【緋彩の瞳】 Actress

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

Actress

炎天下、蒸し暑さに耐えて夕闇が訪れるまで続いた訓練。黒森峰との試合を間近に控え、隊員たちはへとへとになって寮へと戻っていく。いつもは元気が有り余っている1年生たちも、今日は無言でダージリンから逃げるように姿を消した。
 ここ数日、ダージリンは明らかに疲れが溜まっている。決してそれを態度にして見せつける人ではない。しかし、完璧であろうと背筋を伸ばして、微笑んでいる瞳に映える演技が、ダージリンをよく知る人には痛々しく見えてしまうのだ。


 『ダージリン様がお疲れなのは、私たちのせいかもしれない』


 ルクリリたち1年生は、ダージリンの笑みを見ては怯え、どうしようもなくて逃げてばかり。誰かの何かが悪いということではないと伝えても、それなら、何とかして欲しいと言われる始末。


 重荷を1人に背負わせたいわけではない。ダージリンという聖グロの隊長は、自ら進んですべての責任を背負い、孤高であろうとする。そのことが美しいと言わんばかり。

 そして、その美しさを誰もが望んでいることを、ちゃんと自覚しておられる。




「ダージリン」




 寮に入る直前まで凛々しく、無理やりな笑みを振りまいていたその人。手を取り、アッサムの部屋に引っ張り込んだ。流れに逆らえずによろけるような足。重たい、伝統と言う足かせを引きずってズリズリ響く音が聞こえてきそうだ。


「………なぁに、アッサム」


「あの、抱きしめてもいいですか?」


 ここ最近、ゆっくりと2人だけの穏やかな時間はなかった。夜中まで地図を広げて話し合った後、別々にお風呂に入り、気を失うように眠りにつく。当たり前の様にベッドの隣に眠っても、アッサムはダージリンの疲れが気になるし、ダージリンもまた、いつもアッサムの身体を心配した声を掛けてくださる。

 口づけもない。どうして、彼女がアッサムの唇に触れてくれないのか、理由は知っている。
 とても疲れていると、唇から伝わることを怯えているから。
 触れないことで隠そうとして、いつの間にか、互いの身体に触れることもしなくなっている。肩に手を置くことすら、気を使うほどに。



 お互いに、今、一番何が大事なのかということを分かっている、“フリ”をしている。


「どうしたの?何か辛いことでもあって?」


 浅く繰り返される呼吸は、疲れを見せまいとする瞳の揺らぎを、誤魔化すための演技。


 直視できずに視線を逸らした。
 辛いことを背負っているのは、ダージリンだと言うのに。
 その台詞を先に言わせてしまう、自分の愚かさにため息すら出ない。


「…………辛いことは何もありません。私の傍には、いつもあなたがいてくださいますもの」


「そう。ありがとう、私もよ」

 わずかな躊躇いの後、力なく、だらりと落とされていた腕を無理やりあげて、冷えた指先が頬に触れてくる。



「もしかして、抱きしめて欲しいの、アッサム?」


 違う。
 アッサムがダージリンを抱きしめたいと願ったのだ。


 慰めてあげたいと、そう強く願ったのはアッサムなのに。


「………ズルいです、ダージリン」
「ズルいの?」
「……たまには、私に甘えてください」


 乱暴に腕を回して、強引にでも抱きしめることができればいいのに。
 言葉を紡ぐことで精いっぱいで、情けなさが雫になってその指先に落とされていく。


「アッサム、あなた、疲れが相当溜まっているのよ」
「違います、私は……私は……」


 いつも、ダージリンのためにと願っても、何の役にも立てていない。


 背中に触れてくれた温もり。
 瞳の疲れている温度。
 抱きしめたいと願ったこの腕を、どうすればいいのだろう。


「ダージリン………」
「なぁに?」


 嫌いだと思った。
 その言葉だけでも、伝えたかった。


「そうやって、自分を誤魔化すあなたが嫌いです」


 騙し合いではなく、互いに続ける演技をもう少しまだ、続けなければならない。
 そうさせているダージリンのことが嫌い。
 それを許してしまう自分のことも嫌い。


「………夏の戦いが終わるまで、あなたに甘えることはしないわ。終わってから、命いっぱい甘えるの。それを楽しみにして、今を乗り越えたいのよ」

 縋りたいとあげた腕。致し方なくその鎖骨に顔を埋め、涙を押し付ける。

「………だったら、もっとうまく“ダージリン様”を演じてください。私には、見るに耐えられない酷い演技ですわ。ほころびが気になって、仕方ありませんの」
「そのようね。申し訳ないわ」

 このままじっとしていても、冷え始めた汗がただ、不快なだけで。
 アッサムがダージリンを抱きしめてあげることなど、出来るはずもなくて。

「…………必ず優勝してください、“ダージリン様”」
「えぇ、そうね。終わったら、私を抱きしめて」
「肋骨を折って差し上げますわ」
「まぁ、楽しみだわ」


 偽りの女優に抱きしめられた身体。
 ほんの少しだけでも、重荷を分けてくださればいいのに。


 それすらも、してくださらない彼女が嫌い。




 あぁ、好きで仕方がない。

 














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Date:2016/10/20
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