【緋彩の瞳】 あなたのままで END

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

あなたのままで END

「キャンディ様~~!!」
「リゼ様~~~!!」
「カモミール様~~~!!お腹がぺっこぺこですわ~~!!」




 1年生の3人が、遠くから手を振って走ってきた。確か戦車道の1年生たちは、1フロアを使って迷路を作っていたはずだ。しかも、お化け屋敷と合体している。


「ど~~ん!!」
「……こらっ!!」
 
 ルクリリに体当たりのように抱き付かれて、身体が数センチ浮いた。そのうち骨が折れるのではないかと思うけれど、ローズヒップに抱き付かれて折れそうなアッサム様が、今日までご無事でおられるのだ。こんなことでめげている場合ではない。

「お腹空きました!もう、ずっとお化けを釣り竿で吊るして動かしてばっかり。誰も驚かないし、笑われるし。ペコは迷路の中で迷子になるし」
「なっていませんよ!監修したのは私なんですから」
 キャンディよりも少し背の高いルクリリに、持ち上げられそうになる。隣のリゼはローズヒップを背中に張り付けている。この子たちは誰にでもくっついて、本当に人懐っこい。高校生と言うより、小学生のようにも見えることがある。戦車に乗っているときとは大違いだ。
「後で遊びに行くわ。あなたたちのお弁当、用意してあるわよ」
「やった~~!お弁当~!!お弁当~~~!」
 カモミールが高級な瓶入りのお茶とお弁当を3つ、ペコに手渡した。飛び跳ねて喜ぶルクリリとローズヒップ。同じリズムで、キャンディの身体も跳ね上がった。
「秋桜が咲いている花壇の傍で食べますか?」
 ペコはまるで、宝物のように大切にお弁当を両手で抱きしめてくれている。ほんの些細なことだけど、その姿が愛らしくて、嬉しい。
「お花見ですわ」
「ローズヒップは花よりお弁当だろう?」
「……お弁当を食べてから、秋桜を眺めますわ!腹が減ってはお花見できぬ、ですわ!」
 リゼがローズヒップの頭を軽く叩いても、それでもヘラヘラと笑っている。


 3人並んで仲良く、本当に美味しそうにおにぎりを頬張る姿を眺めながら、よくわからないけれど、キャンディは、“私らしい”という言葉を、とても心地よく噛みしめていた。
 キャンディには、キャンディのなすべきことがあって、たぶん、ちゃんと誇りを持って胸を張ってもいいのだろう。あのOGのお姉さまたちのように、黄色い声援を浴びるカリスマ性もないし、ダージリン様たちのような個性や統率力もない、ルクリリのように人を惹きつける才能もない。

 でも、キャンディが持っていなくても、リゼやカモミールが持っていなくても、それはそれでいい。持っていないことに目を向けて、ため息を吐いても、空から降ってくるものではないのだ。


「あ~美味しかった~~。やっぱり、戦車道にはキャンディ様たちがいないと」
「それは、主に書類作成の手助けが欲しいという意味ね」
「違います。ちょっとは正解ですけれど、キャンディ様たちが支えて、みんなを癒してくださらないと、私たちだけじゃ、聖グロ学生艦は難破船ですよ」
「………胸を張って言わないで、隊長さん」
 重大な書類のミスがあれば、冗談でもなく学生艦は動かない。そのことで誰かの命を落とすなどと言うことはないが、誰かが困り、誰かが怒り、誰かが悲しむのは確かだ。ルクリリ達にその全てを委ねたいなどと、キャンディたち2年生は誰ひとり思っていない。

 2年生たちは、1年生の隊長と副隊長を本気でサポートしていく。その結束力は確かだ。
 本当は、そのことはもっと誇らしく思ってもいいことなのだろう。

「キャンディ様たちの言うことを、しっかり聞くようにって、ダージリン様たちから言われていますもん」

 開き直り、ルクリリはずっと胸を張ったまま。
リゼとカモミールからは、笑い交じりのため息が漏れた。


「じゃぁ、私たちを決勝戦まで導きなさい。その約束を守れるのなら、私たちは全力であなたたちを支えるわ」



 ダージリン様もアッサム様も、ルクリリなら優勝を狙えると信じて隊長にされた。ルクリリなら、決勝の地へ連れて行ってくれる。信じて、2年生たちは支えながら、共に歩むのだ。


