【緋彩の瞳】 リリーが愛する人 ②

緋彩の瞳

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ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

リリーが愛する人 ②

「……………ルクリリお姉さまが怒るわね」
「本当に学生艦に乗り込んでも、私は止められないわよ」


 聖グロの、1年生になったばかりの子が、陸地で行方不明になったと連絡を受けて、鉄道各社の駅に保護の依頼をするようにとグリーンに指示しながら、愛菜はげんなりとため息を吐いた。どうして今年の幹事があの人なのだろう。票を投じたのは、やりたくない麗奈やアッサムお姉さま。チャーチル会から幹事を選ぶと言う習慣もいい加減、やめてもらいたいものだ。当然歴代の隊長がなるのが自然な流れになるし、そうなると、おおよそまともな人というのは限られてくる。連続は2期までなので、残り物から選ばざるを得ないとなると、選ぶ余地がほとんどない。麗奈はアッサムお姉さまとタッグを組んで、いろんな人間を説得して、リリーに投票したそうだ。


「麗奈、たまには役に立ちなさいよ」
「ルクリリお姉さまの幉を引いているのは、愛菜でしょう?」
「私じゃないわよ。アッサムお姉さまよ」

 とはいえ、アッサムお姉さまはとても潔癖で生真面目すぎるほど生真面目なお方。リリーと真反対だったので、高校の頃から仲がいいとは言い難いのだ。割と、鼻つまみ者みたいにリリーを扱っておられた。何度か、本当に除菌スプレーをリリーに掛けていたのを目撃したことがある。正常の行為かも知れないが、群を抜いて人気の高かったリリーを隊長にせざるを得なかったのは、不幸なことだといえる。


「あのお方、今、ロンドンよ」
「……そうだったわ」


 アッサムもダージリンも、後輩への罰は与えないでくれと言わんばかりに、1年生たちの前に立ちはだかっているものだから。それはそれで、立派になったものだとホッとするが、OG会はOG会で、今回のことを無視はしないだろう。聖グロの戦車道の名を傷つけ、横浜の鉄道会社や、輸入船の入港を遅らせたことも合わせて、聖グロの学生艦としてのペナルティが教育委員会から課せられる可能性もある。となれば、自分たちの経歴に傷がついたと言って、OG会も怒るだろう。私立校でもある聖グロは、卒業生からの膨大な寄付があるから、見栄を張って優雅に微笑んでいられるのだ。聖グロ出身と言うのは、それだけで箔が付くから、代々皆、名を汚す行動は出来ずにいた。もちろん、後輩たちはこれから通る道なのだから、失態を犯すことができない。お金も出すし口も出す。それが聖グロのOGだ。一番やかましいのが戦車道のOG。

「…………さっきから、ずっと携帯電話が鳴りっぱなしなのよ」

 慌てて電車で横浜へと戻る後輩たちを見送った後、ずっとポケットで鳴り続ける携帯電話を取り出した。見たくもない「ルクリリお姉さま」という名前。

「あらやだ、ルクリリお姉さまじゃない?」
「………聖那、あなた電話に出て」
「嫌」
「クルセイダーの子でしょう?」

 耳を塞いで逃げた聖那に、腕を組んだまま動く気のない麗奈。上も下も、みんな愛菜を困らせる。本当に、このやりきれない思いをどこで解消しろと言うんだろう。


「………ルクリリお姉さま」
『愛菜、女の子たちが私の携帯を鳴らしまくりだわ。今日の私ってモテキ?』
「………そうですわね」
『戦車道のお姉さま方がうるさいんだけど、キスして黙らせる方法がいいかしら?それとも抱いておく?』
「………そうですわね」
『何事なの?問題を起こした子は何人?』
「さぁ、5人くらいでしょうか」
『全員、裸にリボンを付けて私の前に連れてきなさい』

 この人、怒っているのか楽しんでいるのか、OG会の仕事をする気があるのか。みすみすダージリンを差し出すわけにはいかないだろう。本当に、キスくらいしそうだし。そうなれば、アッサムは殴りかかるかもしれない。アッサムを怒らせたら、麗奈も困り果てるだろう。

