【緋彩の瞳】 とばっちり! END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

とばっちり! END

「あらあら。まったく、ルクリリは仕方がない子ねぇ」




 10秒くらいしてから、耳に吹きかけられた声は、幻聴でなければならない人物の声だった。全身の血が凍っていくのが手に取るようにわかる。今、顔をあげると、凍死するだろう。


「ダージリン、ノックをして入ってきてください」
「あら、隊長室に隊長である私がノックをする必要はある?」
「それはそうですが。丁度いいですわ、ルクリリが目薬を1人でさせないので、困っていたんです」
「そのようね。廊下まで聞こえていてよ」



 ジーザス!
 神様、助けてください!!!!

「いえ、だ、ダージリン様!それはその、冗談でしてっ」

 殺される。

 本能的に静かで冷たい殺意を感じ取ったルクリリは、とにかく勢いを付けて顔をあげた。見下ろしてくるアッサム様とソファーの後ろから覗き込んでいるダージリン様の、2大スターの共演。麗しい微笑みが並んでいる。


「ひぃ………」
「あら、ダージリンの顔がそんなに怖いの?」
「アッサム、可愛い後輩がこんなに瞼を腫らしているのよ。ここは隊長である私が目薬をさして差し上げましょう。あなたは身体を押さえておきなさい」



 そんなっ!!!


 パクパクと口を動かすけれど、してやったりのアッサム様と、とにかく怖いとしか言いようがないダージリン様の微笑み。


 あぁ、怖い。怖い。なんてひどい仕打ちなんだ。


「キャー!殺される!」
「面白い、ルクリリの弱点を見つけたわ」
「笑っている場合じゃありません。ダージリン、そんな遠い距離から落とさないでください。ルクリリが怖がるじゃないですか」
「あら、せっかくだもの。楽しみましょう」
「わ~~!!目に刺さる!」
「目薬なんだもの、“刺す”のが当たり前でしょう?」
「ダージリン様が暴力振るう!」
「何て失礼な。ちょっと、アッサム。目が閉じないように押さえてなさい」
「はい」



「ぎゃ~~!しみる~~~~!!!!」




「………楽しそうですね」



 暴れに暴れ、死闘を続け、酷い仕打ちを受けた後、直ぐ近くでペコの声が聞こえたような気がした。


「み、見ていたのなら……何で助けないの?」
「いえ、だって3人とも、わりと楽しんでいらしたので」
「冗談じゃない………」


 頭上から、はぁはぁと疲れたため息が振ってくる。目薬の攻防は、2対1で負けた。本当にもう、目薬が怖いのか、ダージリン様が怖いのか、途中からわからなくなって、染みるのは痛かったけれど、精神のダメージの方が半端なかった。


「ルクリリ、いつまでアッサムの膝枕でいるおつもり?」
「………アッサム様、目薬さしたんだから、ご褒美のほっぺにちゅーをください」
「ノエルのハンバーガーで手を打ちなさい」
「ほら、ルクリリ。もう離れて」
 アッサム様はルクリリを起こそうとするけれど、もうぐったりして起き上がりたくもないし、ダージリン様の気配は、まだまだ殺意が篭っておられるし。
「酷いです。お2人でよってたかって、1年生を虐めて」

 涙なのか、失敗して飛び散った目薬なのか、よくわからない水分が顔にいっぱいついている。

 きっと涙だ。涙と言うことにしておこう。

「ルクリリ、いい加減起きたらどうですか?そろそろ、ローズヒップが来る頃なので、事態がとてもややこしいことになりますよ」
「あぁ、それはとてもメンドウだわ。ルクリリ、ダージリン様にほっぺにちゅーされたくなかったら、起きなさい」
 でこピンされて、流石にそれはもう、別の意味で起き上がれなくなってしまいそうなことを言われて、渋々と腰に力を入れた。

「…………はぁい」
「あら、ルクリリ。私からのキスが欲しいの?」

 霞んで見える、ダージリン様の腹立たしいくらいの美しい微笑み。
 ルクリリは手の甲で頬の水分を擦って、ブンブンと首を振った。

「どうして目薬ごときで、こんなひどい目に合わなきゃいけないんですか?」
「…………それは、あなたが自分でさせないからでしょう?」
「ルクリリにも、苦手なものがあるなんてね。たかが、目薬ごときで」


 ダージリン様は、ペコにお茶を淹れてとお願いをして、乱れたセーターの形を整えながら、隊長席にぐったりと腰を落とされた。暴れまくった自覚はあるが、暴れさせたのはお2人だ。アッサム様も髪を手櫛で整えていらっしゃる。

 あぁ、すっかり治った頃にお仕置きされそう。

 でも、恐怖心を煽ったのはお2人だし。


「もぅ、治りが遅くても、目薬なんて嫌です」
「寝る前には、ペコにでもやってもらいなさい。それが嫌なら、自分で何とかすることね」
「……うぅ、鬼。ほっぺにちゅーもしてくださらないし、2人揃って押さえつけてくるし、もう、今日は踏んだり蹴ったりですよ」
「はいはい、子供じゃないんだから」


 暴れてぐちゃぐちゃになった三つ編みが解かれてしまっていたのを、アッサム様が手際よく編み直してくださったので、ちょっと拗ねた気分は持ちこたえた。


「アッサム」
「何でしょう?」
「………いい加減、あなたも甘やかせるのはおやめなさい」


 ペコがお茶を配りながら、まぁまぁって宥めている。アッサム様のメンドクサイと言いたげなため息が、ルクリリの三つ編みの毛先を揺らした。でも、今日のルクリリは被害者なのに。


「アッサム様~~~~ダージリン様~~~~!!!参上ですわ~~~!」 


 いよいよ、メンドウなのが入ってきた。体力を使いきったアッサム様もダージリン様も、ついでにルクリリも、もう、やかましいローズヒップの相手をする元気はない。


「ごきげんようですわ!!あら?みなさん、どうされましたの?」
「………あなた、廊下を全速力で来たの?」
「もっちろんですわ。アッサム様にいち早くお会いしたくて、超特急でしたわ!!!」
「………そう。体力を残しておきなさい。夜、ルクリリの目薬は、あなたがさすように」
「めぐすり?何のことですの??」



 …………勘弁して欲しい。



 どんなことがあっても、絶対に、目薬を1人でさせるようにしないと。
 後で、ネットで上手に目薬をさす方法を検索しないと。



「ローズヒップ、あなたの親友のルクリリのため、隊長命令よ。彼女を助けてあげなさい」
「よくわかりませんが、はいですわ!」

 すました顔で紅茶を飲まれるダージリン様。

 この、瞼の腫れが移ってしまえばいいのに。
 心の中で思いながら、小さな呪いをかけた。
 
 隣のアッサム様のやれやれなため息。





 完治したら、どんなお仕置きが待っているのだろうか。




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Date:2016/12/23
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