【緋彩の瞳】 最高のプレゼント END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

最高のプレゼント END

2年生たちが一生懸命作ってくれたケーキが登場して、みんなで食後のデザートとしていただいた後、ダージリンはマイクを使って、今日のお礼と、お返しに用意しておいた最高級茶葉の缶を、1人1人に手渡して、パーティは終わりを迎えた。ダージリンと写真を撮りたがる後輩たちや、アッサムにも写真を撮りたいとお願いをしてくる後輩たち。ダージリンはペコからもらった青い薔薇を手に、1人1人写真撮影に応え、アッサムは、主役は自分じゃないからと、全員のカメラから逃げ回っていた。

「ペコ、何も知らなかったようね」
「朝から2人でヒソヒソしていたのを見ていただけで、本当に何も」
「そう。加担しなくてよかったんじゃないかしら?アッサムは忘れた頃に仕返しをするはずだから」
「………でも、ダージリン様、本当は嬉しいんでしょう?」
「あら、誰のものも等しく嬉しいわ。この薔薇、文字が書かれているのね。とても気に入ったわ」
「本当ですか?」
「えぇ」

 小さなペコの頭を撫でて、すっかりこのパーティを成功させて機嫌よくしているルクリリとローズヒップのことを、やれやれと見つめた。発想と言う意味では、ある意味天才かも知れない。その力を来年、どこまで発揮してくれるのだろうか。




「まだ、外してはダメですの?」
「ダメよ」
「夕食にこれではいけませんわ」
「私が今から、ゆっくり外すのだから」
 プレゼント、として部屋にお持ち帰りしたアッサムの手を取ってベッドに座らせる。髪を束ねている赤いリボンをゆっくりと引っ張り、おでこにキスをした。
「本当、可愛いお人形だわ」
「………」
 ふわりと髪が揺れる。ネクタイの代わりの赤いリボンを引っ張り、指に巻かれているリボンも外し、身体に巻き付けているピンクの布を外した。
「リボンがなくても、それはそれで可愛らしいと思うわ」
「………夕食前ですけれど」
 当たり前の様にシャツのボタンを外し、当たり前のように露わになった肩に唇が吸い付いた。回した両手で許可なく下着のホックを外して、手のひらで背中を這って温もりを確かめる。

 呼吸を繰り返す背中。
 大好きな匂い。


「お人形さんは、私の所有物でしょう?」
「…………はい」
「ずっと、大切にするわ」
「飾っているだけにしないおつもりですね」
「当然よ。拒否権などないわ」

 数センチの距離にある、恋しい瞳。
 唇を覆っても、お互いに瞼を閉じられなかった。

「…………この状況で、拒否すると思います?」
「そうね」
「12時までは、ダージリンのお好きになさってください」
「あら、嬉しい。では、セックスした後、夕食を食べに行って、また帰って12時までセックスしましょう」
「わかりましたわ」

 本当のところ、アッサムを所有物にしたいなどと言う気持ちはない。アッサムはアッサムの意志でダージリンの傍にいるのであり、ダージリンがアッサムの身も心も縛りつける理由もなく、ただ、恋しいと思う存在である、それだけだ。

 だからこれは、ほんの少しのお遊び。

「本当にいいプレゼントだったわ」
「私の誕生日の時も、あの子たちにリクエストしないと」
「裸にエプロンで現れましょうか?」
「………見たくありませんわ」

 身体中に恋しい想いを刻み付けながら、山積みにされたプレゼント達が少し掠れてしまう気がして申し訳ない思いを抱く。花瓶に飾られた青い薔薇。食堂のテーブルを彩っていた沢山の花たち。


 幸せはいつも身体中に溢れている。物など何もいらない。アッサムがいて、隊長として慕ってくれる生徒がいて、おめでとうと言葉をくれる生徒たちがいて、それだけでどれほど幸せか。いつか壊れて消えてなくなる物よりも、美味しいものを食べ、笑ってくれて、楽しいと思えるひとときを生徒たちと過ごせたことが、何よりも喜ばしい。

 そう言う意味では、笑わせてくれたルクリリとローズヒップのアイディアは悪くはなかった。あとできっと、あの子たちは痛い目に合わされるはずだろうけれど。


「どうしました、ダージリン」
「いえ、幸せであることがとてもうれしいと思っていたの」
「そうですか」
「アッサムが私の腕の中にいるんだもの」
「……そう、ですね」