「もう、迷子は今、学生艦に向かっておりますわ。ダージリンからも関係各所に謝罪をいれさせますし、お姉さまは輸入船の御会社に謝罪に出向いてくださいませんこと?」
『ご褒美は何をもらえるの?』
「ご冗談を。ルクリリお姉さまのお仕事です。問題が起こった時に対処するのが幹事ですわ」
『幹事になったら、可愛い子からモテまくりって言っていたのに、学生艦に乗せてくれない上に、謝るのが仕事?話が違うわ』
 誰から聞いた話なのだろうか。ちらりと麗奈を見て見る。相変わらず視線を合わせようとしない。どうせ、アッサムお姉さまや麗奈にうまいこと言われたに違いない。リリーは自分から面倒事を引き受ける性格ではないが、辞退もしなかった裏には、甘い汁を吸えると騙す悪い奴らがいたと言うことだ。麗奈はさっさと聖那と電車に乗ろうとしている。自分たちの可愛い後輩が、リリーに何をされてもいいとでも言うのだろうか。


「5つも下の子に手を出したら、犯罪ですわよ?」
『あら、合意があれば問題ないわ』
 合意してくれる相手だと思っているあたり、幸せな脳みそでいらっしゃる。
「軽口は結構ですわ。とにかく、御会社に出向いてくださいませ。私たちは鉄道会社に謝罪に向かいます」
『向かっている間に、状況の簡単な説明をメールに入れておいて。意味も分からず謝罪するこっちの身にもなりなさい』
「わかっておりますわ」

 どうせ、お姉さまは暇な時間をどこぞの女の子と遊んでおられたに違いない。邪魔をされて不機嫌なだけだ。謝罪に行かなければいかないで、もっと上のお姉さまたちがリリーの携帯電話を鳴らすのだ。年上のお姉さまには手を出さない、むしろ苦手なリリーは、謝罪に出向く以外、道はない。


「愛菜、ルクリリお姉さまは?」
「謝罪に出向いてくれるみたい」
「そう。私たちは取りあえず回れるだけ、各駅に行きましょうか」
「………仕方ないわね」

 3人でバラバラになり、取りあえず協力を依頼した駅の1つ1つに出向いた。その合間を縫って、リリーの携帯に迷子事件の簡単な経緯を報告する。絵文字で怒っているものが送られてきたけれど、ちゃんとスーツに着替え直して、東京にある輸入船の会社に出向いてくれるそうだ。後が怖い。


謝罪行脚が終わった頃、おそらく学生艦内の謝罪行脚が終わった様子のダージリンから、疲れ切った声の電話がかかってきた。
『本当に、ご迷惑をおかけしました』
「まったくだわ」
『……OG会のお姉さま方は?』
「まだ、話しをしていないわ。幹事は何とか説得しておくわ。資金が止められることはないと思う。試合に出てもらわないとそれはそれでOGとして困るもの。だから、ちゃんと結果を出しなさい」
『もちろんですわ』
「アッサムは?」
『部屋で休ませています。ローズヒップを溺愛しているものですから、かなり気が動転していたみたいですわ』
 本気で後輩の頬を叩く、あのアッサムの姿。心配で心配で仕方なかったのだろう。無事に学生艦に戻れて、ホッとして気が抜けてしまったに違いない。
「可愛そうに。アッサムも気苦労の絶えない子ね」
『改めて、お姉さま方にも謝りに行きますわ』
「そうね。麗奈もアッサムのことが心配みたいだから、また戻ってきたときに会いに行くわね」
『幹事のお姉さまにも、直接謝罪をしないといけません』
「あぁ……えっと、そうね」
『取り急ぎ、メールで報告をさせていただきますが、報告書を作成して、準備が整い次第、横浜に謝罪に戻ります』
「………わかったわ。幹事のお姉さまには私から伝えておくわ」
『お願いいたします』 
 しなくていい、とは言い切れずに、愛菜は電話を切った。麗奈はアッサムに電話をしても出ないと言っていたが、ダージリンの言い方だと、多分、寝込んでしまっているのだろう。

「どうする?ダージリンはルクリリお姉さまに謝りたいそうよ」
「当たり前のことよ。土下座じゃない?」
 麗奈は自分には関係ないと言わんばかりだが、ダージリンはおそらくアッサムを連れてくるだろう。ダージリンもヘタレなところがあるし、アッサムはダージリンを1人で行かせないだろうし。そうなれば、アッサムを守るには、麗奈もその場に行く必要がある。クルセイダー部隊の失態なのだから、クルセイダー会のOGである聖那だって無視はできないはずだ。