「もっちろんでございますわ!!!来年の夏はぶっちぎりで優勝ですわ~~!」
「……ローズヒップ、競争じゃありませんけど」
「私がかっこよくセリフを言おうとしていたのに、邪魔するな~!!」


 言い合いながらも笑う3人は、アッサム様たちが咲かせた秋桜になんて目もくれず。そしてキャンディたちもまた、そんな3人を笑いながら見守っていた。



その数時間後、写真同好会の展示室で、グリーン様とアッサム様が共同で「戦車道、1年間の活動内容」ということで、かなり沢山の写真を発表されていた。1年生が初めて戦車に乗った日の様子や、夏の大会、親善試合の一コマ。3年生たちが満面の笑みでピースサインしているものもあって、仲睦まじい様子がうかがえる。
その中に『ご主人様と忠犬』という10枚ほどの写真があった。何週間か前に隊長室の近くで見かけてしまった、あの犬の恰好がこれだったのか、と正体がわかって腰が砕けた。
 リードを振り回して戯れているご様子のダージリン様と、お手を強要されている様子のルクリリ。四つん這いのローズヒップに、写真を撮られまいとお尻を向けているペコ。何というか、よくまぁ、これだけ綺麗に撮れたものだ。きっとアッサム様とグリーン様は、喜々としてカメラを向けておられたに違いない。
直筆の反省文まで展示されていた。どうやら、アールグレイお姉さまが使っていたティーカップをルクリリが割ったらしい。それは、ノックをせずに勢いよく扉を開けたローズヒップに驚いたから、だそうだ。そんな重大なことは、聞かされていなかった。2年生は誰ひとり、知らないはずだ。まったくもって、初耳のこと。今更、ダージリン様たちにどう謝ればいいのだろう。
リゼとカモミールと3人で頭を抱えていると、憐れみのような慰めの声が、周りから聞こえてくる。戦車道とは無関係の生徒や聖グロの住民たちに、この、愚かな失態をさらすとは、アッサム様たちもやはり、普通を飛び越えた場所に居られるお方だ。


「………心が折れそうよ」
 カモミールはがっくりとうなだれてしまっている。完全に犬にしか見えないローズヒップの写真は可愛いけれど、誰もルクリリたちのしでかしたことを、教えてくれなかったのだ。教えない代わりに彼女たちへの制裁がこの写真の掲載、と言うことなのだろう。2年生はこの件について、ルクリリたちをかばうな、ということだ。
「大丈夫よ、カモミール。心はとても柔らかいから。折れるようなものではないわ」
「握りつぶされるかもしれないけれどね」
 すかさず、リゼが突っ込みを入れる。ゴムのような心臓でもない限り、ルクリリなら片手で握りつぶすかもしれない。



「………この写真を観て、笑えるくらいにならないとね」


 キャンディは、そんな日が1日でも早く来ればいいのに、と思いながら、でもそれは気持ちの持ち方なんだって、強く自分に言い聞かせた。
たぶん、アッサム様は“次の隊長たちは面白い”ということを多くの人に知ってもらうために、この写真を掲載されたのだ。まさか、アールグレイお姉さまたちが突撃されるなんて予想もせずに。


 …
 ……
 ………

 もう、ご覧になられてしまったのだろうか。

「ねぇ、キャンディ。嫌な予感がするのだけれど」
 ぞろぞろと、数えきれない人数の集団が、この展示室に近づいてきている。黄色い声のする集団。その先にきっと、あのお3人が歩いている。そんな予感がしてならない。
「リゼ、カモミール。逃げましょう」
「そうね、展示したアッサム様とグリーン様が悪いわけですし」
 リゼとカモミールと共に、地味で目立たないのが売りの3人は、そっとそっと足音を殺して、OGのお姉さま方が展示室の入り口に入るのを遠目で確認しながら、こっそり出口を目指すのだった。




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Date:2016/11/19
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