【緋彩の瞳】 星降る夜に

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

星降る夜に


「………あっ」
それは、本当に一瞬だった。
だから確信が持てなかった。
流れ星を生まれて初めてこの目で見たのだから。
「みちる!はるか!……美奈!!」
毎年12月14日は、ふたご座流星群が見られるという。
興味がないわけではないけれど、この寒い季節にわざわざ出かけてまで見に行こうとは思わなかった。はるかとみちるも仕事で帰ってくるのが遅いし、無理に連れて行ってもらうのも気が引ける。
「どうした?」
「今、流れ星を見たの」
お風呂上がりのはるかが、ガシガシと頭をタオルで拭きながらリビングへと入ってくる。レイは庭へと続くウッドデッキから手だけを伸ばして、急いで!とせかした。
「あぁ、そっか。そう言えば今日だもんな。レイ、興味がなかったんじゃないのか?」
一番にお風呂に入って暇を持て余している間、なんとなくウッドデッキに出て外を見上げた瞬間、暗闇を光線が横切ったのだ。
人生で初めて見たのに。
この興奮を誰とも分かち合えないことが、思いのほか寂しかった。
家にいる人間全員の名前を呼ばないと気が済まなかった。
「レイ、冷えるから何か羽織りなよ」
「持ってきて。みちるがさっき着てたコート、あそこにかけているでしょ」
適当にコートかけがあるはずの場所を指しても、もちろんそこを確認のために見たりしない。
あぁ、もっと流れ星を見たい。
でも1人では嫌だ。
「美奈は?みちるは?」
「今から風呂入るって言ってたぞ。待ってろ」
一瞬を逃さぬように、暗闇の空を見続けなければ。
思いながらも、一緒に見たい相手を強く思った。

「おーい。2人とも、レイが呼んでる」
はるかがリビングから声を張り上げて、バスルームに向かっていた2人を呼びとめてくれた。遅めのお風呂だから一緒に入ろうとしていたみちると美奈も、やっとレイの傍に来てくれる。
「………あ……」
また、星が輝いて流れて行った。
また、誰も一緒に見てくれてはいなかった。
「レイ。ほら、冷えるじゃない」
みちるの声と温かい何かが身体を包んだけれど、つまらないため息しか出せなかった。
「レイ、どうしたの?」
「見たのに……。みちるも美奈もすぐ来ないんだから」
はるかは、どこかに何かを取りに行っているのか、姿が見えない。
「あぁ、今日はふたご座流星群が見られるのよね」
美奈は興味が沸いたのか、レイの横に立って夜空を見上げた。
星はいくつも輝いているけれど、降っては来なかった。
「冷えるぞ」
裸足にスリッパのはるかは、美奈とみちるのためにブランケットを取りに行っていたようだった。
「私、2つも見たのに」
「レイ、ずるくない?レイが興味ないって最初に言ったのに。私、まだ一度も見たことがないのよ?」
美奈はひんやりする指でレイの首筋をくすぐってくる。肩をすぼめて逃げても、視線はずっと上を向いたまま。
一瞬の輝きを
刹那的な美しさを
逃したくはない。
4人で見なければダメなのだ。

「明日、かなり冷えるらしいぞ。2人とも、あったかい格好して寝るんだぞ」
大きくてしなやかな腕が、レイと美奈子の髪を撫でてくれる。
「はるかも寝ている途中でズボン脱ぐ癖、気をつけなさいよ」
「美奈子だって、寝てるとき反回転してるくせに」
「私、今日はみちると寝る。美奈が隣だと布団持って行かれるから寒い」
「そうね、レイ。クリスマス前に風邪をひいたら大変だから、今日は私と寝ましょう」
みちるが肩を抱き寄せて、頬を寄せてくれる。ひんやりしていた。
「え~!やだ。はるか、ズボン脱いで冷えたらくっついてくるもん」
「くっついても、美奈子の足だからいいじゃん」

そんな平凡な愛を笑い合っていると、4つの輝きが夜空へと降り注いだ。
「「「「……あ!!」」」」

重なった声
重なった喜び
分かち合える愛が降る夜

「すごかったな」
「えぇ、きれいだったわね」
「4つもあったよ?どうしよう、お願い事するの忘れたよ」
「美奈、流星群にお願い事ってずるくない?」

星降る夜に
白い吐息を吐いて
4人で笑い合っていた





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Date:2011/10/14
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