「………仕方ないわ。覚悟を決めて、ルクリリお姉さまとダージリンたちを会わせましょう」
「ダージリンの初めてが、アッサムじゃないなんてかわいそう」
「聖那、………笑えない」
 麗奈が腕を組んで、割と本気な声で呟く。愛菜もそんなまさか、って言ってあげたいところだけれど、それは本当に、リリーの激怒の具合に寄るだろうし、ダージリン、あるいはアッサムがリリーの好みかどうかにもよる、としか言いようがなかった。
「そうなったら全力で止めてね、愛菜」
「出来る限りは頑張るけれど、無理そうなら、聖那が犠牲になったら?」
「嫌よ」
「元は、クルセイダー部隊の子の失態なんだから」
「私、麗奈以外の女とは寝ないし、他の女と遊ぶ人って嫌なの」

 愛菜は別に、それを許しているわけでもない。というか、そういう問題じゃない。
 もう、色々と突っ込みたいところだけれど、この後、部屋に帰ってからリリーの相手をしなければならないのだ。体力を残しておきたい。


「似合う?」
「…………えぇ、まぁ」
 大学指定のスーツを着たリリーは、愛菜よりも遅くに帰ってきた。22時を回っているのだ、きっと、あちらで謝罪ついでに食事でも行って来たのだろう。若い大学生が謝りに来て、会社のおじさんたちも気を悪くはしないだろうし。
「父親よりも年上のおじさまたちと飲んでも、全然美味しくないわね」
「お疲れ様です」
「疲れたわ。どうせなら、女子校の学生艦の遅延だったらよかったのに。ヘリを飛ばして謝りに行ってあげたわ」
 お酒の匂いをスーツに付けたままだ。ジャケットを脱いで愛菜に放り投げてくるのを受け取り、そのままスカートも蹴散らしたから、拾い上げた。パンストもガードルも、脱いだまま廊下に放置。摘まんでネットに入れて洗濯籠に放り込んだ。
「愛菜、煙草をどこに隠したの?」
「キッチンの引き出しです」
「キッチンに入るなって言うくせに、そんなところに入れて」
「はいはい」

 愛菜はシャツとズボンを渡し、窓を開けてから、灰皿と煙草をテーブルに置いた。20歳の誕生日にがぶがぶとお酒を飲み始め、ヘビーではないが、煙草を吸われている。曰く、女と酒と煙草はセット物、だそう。愛菜の賃貸マンションなのだから、吸わないでくれと言うことは伝えてあるが、何かしら、不機嫌を背負ってきたときは、こうやって吸うことを許可してしまう。灰皿も愛菜が買った。

「入港の遅延では、特に損害請求するつもりはないそうよ」
「そうですか」
「世界的にも名のある会社だもの。学生艦相手に、そんなことは出来ないでしょうね」
 謝罪に来たのがOGの大学生で、しかも、見た目だけだとモデルと言われても納得の美人なのだから、相手も鼻の下をのばして、許さざるを得なかっただろう。
「1本だけにしてくださいね」
 高そうなライターで火を付けて、勢いよく白い煙が吐き出される。愛菜はグラスにミネラルウオーターを入れて、テーブルに置いた。
「可愛い後輩ちゃんたちに、どんなお詫びをしてもらおうかしらね」
「軽口叩いてないで、幹事らしくしてください」
「可愛い子にしおらしく謝られると、強く言えないわよね」
「………役立たず」
「スーツ着て謝りに行ったのよ?役に立ってきたじゃない」
 幹事なんだから、当たり前。とは言わなかった。はいはいって、流しておいた方がいい。





「………リリー」





 煙草を3口だけ吸ってもみ消したリリーの白いシャツ。愛菜は腕にしがみ付いて顔をその肩に押し当てた。

「あら、珍しい」
「ダージリンもアッサムも、本当によくできた後輩ですから、あの子たちには手を出さないでください」
「しおらしい声をして甘えてきたと思えば。言いたいことはそれなの?」

 愛菜の知らない女を、リリーが抱くのはリリーの自由だ。リリーの両手を縛る価値を、自分に見いだせない。だけど、聖グロの後輩はやめて欲しい。聖グロの子だけは、絶対に手を出さないで欲しい。それだけが愛菜の願いだ。

