を持ってきてくれたペコ。後輩たちの誰よりも一番に受け取ったプレゼント。頭を撫でてお礼を伝えると、次々に用意されているテーブルにプレゼントの包みが置かれていく。出来る限り皆さんに直接お礼を伝えて行く。顔も名前もよく覚えていない別の学部の子たちでも、1人1人、丁寧に。ドンドン山が形成されていくのだ。これはとても幸せなこと。

「ねぇ、グリーン。アッサムはどこ?」
 プレゼントの列がようやく片付いた頃、特別メニューらしいランチが次々運ばれてきた。毎年、戦車道の隊長の誕生日パーティは結婚式のようなのだが、回を増す事にエスカレートしていっている気がする。腕によりをかけたという栄養学部が、ダージリンのためにコース料理を作ってくれた。そしてもちろん、集まっている生徒たちにも振舞われる。
「どうしたんですかね。そう言えば、全然お姿が見えないですね」
 穏やかな食事が始まった。オレンジペコとグリーンがダージリンの両サイドに座っているが、席が1つ空いている。アッサムがいまだに姿を見せない。
「ルクリリとローズヒップは?」
「……うーん、何か準備って言っていました」
 3人でいるのだろうか。プレゼントに何か準備がある、ということなのだろうか。あまり突っ込んで聞くと、ダージリンのために走っているとしたら悪い気もする。今日は午後の授業はない。2時間くらいこのパーティは続くだろう。だけど、コース料理が運ばれ出したと言うのに、まだ来ないなんて。
「グリーン、アッサムに電話をして」
「はい」
 電話は鳴っているが取る気配はないそうだ。美味しいタイミングで出てきたものに手を付けないのは、集まっている全員の注目を浴びている以上、マナー違反。ペコが隣で、ちょっと嫌な予感です、と呟いた。
「………まぁいいわ。いただきましょう」
 まったく、アッサムは。どんな時も許可なく離れるんじゃないと、イチイチ言わなければわからない間柄でもないでしょうに。



「ダージリン様~~~!!お待たせいたしましたっ!!」


 メイン料理が運ばれる頃、大きな音を立てて開かれた扉と共に、ローズヒップの大声が食堂に響いた。

「………ローズヒップ……と、ルクリリ」

 次の世代のリーダーたちが、食事に遅れてきたと言うのに満面の笑み。これは演出なのだろうか。お祝いされている側なのでわからないが、ペコが隣で頭を抱えてしまっている。

「私たち、誰よりもダージリン様に喜んでいただける、プレゼントをご用意いたしました」
「ですわ!!」

 騒めく生徒たちの間を縫って、何やら大きなプレゼントが荷台に乗せられて近づいてきた。2人の爛爛と輝いている瞳。食事も取らず、今までその準備をしていた、だなんて。


「あら、本当なの?それはとてもうれしいわ。では、早速見せてくださる?」


 フォークとナイフを置いて、ダージリンはしてやったりのまるで小学生みたいな笑みの2人を出迎え、そして、その大きなプレゼントへと向きを変えた。


「もう、これ以上に最高のプレゼントはありませんわ!!」
「そうね、ローズヒップ。大変だったもんね」


 プレゼントに上も下も最高も最低もないのだけれど、高みを目指す志があるのはいいことだ。一生懸命選んでくれたのならば、こうやってみんなの注目を浴びる価値があると2人が思っているからだろう。

