【緋彩の瞳】 恋文 END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

恋文 END

『大好きなあなたへ』


 封筒に書かれている自分の書いた文字。開けられた痕がある。


「…………読まれてしまったのかしらね」


 よりによって、それは。嵩森穂菜美と書いてあるから、1年生の頃の、一番舞い上がっている頃に書いた手紙だ。おそらく、手紙の中には今とは違って、アッサムの名前をかなりたくさん書き込まれていて、好きだ好きだと書き踊っているはずだろう。隊長職を任されることになった頃から、辛さが増す思いがして名前そのものを書くことをやめたが、それまではずっと、アッサムの名前や差出人の、自分の名前を書いていた。


 腰が砕けたように、ぺたんとしゃがみ込んでしまう。
 笑って、「読んでしまったのなら忘れてちょうだい」などと言う、そんな余裕の演技ができるほどの正気でいられるだろうか。

 それはもう、無理なのだ。


 あぁ、それでも。
 何かが終わったのだと。
 目じりに感じる雫は、微かに鼻につく煙の匂いのせいだと、心の中で言い訳をした。

 声をあげて泣くという慟哭が襲わないのは、たぶん、事態に対応しきれていないせいだ。
 震える身体は、寒さのせい。
 喉が痛いのは乾燥のせい。
 立っていられないのは、きっと空腹のせい。
 頬を伝う涙は、自らの失態のせい。


「………何」

 中には覚えのない桜色の便箋が見えた。真新しい紙。アッサムから、気持ち悪いなんていうコメントが書かれたものでも入っているのかしら、と。本当にそう思った。





DEAR 大好きなあなた




 私も、ずっとあなたのことが好きでした。


 ずっと、ずっと、今も、あなただけが好きです。
                           嵩山保奈美より




1年生の4月頃に書き殴ったラブレターの返事が、とても綺麗な文字で書かれてある。
 桜色の便箋を抱きしめて、そのまま倒れるように絨毯に寝転がった。


 震える身体はもう、驚きのあまり、自分の意思でどうすることもできずにいて。


「アッサム、アッサム…アッサム…………あなたが好きよ、アッサム」



 ただ、その名前を、この想いを、初めて知った言葉のように何度も声に出すことだけしかできなくて。




「アッサム、……私もあなたが好き。ずっと、好きよ」




 何度でも、零れ落ちる言葉。
 書き殴って、呟くことすらできなかった言葉。
 ずっと、囁きたかった言葉。
 その耳元で、さりげなさを装って、何度も綴ろうとした言葉。




 あなたが好き。






 隙間から小さな音を立てて、風を引きこんだ。開かれる、古い扉。

 足音が近づいて、ピタリと止まる。



「ダージリン。もしまだ、燃やしていないものがあるのなら、すべて私にください。全部に返事を書きますから」


 布が擦れる音。
 髪がサラサラと鳴る音。
 床に身体を寝かせて、ダージリンを包む恋。


 アッサム。


 大好きなあなたへと、その書き出しで、何度手紙を書いたことか。



「………アッサムは、いつもパソコンでしょう?手書きじゃなきゃ嫌だわ」
「パソコンで打って、メールで転送しようと思います」
「それはもっと嫌」
「では、どうしたらいいですか?」
「声に出して、返事を頂戴」



 その髪を掴み、縋りついた。
 嗚咽するダージリンの身体を包む、恋の温かさ。





「私はあなたが大好きです、ダージリン」


「………私も、あなたが大好きよ」






 大好きなあなたへ

 明日も手紙を書いて、隣の部屋へ届けるわ。
 そして、ゆっくりと声に出して、読み上げるの。


 アッサム、あなたが好きだと。
                      



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Date:2016/12/18
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