【緋彩の瞳】 とばっちり! ①

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

とばっちり! ①

「………目が痛い」


 3人部屋にある、3つの目覚まし時計が一斉に鳴った。腕を伸ばす程度では止められない場所に置いてある、高性能の目覚まし時計。止めるには立ち上がり、5歩は歩かないといけない。この方法にしているおかげで、幸い、無遅刻でいられる。



「おはようございます」
「うぃーっす」
「ごきげんようでございました」
「バカローズヒップ。終わってないし、月曜日なんだから始まりだっつーの」

 ほぼ同時に勉強部屋兼リビングに集う、見飽きた顔ぶれ。目覚めはとてもいいくせに、ローズヒップはまだ、名残惜しい日曜日との決別が済んでいないようだ。


「ルクリリ、どうしたんですか、その目?」
「……なんか、痛いんだけど」

 目覚ましの音と同時に襲った、左目のズキズキした痛み。目と言うか、瞼が痛い。擦りたいような、擦りたくないような、経験したことのない痛みだった。


「誰に殴られたんですの?」
 なぜ、寝ている間に殴られなければならないんだ。殴るとしたら、ローズヒップしかいないだろう。そもそも、ローズヒップは先に爆睡していたし、殴られたら流石に気づくだろう。
「聖グロで、殴られるような悪さをした覚えはないわ」
「それじゃぁ、外で悪さをしたみたいに聞こえますけれど」
 ペコは鏡のある洗面台に向かって、ルクリリの背を押した。


「うわ~、腫れてるじゃん。そりゃ、痛いわけだ」
「取りあえず、病院行ってきたらどうですか?」
「うーん。でも、1週間とかで自然治癒するかも知れないし」
「それは、お医者様が判断することです」


 洗面所を使う順番を先に譲ってくれたペコは、さっさと着替えて、とっとと眼科に行ってこいとルクリリを急かしてきた。聖グロの学生艦で生活をして半年。未だ、どこの病院にもかかったことがない。小学生の頃も中学生の頃も、風邪も怪我もしない、健康だけが取り柄みたいなものだった。まさか、幼稚園児の時のおたふく風邪以来の病院が、眼科とは。


「あ~ぁ。まぁいいや。眼帯でも付けて帰って、アッサム様に可愛がってもらおうっと」
「ルクリリ、あざといですわ」


 制服に着替えながら、下着姿でウロウロするローズヒップが鏡にチラチラと映りこんでくる。どうせまた、タイツがないとか言い出すんだろうな。

「タイツが走って逃げましたわ~~」
「昨日、シャツと一緒に丸めて引き出しに入れていたじゃないですか」

 あれほど、畳んで別々の棚に分けて入れろと言ってるのに、洗ったものを全部同じところに突っ込むからそうなるんだ。だったらもう、洗濯籠に入れっぱなしにしておいた方がずっとわかりやすいのに。相変わらず部屋中を朝からドタバタする、いつも通りの1日の始まり。



「あ~ぁ。眼科ってどこだっけかなぁ~」


 ルクリリは三つ編みを作りながら、まだ寝間着のままだった。


「あら、ルクリリが?」
「病院に行ってから、登校するそうです」
「あらまぁ、珍しいこともあるものね」


 朝、ルクリリから電話が入り、瞼が腫れているので病院へ行くと報告が来た。どの程度のものなのかがわからないが、声はハキハキと元気だったので、さほど重病と言うこともないだろう。


「どうしました、ダージリン」
「いえ、秋なのに雪でも降るのかしらって」
 教室の窓から外をわざとらしく眺めながら、ダージリンは露ほどにもルクリリを心配している様子を見せようとしない。彼女なりの、気遣いと思いたいけれど、きっと本当に心配などしていないだろう。それはある意味信頼があるということ。ダージリンは、ルクリリのことを溺愛している。あまり態度に出さないけれど。

「ダージリンもルクリリも、病院と縁がありませんからね」
「あら、健康に気を付けるのも隊長としての務めよ」
「なんとかは風邪を引かないと言うあれですか?」
「あら、それは知らないことわざですわね」
「ダージリンにも、知らないことわざがありますの?」

 別にダージリンが馬鹿とは思っていないが、ウイルスも住み着く身体を選んでいるに違いない。なんていうことを言えば機嫌を損ねてしまうから、とにかく午後の訓練にルクリリは参加させないようにと話を切り上げた。


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Date:2016/12/23
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