「そう、とても楽しみね。では、あなたたちの手で開けてくださる?」

「「はい!!」」

 2人は、大きな大きな青い布をくるんでいるリボンの端をそれぞれ手にして、せーのと言って引っ張り出した。



 …
 ……
 …………






「…………あら?………お人形?」


 シーンと静まり返ってから20秒ほど、ダージリン様は小首をかしげて、マジマジと座ったまま手を後ろで縛っているアッサム様を眺めていらした。

「そ、そ、そうですそうです。えっと、そう、ダージリン様が世界で一番欲しいだろうと思って」
「アッサム様人形ですわ!!」

 殺意の込められた視線を感じた。振り返っているアッサム様がきつくにらみつけてこられる。ルクリリは、その頭をそっと両手で、ダージリン様へと戻した。

「あら。動いたわ」

「えっと、えぇ、もうそりゃ、再現性を何よりも重視しましたから!!」
「ダージリン様のお好きになさってくださいませですわ~!!」

 シャツの中で、汗がダラダラと背中を這っていく。明日、命はないかもしれない。

「………素晴らしいわね、2人とも。間違いなく“最高”と言う言葉がふさわしいプレゼントだわ」

 ダージリン様はリボンを巻かれたアッサム様を見つめた後、満面の笑みをルクリリ達に見せてくれた。


「ダージリン様、あの、間違いなく本物、にしか見えませんが」
 ペコは頭を抱えながら、ダージリン様に余計なことを吹聴している。
 いや、まぁ事実だけど。

「あら、アッサム人形なのでしょう?2人とも、当然それは、私の所有物になるということよね?私がどのように扱っても、私の自由、と言うことよね?」


 …
 ………
 …………


「YES、ダージリン様!!!」


 こんなにも美しい笑みを見せるのか、って言いたくなるほど微笑むダージリン様に、思わずローズヒップはよくわからない返答をしているようだ。

「大変結構。まったく、なんて愛らしいのかしら。是非、毎日連れて歩きたいものね」
「どうぞどうぞ」
 ルクリリはアッサム様を拘束している手首のリボンを解き、手を取ってゆっくりと立たせた。


「どこに消えたかと思えば、アッサム。私のためにプレゼントにされていたようね」
「………お喜びいただけました、この余興」
「今日から私の所有物よ。まぁ、身体に沢山リボンを付けて。なんて可愛いのかしら」
 
 いつものダージリン様の隣の席におつきになったアッサム様。

 食堂はクスクス笑う声と、よくわからない拍手が巻き起こった。


「なぜ、拍手されなければいけないのかしら」
「それはまぁ、アッサム人形がとても可愛いからね」
 周りから、流石ルクリリとローズヒップは、やることが違うなんて声が聞こえてくる。笑っている3年生たちはお腹を抱えて、本当に他人事なんだから。
「お人形さん、この計画はいつからスタートしていたの?」
「知りませんわ。いきなり捕まりましたもの」
「そうでしょうね。どうせなら、メイド服を着せてもっと、本格的なものが見たかったわ」
「………左様ですか」
 食堂に笑いが巻き起こり、何だかとてもいいムードができてしまった以上、ふて腐れることも、あの2人にひどい目にあわされた文句も言えず、アッサムはリボンを身体に巻かれたまま、出された食事をようやく食べ始めることにした。

「お人形さん、あーんってしてあげましょうか?」
「なぜですの?結構ですわ」
「でも、私のお人形なのでしょう。ねぇ、ローズヒップ」
 
 あぁ、もう。

 人形、なんて適当な設定を口走るからこうなってしまうのだ。普通に笑いが起きて、それで終わりにしていればいいものを。
「も、もっちろんですわ」
「遠慮します。私は最新式のAIですの。もう、全然、人の手などなくても、自ら考え自ら行動できる最新のテクノロジー搭載ですから」
 自分でナプキンを膝に乗せて、出されたスープをスプーンで掬う。お腹が空いていたから、とても美味しく感じた。
「………ちょっと、ルクリリ。このお人形の性能が良過ぎるわ」
「ダージリン様のために、高性能にしておいたのですが。お気に召しませんか?」
「まぁ、いいわ。これはもう私のものだから。とてもいいプレゼントだわ。後生大事にさせていただくわね」

 人目もはばからず、頭を撫でてきて幸せそうな笑顔。
 こういう笑顔をされると、後で本気でルクリリとローズヒップを叱り飛ばすことができなくなってしまう。

「やったね、ローズヒップ」
「やったーですわ、ルクリリ」
 がっちりと握手を交わすその隣で、ペコが悔しそうに拳を握りしめていた。きっと、あの子はちゃんとプレゼントを事前に用意して、ダージリンに渡したのだろう。可愛そうに。


 いつから聖グロは、ダージリンを喜ばせたもの勝ち、みたいな風潮になってしまったのだろう。ちらりとプレゼントの山が視界に入る。あの沢山の物だってみんな、真剣に選んだものばかりだって嫌になるくらい知っている。

 よりによって、先輩を拉致してリボンを巻いて差し出したものが、こんなにもダージリンを喜ばせてしまうなんて。


 思えば思うほど、自分に非があるように感じるのは、気のせいだろうか。
 アッサムは、ニコニコしながら頭を撫でるダージリンの腕を掴んで、満面の笑みを返して、その手の甲を優しくきつく、つねっておいた。



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Date:2016/10/02
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