【緋彩の瞳】 とばっちり! ②

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

とばっちり! ②

「あら、カッコイイわよ、ルクリリ」
「………えっと、ご迷惑をおかけします」
 真っ赤に腫れた瞼がカッコ悪いから、眼帯を付けさせてくれとお医者さんに頼んだのに。必要ないし、かえって治癒を遅らせるなんて言われて、思い通りにならなかった。目薬をもらい、教室に戻り授業を受け、ランチタイム。いつもの幹部席に向かうと、飛び切りのダージリン様の笑顔があった。何が、カッコイイんだか。まぁ、つまりはお大事にと言う意味なのだろうけれど。

「痛そうね」
「痛いですね」
「何か、悪いことをしたの?」
「私はいつも、良い子です」
「あら、嘘を吐くから罰が当たったのね」

 ダージリン様は余裕の笑みだ。心配なんてされている様子の欠片もない。ルクリリは逃げるようにアッサム様の隣に腰を下ろして、腫れたまぶたをアッサム様に見せつけた。

「アッサム様~~」
「あら、可愛そうに。すぐに治るの?」
「腫れが引くまでは5日くらいかかるらしいです。目薬を1日3回、2種類だそうで」
「そう。擦っちゃだめよ。顔を洗う時も気を付けなさい」
「はいっ」

 頭をヨシヨシと撫でてもらい、ルクリリはどや顔でダージリン様を見返してみたけれど、それがどうしたと言わんばかりにとても余裕で笑っていらっしゃる。後輩の頭を撫でるなんて、アッサム様の日常生活では特別なことではないのだ。舌打ちしそうになるのを飲み込んで、馬鹿にしている様子のペコの脚を蹴飛ばした。


訓練を高みから見物した後、訓練報告書を作成して隊長室に向かうと、アッサム様が1人で、ソファーに座っていらした。キャンディ様にチェックを受けて、誤字脱字を直した書類を提出して、すぐそのお隣に腰を下ろす。特に言葉を発しなかったアッサム様は、ほとんど無意識に、儀式のようにルクリリの頭を撫でてくださった。
「あ、忘れてた。目薬をささないと」
「あなた、痛いって思っているのに忘れるのね」
「いや~、習慣にないことだと、つい」
 病院では、大きなスポイトが真っ直ぐにルクリリの目を突き刺して来ようとするものだから、最大限の声をあげて抗議をしたが、薬は遠慮なく左目に注がれていった。人生で目薬なんてさしたことがなかったから、まさか、病院であんな恐怖を植え付けられるなんて思ってもみなかった。1人で行ってよかった。誰かに見られようものならば、向こう1週間はネタにされていたに違いない。
「決められたとおりに、目薬をさしなさい。早く治したいでしょう?」
「はい」

 ポケットに入れておいた目薬を取り出してみる。

「どうしたの?」
「いえ、こういうのって、どうやって目に入れるものですか?」
「………嘘。わからないの?」
「人生で必要としてこなかったものですし」

 コマーシャルで見てきたでしょう?と呆れた声で言われて、あぁ、さわやかなイケメンが楽しそうな笑みでやっているあれだ、とすぐに理解した。笑いながら、嬉しそうだったけれど。病院でのスポイト攻撃は、あれは悪意さえ感じたが、自分でやると楽しいものなのだろうか。

「どうしたの?」
「えっと……どうすればいいのか、さっぱりです」
「自分の目に薬を入れるだけよ。1滴だけ、ちょっと力を入れたら勝手に入ってくるわよ」
「うぅ……」

 呆れた声で言われるから、小学生でもできることなのだろうなって言うのは理解できる。蓋を開けて握りしめていると、力を入れすぎだと怒られた。目薬に力加減なんて必要なのか。

「う、うぅ…うおりゃ~!」
「……何で掛け声がいるの?」
 3本の指でつまむようにして目薬をコマーシャルっぽくさそうと思ったけれど、あのでかいスポイトの恐怖がよみがえって、身体はソファーの背に打ち付けられた。頬に液体が飛んでくる。

「アッサム様、私には向いてません!!」
「向いているとか向いていないとか、そう言う問題じゃありません」
 コツンと頭を叩かれて、アッサム様はご自身の膝をポンポンと叩いておられる。
「ここに頭を乗せなさい」
「それは、かえって恐怖心を煽る気がします」
「あなたが自分でさせないからでしょう?」
「そんな、垂直に薬を落とすとでも?!」
「それ以外、方法がある?」
 膝枕は大歓迎だけれど、無理やりに目薬をさすだなんて、それはとてもとても嫌だ。ルクリリはちゃっかり膝枕されながら、仰向けになってみたものの、奪われた目薬を、ブロックしようと目を瞑った。
「こら、開けなさい!」
「だって、怖いじゃないですか!」
「あなた、一体何歳なの?」
「培養育ちのたったの16歳です」
「もう、いい歳じゃない。ダージリン様に言いつけますよ?」
「くっ………アッサム様、卑怯です!」

 憐れむように笑うダージリン様の姿が、きつく閉じた瞼の裏に現れてくる。
 渋々と恐る恐る薄く瞼を開いてみた。ぼんやりと現れる、透明の容器。

「うぅ……」
「ほら、もう、ちゃんと開けなさい」
「ご褒美くれないと嫌です!」
「子供じゃないでしょ」
「子供じゃないですけれど、病人です」
「まったく……普段、健康な人が病気になると、こんなにメンドウなのね」

 アッサム様の目薬を持つ手を両手で押さえつけて、ルクリリは、ご褒美くれないと嫌ですともう一度言った。

「じゃぁ、治ったら、ノエルのハンバーガーを奢ってあげるわ」
「安っぽすぎます!」
「あなた、この前、ホワイトローズのモンブランを食べたでしょう?」
「食べ物で釣るなんて、子供じゃないですか」
「今、ダダを捏ねているのは、子供以下でしょう?」

 目薬をさそうとするアッサム様の右手と、ブロックしようとするルクリリの両手。押し合いはいつまでも決着がつきそうにない。

「目薬させたら、アッサム様がほっぺにちゅーしてくださるのなら、我慢します」
「なぜ、そんなサービスをしてあげないとダメなの?」
「サービスじゃなくて、ご褒美です」
「目薬ささないと、治りが遅くなるでしょ?訓練に参加できないままでいいの?」
「それは嫌です」
「だったら、潔くさされてしまいなさい」
「こ、殺す気ですか?!」

 アッサム様はルクリリの脇をくすぐって、一瞬力が抜けたのを狙い、チャンスと言わんばかりに目のすぐ傍に薬を近づけてくるものだから、何のこれしき!と顔を背けた。


「こらっ!手こずらせないで」
「ご褒美に、ほっぺにちゅーしてください!」



 OKが出るまで、ぜったいにアッサム様のお腹に埋めた顔をあげてやらないんだから。
 ルクリリは“仕方がないわね”と言う一言が耳に吹きかけられるのを、じっと待つポーズを取った。


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Date:2016/12/23
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