「本当に、あの子たちは私の大切な、可愛がってきた後輩ですの」
「私に謝罪に行かせるくらい、大事にしているみたいね」
「えぇ」
「愛菜が高3の時は、全然、会いに来てくれなかったわね。あの頃はおかげで、モテまくりだった」
 学生艦にいた愛菜と、東京の大学に通うリリーとでは、本当に会う回数は少なかった。あの頃、それはそれで、適当な遊び相手が沢山いたに違いないし、愛菜は愛菜でダージリンたちの面倒を見ることで忙しかった。あの時、自然消滅してもいいかなと思っていたが、リリーは待っていてくれたのだ。同じ大学に入ることを知った時、とてもうれしそうに電話をくれたから、温度差が申し訳ないと感じたのを覚えている。
「今もでしょう?」
「言い寄ってくる可愛い子は、お断りしないだけよ」
 煙草の匂いの残る左手で愛菜を抱き寄せたリリー。その膝の上に乗り、食事を取り忘れて疲れた身体を押し付けた。背中を抱く手は当たり前のようにシャツの中に侵入してきて、当然の様にブラのホックを外してくる。

「リリーに言い寄ってくる可愛い子は、一体何を目的に?」
「抱いてもらいたいんじゃないの?彼氏がいる子なんかもいるし」
「………指輪、はめたままなのでしょう?」
「そうよ。愛しい恋人がいるって言うと、7割くらいの子は何もせずに勝手にいなくなるかしら。2割は奪ってやるなんて言うのよね。だから残り1割を抱くわけよ」
 
リリーは自称「自分からナンパをしない」し「自分からはベッドに誘うこともない」。それを信じるとか信じないとか、そう言うことで悩むのは、もう随分昔にやめたこと。放っておけばいい。リリーのすべてを欲しいなんて思わないのだから。第一、恋人になってくれと愛菜がお願いしたことは一度もないのだ。勝手に恋人気取りをして、勝手に愛菜にまとわりつくようになったのはリリーの方。

本当は、愛菜が知らないだけで、女が何人もいて、愛菜はそのローテーションの中の1人かもしれない。そんなことを、1人の夜にふと思うことがある。


「………リリーは、聖那と麗奈のことはどれくらいご存じですの?」
「あの2人?目が好き好きっていうビームを出しているわ」
「えぇ、まぁ」
「相当前から、色々あるでしょう?聖那が麗奈にほれ込んでいるみたいだし」
「えぇ。本当、あそこはとても一途ですわ」
「そう」
「後輩たちも、それぞれ想い人がちゃんといて、純愛を貫いていますの」
「そうなの………まるで私たちみたいね」
 煙草の匂いを付けた手で、愛菜の乳房を包み込みながら、相変わらず調子の良いことを言うんだから。
「リリーだけが小汚いです」
「小汚いって、いい方酷いわね」
「失礼。とっても、汚らわしいで……」

 口紅が薄くなった唇が、同じように口紅が取れてしまっている愛菜の唇を覆う。煙草の残り香に、眉をひそめて。だけど、押し返せずに受け止めた。

「で?その汚らわしい人としか、キスしないのは誰?」
「………私が、リリーだけとしかキスしたことがないとでも?」
「愛菜がそう言う性格だと言うことは、重々承知しているもの。じゃなきゃ、本気で口説き落としたりしないわよ。もう5年の付き合いよ?」

 自分にとって都合がいい女が欲しいのならば、リリーは特定の誰か1人を傍に置いたりしないだろう。高校の2年間は、ほとんど毎日のように、愛菜の部屋に突撃してきては、歯の浮くセリフで口説き、ご飯を作らせて、一晩中手を握られていた。可愛い子は聖グロにも沢山いて、告白も頻繁に受けている割には、リリーは気持ち悪いくらい、毎日愛菜の部屋にやって来て、好き好きと言って来ていた。お互いに、誰にも言わないという約束の元、気が付いたら、リリーといて5年になる。

 愛菜はリリーしか知らない。リリーに教えられた通りのセックスしか知らないし、リリーの唇以外と触れ合いたい欲はない。女が好き、とか、男が好きとか、多分そう言う感情を抱こうと思えないのは、リリーが傍にいるせいだ。

 必ず、愛菜の元に帰ってきてしまうから。

 リリーが初めてじゃなければ、もっと普通の感覚でごく普通の恋愛ができたのかも知れない。そんなことを想っても、もう遅いのだ。好きと言われ、押し付けられ、受け入れるよりも早く、リリーの素性なんてわかっていた。

「…………リリー、お風呂に入って、煙草の匂いを洗い流してきてください」
「その後、ベッドで遊ぶ?」
「そうですね」

 胸の谷間に顔を埋めて、愛菜の服に押し付ける煙草の匂い。両手で拳を作り、そのこめかみを抑え込んだ。





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Date:2017/01/05
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