【緋彩の瞳】 恋文 ⑤

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

恋文 ⑤

 DEAR 大好きなあなた

 今日、あなたにもティーネームが授けられましたね。とてもうれしく思います。同じ名前だったので、互いに気を遣い合い、それでも、名字で呼ぶことが何だか他人行儀な気がして、早くお互いにティーネームがつけばいいと思っていました。アッサムと言う響き、とてもよく似合っていると思います。


アッサム。


 これから毎日、私はあなたのことをそう呼ぶのでしょう。今は同じ車両に乗る夢は叶わないですが、必ず、私はあなたに追いついて、チャーチルの車長として、聖グロの戦車道の隊長として、立派に務めを果たせるよう、毎日必死に訓練を重ねます。

 アッサム、とても可愛らしい響きです。私をダージリンと呼んでくれる声に、やっと私もちゃんと応えることができるのですね。

 アッサム、今日、この素晴らしい始まりを、あなたの傍で迎えることができて、とても幸せです。

 

 大好きなアッサム。
 これから、私が世界中で最も多く、あなたのこのティーネームを呼ぶことができるのですね。

 この喜びを伝えることができれば、どれだけ幸せでしょう。
 届けられない愚かさに嘆きながら、私は私をどうすべきか悩んでいます。

 
 アッサム。
 あなたが好きだと、そのわずか5秒ほどの痛みに耐える強さが私にあれば。




焼却する施設なんて校内にあるはずもなく、唯一火気の使える場所と言えば、紅茶の園のティーラウンジにある暖炉だけだった。
 ダージリンは授業には出ず、一本だけの薪の傍に真っ白い手紙の山を作り、マッチで火をつけた。



 パチパチと音を立てて、恋は黒く焼かれて消えていく。それでも、恋は燃えカスになってでも、ダージリンの心の中にはあり続けてしまうのだ。


 初めて出せない手紙を書いたのは、いつだっただろうか。
 まだ、彼女のことを高山さんと呼んでいた頃だった。


 ずっと、彼女を追いかけていた。中学生の頃から、顔も名前もずっと心に焼き付けて、聖グロに来るに違いないと、どんなことがあっても、彼女と同じ戦車に乗るんだと、その想いだけで聖グロに来た。思えば、本当にひと目で好きになっていたのだろう。中学時代だって、言葉を交わした記憶などない。想像だけで心を満たして、現実を知れば嫌いになってしまうかもしれない、と思いながらも、それでも、隣に座る彼女にのめり込んでいった。

 どうしようもなく、ただ、好きだと言えばいいのに。その二文字が喉を通りそうになく、眠れない深夜、真っ白な便箋に、ラブレターを書いてみた。書いて、次の日になって読み返したりすれば、その恥ずかしさで冷静さを取り戻すかもしれない、と。


 並ぶ好き好きと綴られた言葉。読み返したときの、あの恥ずかしさは今も忘れない。今だってそうだ。想いが昂ると手紙を書き、次の日に読み直し、うんざりしては、段ボールに落としていく。

 らしくない、と自分でも思うほど、アッサムのことを、嵩山保奈美のことを、好きだった。
 腕がいいという評判の通り、すぐさまチャーチルに乗りこんだアッサム。年功序列の壁に邪魔をされて、マチルダⅡに乗っていたダージリン。ずっと、1年生の頃はチャーチルを守ることに全力を注いでいた。それだけが楽しかった。彼女を守る。どんなことをしてでも、守ると。




 あの頃から、ずっと自分に問いかけている。


 私は、私をどうしたいのだろうか。



 ずっと、答えを見つけられず、いや、向き合うことができず、そろそろ3年生の2学期が終わってしまう。
 彼女とこの学生艦で過ごすことができるのは、あと3カ月。


 毎日、繰り返して自分に問うて、そして永遠に見つかりそうにないのなら。


 この自己満足の渡せない手紙を、まず捨て去らなければならない。


 捨てることで、何かを手に入れることができればいいと。


「アッサム」

 ただ、名前を囁くだけでも、こんなにも喉の奥が痛いのだ。
 手紙を差し出す腕は、もげてしまうに違いない。

 だから。そう。そんな言い訳を並べて、文字にした恋を黒く燃やす。

 炎を絶やすことがないように、1つ1つ放り投げて行く真っ白い手紙。読み返してしまえば、いたたまれなくなってしまうだろう。燃やすことで昇華されて行くものでもないが、それでも、燃やさざるを得ないのだ。この箱を抱きしめたまま卒業をしたら、今度は捨てられなくなってしまうに違いない。

 未練だけを置いて飛び立てず、引きずられ、歩くこともままならない未来など、それは欲しい世界の色ではない。



 ぼんやりと、重い感情を捨てるように炎に投げ入れていると、扉の隙間から、真っ白い何かがさしこまれるのが見えた。風の通る隙間。いつも、足元が寒いとみんなで文句を言っていた、あの隙間。


「…………アッサム?」


 この場所にダージリンがいると知っている人物。ここに立ち寄れる人物も限りがある。そして、アッサムだという直感は、間違いではないだろう。

 立ち上がって扉の傍に行くと、隙間から投げられていたのは、白い封筒。




「まさか………」
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Date:2016/12/18
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