【緋彩の瞳】 恋文 ③

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

恋文 ③

「あら、アッサム」
「………ダージリン。珍しいですね、こんなところで」
「整備科の責任者ですから」
「つまり、気まぐれですか?」
「さぁ、どうかしら?」

 秋が深まり、少し木々も色づいている。祝日の早朝、チャーチルの定期点検に付き合い、整備科と共にチャーチルの走行テストをしていた。1つ1つチェック項目を確認していき、動作に問題がないことを確認する。マチルダⅡは全車がようやく1週間かけて終わったばかり。最後のチャーチルが予定を押して祝日に延びてしまったのだ。整備科たちだけに任せる訳にもいかず、アッサムは整備科と同じツナギに身を包み、点検に付き合っていた。

「お似合いね。私も着替えてこればよかったわ」
「ダージリンには似合わないと思いますが」
「あら、そう?」

 正規メンバーの隊員を点検要員に駆り出すと、負荷テストなどをしづらいと言われ、原則、隊員は定期点検中に戦車に近づくことはしないように、となっている。これは暗黙の了解と言う感じで、それだけ整備科への信頼も厚い。アッサムはずっと、1年生の頃からそのルールを破って参加していた。どうせなら、と、クルセイダーの操縦をしてドリフトを試みたこともある。もちろん、それもテスト項目に入っているからだ。何か悩み事でもあるのか、って整備科の同級生に心配された回数は10を超えていた。


「ダージリンが見守っていると、整備科の仕事がし辛くなります」
「あら、私の目があると悪さができないと?」
「悪いと言うか、負荷試験もありますし」
「そう……まぁ、いいわ。あなたは何時まで付き合うの?」

 早速、整備科たちは手を止めて、みんなその場で直立不動だ。憧れの隊長であるダージリン様なのだ。薄紅に染まった頬は恋の色と呼べる。

「何か、用事でも?」
「いえ……休日ですもの。港についている間に、陸に降りたくて」
「お供ですか」
「まぁ、そうね。デート、ともいうわ」


 アッサムは自分もまさか、同じような頬の色になっていないだろうかと、頬に手を当てた。



 冷たいと感じたのは、オイルの付いた手袋を付けていたことをすっかり忘れていたせいだろう。


「アッサム、ちょっとカッコイイわ。職人みたいよ」
「………顔を洗って、着替えてきます」

 慌てふためいた整備科の子がタオルを差し出してくれたけれど、簡単には落ちることのないものだ。ここにダージリンがいる以上、彼女たちも仕事を続けられない。どうしても、ここにいなければいけない理由はない。ダージリンの誘いなのだ。それを断りたいとも思わない。


「では、駐車場で待っているわ」
「わかりました」
「くれぐれも、他の人を連れてこないように」
「はぁ……何か、陸で買いたいものでも?」
「さぁ?」


 相変わらず、何をお考えなのかわからない笑みをひとつ。傍の整備科の子たちは、思わず手を振っている。いて欲しいような、いてもらっては困るような複雑な笑み。気持ちはわからないでもない。

 今日も、書く話題に事欠かさないだろう。




 DEAR 大好きなあなた

 肩が触れることもなく、同じ方向へ進む。その歩みはいつもと変わりませんでしたね。私はただ、心臓のペースに引き摺られて、早くなりそうになる左右の脚をコントロールすることばかり気に取られていました。途中、立ち寄ったケーキ屋さんで食べたマロンケーキ。そのお店のカードをこっそり持って帰ってきて、今日と言う日を忘れないように、作戦ノートにでも張り付けておこうかと思います。こうやって、毎日、あなたとの思い出を手紙に綴り、そして届けることなく、捨てることもできずに、ただ溜めて行くだけで、零れ落ちそうになる想いを何とかやり過ごそうとするのですが、初めて2人だけで何時間も過ごしてしまって、この身体は、いよいよ、この想いをもう、抱えきれなくなろうとしています。


 あなたが好きだと。



 どうしてこの唇は、そのわずか数秒の痛みに耐える道を選んでくれないのでしょうか。
 また、もう一度、あなたと2人で何時間も過ごしてみたいと願いながら。
 いえ、たとえその願いが叶ったとしても、あなたにはただ、何気ない1日を過ごしただけに過ぎないのでしょう。

 この想いが痛みに代わるのでしょうか。
 この想いがあなたを苦しめるかもしれない。そう思うと。


 いえ、あなたが同じ想いを持ちえないことが、私には………


 好きだという想いで満たされていたはずなのに。

 
 それだけでは満たされなくなる、この我儘な唇。
 
 
 私は、私を、どうしたいのでしょうか。
 





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Date:2016/12/18
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