【緋彩の瞳】 あなたに希うものは、私への恋 ①

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

あなたに希うものは、私への恋 ①

 目が覚めると、世界がゆがんでいた。
 瞳がおかしくなってしまったのか。
 瞼を擦ってみても、目の前に広がる何かが、やはり奇妙に感じる。
 何か、得体のしれない空間の中に閉ざされている。
 ベッドのシーツの白はいつも通りだけれど、それ以外のすべてが見慣れないものだ。

 円形のRを描く世界。自分の姿が滲んで見えた。

 

「………硝子?」


 手を伸ばし、そっと触れた何か。
 質感はとても冷たく、指紋を薄っすらと残す。


「硝子……だわ」


 指先で触れたまま、ゆっくりと歩いた。Rを描き一周してみる。自分のよく知るベッドを囲む丸い硝子の壁。天井を見上げると、だんだんと尖って行っているようで、先が見えない。


「ダージリン……。ダージリン?」

 状況を把握するためにベッドの上に座り、硝子の向こう側を見つめた。
 透明な壁の向こう側は真っ白で、何もないのだろうか。
 誰かが外の世界にいてくれないだろうか。
 ダージリンの部屋はどうなってしまっているのだろうか。
 
 そもそも、これは一体何事なのだろうか。 
 
 

 壁の向こう側。何かが近づいてきている。その近づく音すら聞こえない、分厚い硝子の壁。

「………ダージリン……」

 そうであってほしいと、希った。アッサムを助けてくれるのは、アッサムを想ってくれているのは、この世界で1人しか存在しないのだ。ここがアッサムの居るべき“世界”であれば。


「ダージリン?」


 歪んだ世界の向こうにいるのは、その縁取りは、心から恋しいと想う人。


「ダージリン!!」


 なぜ、自分がこんな巨大な硝子の中に閉じ込められているのかは、わからない。
 入り口はどこにあるのか。どうすれば出て行くことができるのか。
 誰が、こんなことをしたのか。


「ダージリン!助けてください!」


 硝子を叩いた。鈍い音だけが身体を震わせた。

「ダージリン!」

 壁の向こう側にどんな音となって、叫びが届いたのだろう。

 本当はとても好きですと、そう、伝わってしまっただろうか。

 




『 “            ” 』






 屈折したダージリンの顔は、笑っているのか怒っているのか、あるいは泣いているのか。それすらも何も見えなくて。

「待ってください、ダージリン!助けてください!ここから出してください!」


 歪んだ透明な世界に閉ざされた、どれだけ叩いても、割ることができない硝子の壁。



 ダージリン!
 ダージリン!
 ダージリン!

 硝子の壁に向かって叫ぶ声は、反射してアッサムの耳に突き刺すように返ってくる。
 自分の慟哭に耐え切れずに耳を塞いだ。
 蹴っても、殴っても、鈍い音ばかり。


 ダージリン
 ダージリン、行かないでください
 行かないでください
 助けてください

 金の髪、青いセーター。その背中が少しずつ硝子に反射せずに遠ざかって行く。


 ダージリン

 この声がその名を叫べば、その音でこの身体が殺される気がして、頭を抱えてうずくまった。

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Date:2016/10/20
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