 ダージリンの前髪を掻き分けて、やれやれとため息を漏らす恋しい人。
 後輩に甘い自分自身に嘆いているその瞳。

「12時を過ぎたら、どうするの?」
「……あなたの隣で寝ますわ、ダージリン」
「そう」

 解いて落とした沢山のリボン。捨てずに丁寧に持っておこう。


「………終わりませんわぁ~~」


 早朝5時前。ツナギに着替えたルクリリはローズヒップと共に、各戦車への燃料を次々に入れていった。
通常、整備科は10班程に分かれて、日替わりでその作業を行っている。1班5人だ。車両数を考えれば、2人で出来る作業量ではない。5人でやれば比較的すぐに終わるから6時くらいから始めるそうだが、それを2人で8時半までにすべて終わらせなければならないのだ。


「アッサム様も、2週間ほど機嫌がよかったのに。油断していたなぁ」
「お尻ぺんぺんの方が、ずっとよかったですわ」

 重たい燃料を運びながら、各車庫を回ってはタンクに入れて行く作業。毎日毎日、もういいって言うまでやれと命じられてから、2週間が経過している。つまり、ダージリン様の誕生日からもう1か月が経過したのだ。なんともまぁ、根に持つタイプでいらっしゃる。


 副隊長を拉致して、みんなの前で笑われることをしたのだ、仕方がない。
 流石に今回は連帯責任をペコに取らせずに、毎日、ベッドでスヤスヤと眠って、ダージリン様のお隣で美味しそうに朝食を取っている。ルクリリとローズヒップは遅刻ギリギリまで作業をしているから、朝食を取る暇もなく、昼までひもじい思いをさせられている。


「あ~ぁ。来年、私の誕生日会とか、しなくていいから」
「絶対しませんわ」
「何だと?」
「ルクリリが隊長になったら、ダージリン様みたいに盛大なことなんてしませんわ。せいぜいクラッカー1つ鳴るくらいに違いありませんわ」
「……私はダージリン様みたいにはなれない。1つあればいいわよ」
 あんな偉大な隊長は、後にも先にも現れない。どうしてあの人の後を受け継ぐのが自分なのだろうって、毎日思う。あんな風にみんなから愛されて、沢山のプレゼントに囲まれる自分なんて全く想像もできない。
「ルクリリはダージリン様になんてなれませんわ。私もアッサム様にはなれませんもの」
「それもそうだね」
「でも、ダージリン様はルクリリなら、黒森峰に勝てるって言っていましたわ」
 重たい燃料を台車に乗せて、マチルダⅡの最後の1両に取り掛かる。こんな鈍足で火力のない戦車ばかりの集団で、どうやって黒森峰と戦えばいい。過去、どれだけ負けを重ねてきたのだろう。夏の戦いが終わった夜、どれだけ泣き腫らしたか。
「………きっと、優雅にしていたら勝てないって言うことだよ」
「そう言うことですわね。これだけ油まみれで、今更、優雅なんて無理ですわ」
「こんなにも罰を与えられている幹部も珍しいってこと」

 すべての戦車に燃料を入れて、チェックリストで問題ないかを確認してサインを書き込み、整備科の部屋に届けて作業終了。お腹が盛大に鳴り響く。



「ルクリリ」
「ん~」
「これ、差し入れですわ」

 整備科長の机の上に、見覚えのある赤いリボンで包まれているバスケットが置かれてあった。リボンを解いて中を覗き込むと、タンブラーが2つとサンドイッチ。


『今日で任務を解く』

 一言だけ書かれてある。その文字の美しさはアッサム様だ。


「………ダージリン様がアッサム様にメロメロなのは、仕方ないんじゃないかな」
「ルクリリ、人のものを欲しがってはいけませんわ」
「いや、そう言う意味じゃないんだけど」


 相変わらずキツイ罰だったが、何だか爽やかな想いさえ抱いてしまうのだから。

 何というか、ダージリン様にアッサム様をプレゼントしてよかったと思ってしまう自分が、ちょっと情けなかった。


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Date:2016/10/02
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