【緋彩の瞳】 甘い誘い ②

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

甘い誘い ②

「………あれで15歳以上って、ローズヒップたちでも観てもいいということでしょう?」
「想像したくないですが、観てもいい年齢ではありますね」
「信じられないわ」
「アッサム様、食い入るように観ていたじゃないですか」
 手で目を覆うことなく、ラブシーンもしっかり観たのはアッサムだけではないはずだ。グリーンに突っ込まれても何も言い返さず、観た後に買ったパンフレットを鞄に仕舞った。後で部屋に戻ってゆっくり読み返すことにしよう。
エンディングが終わってから、感動の涙で1分ほど動けなかったが、感動もしたが、ドキドキもしたし、ハラハラもしたし、これは観ても大丈夫なのかしら、なんて自問したりもした。とにかく、人生の中であそこまで濃厚なラブシーンを見たのは初めてだった。

「ランチ、どこに行きます?」
 シナモンとグリーン、3人で縦に並んでエスカレーターに乗ると、下りながら、いろんなお店がランチタイムの客引きをし始めているのが見えた。いろんな意味でいっぱいいっぱいだったから、お腹が空いている自覚はなかったが、もうそう言う時間だ。
「トリオたちが行動している範囲外がいいわね」
 携帯でダージリンのGPSを追いかけると、同じ建物の中にいるようだった。となれば、そこそこ高いお店を選んでくるだろう。ダージリンにおごらせるつもりのルクリリならば、コースものがあるお店を選ぶに違いない。アッサムはカフェを選んで、ランチセットでも食べようと提案し、レストランフロアから抜ける道を選んだ。あの子たちはちゃんと、ダージリンの世話をしているだろうか。


「あなたたち、買って欲しい仮面はあって?」
「………いや、ありませんけれど」
「変身できない仮面なんて、飾っても埃がたまるだけですわ」
「ローズヒップは、この羽が付いた派手な仮面を付けて、何と戦いたいんだ?」
 一通り、ヴェニスの仮面の展示を眺めた後、いかにも観光客向けっぽい仮面の売り場で3人に確認し、残念ながら拒絶をされてしまった。冗談でもいいから、買って顔に付けて歩いてくれたら、どこの生徒だろうかと話題になっただろうに。アッサムにお土産と買って帰っても、とても冷たい眼差しを浴びせられるのが目に見えてわかる。
「さてと、ランチでも行きましょうか?私に付き合わせたので、次はあなたたちのお好きなところに行くわ」
「本当ですか?じゃぁ、めっちゃ高いお店行きましょう」
 本当につまらなさそうに、それでもダージリンの傍でまるで隊列を組むように3人は付いて回って来ていた。勝手にどこかに行ってくれてもよかったけれど、おそらくそうすると美味しいランチを逃すかもしれない、とでも考えていたのだろう。じっと耐えるのは戦車道の訓練で馴れているのだ。どちらかと言えば、仮面ではなくダージリンに注目していたようだし。
「よろしいわ。好きなだけ食べなさい」
「流石です。もう、ばっちり予約済みです!」
 車の中でコソコソと携帯をいじっていたのは、お店の予約だったのだろう。アッサムがそう言うことをよくやっているのを見たことがある。急に足取りが軽くなったルクリリに案内され、エスカレーターを昇った。


 大きなショッピングモールのショップの並ぶ対面の向こう側。アッサムが見えたのは見間違いかしら。



カフェでランチを取った後、2時間くらいそのお店でずっと座っておしゃべりをしていた。ネタはもっぱら、1年生たちとダージリンのこと。そして、来年、聖グロはどんな風になるのだろうという想像。映画を観た後だと言うのに、映画についての感想を避けたのは、多分、何を言えばいいのかわからないからだろう。映画好きで、邦画洋画を問わずにいろんなジャンルの映画を観るグリーンなら、あの程度のラブシーンはきつくないのかも知れないが、感動したはずなのに、印象に残っているのは、ラブシーンばかりなので、何を語り合えばいいのか、言葉が浮かばない。特に、一緒に泡にまみれたバスタブで愛を語り合う所は良かった。

 何というか、羨ましいなと思ってしまった。

「アッサム様?」
「………え?何?」
「どうしました?ぼんやりして」
「していた?」
「していました。ダージリン様のことを考えているような顔でした」

 グリーンのこれは冗談なのだろうけれど、それに反応してしまってムッとすると図星と言うことになってしまう。でももう、ムッとした後。

「ちょっと、グリーン。思っても声に出さないで」
「シナモンはどこにいても、誰といても気を使うわね。ご苦労様」
 シナモンは苦言を呈しながらも目は笑っている。2人揃って弄ってくるなんて酷い。氷の入った水を飲んで誤魔化すものなら、ほらねって言われるのはわかる。だから、きつくグリーンを睨み付けた。

「グリーン」
「………はい、笑っていません」
「そう?」
「はい」
「じゃぁいいわ」

 自分のティポッドが空になってしまったので、残っているシナモンのものを分けてもらい、のどを潤した。ジワリと広がったのはダージリンの香り。

「………歴代、隊長より副隊長の方が怖いというのは、聖グロの伝統ですよね」
「どちらかと言えば、歴代の隊長が変わりものばかりなのよ」
「それは確かに」

 グリーンの呟きに、すぐさま反応したアッサムは、唇を尖らせる彼女に向けてニッコリと微笑む。シナモンはいつも通りに、まぁまぁと笑いながらせっかくだから買い物に行こうと、フロアガイドを広げて空気を適当にかき混ぜた。

「そう言えば、この建物の中に、手作り石鹸のお店がありませんでしたっけ?」
「あぁ、バニラたちが話していたお店ね」

 アッサムの手に収まらずにグリーンが奪ったフロアガイド。何か、行きたいお店があるらしく、目が左右を往復している。

「手作り石鹸?」

「えぇ。凄くいい匂いがして、お肌もすべすべになるらしいですよ。バニラがお姉さまから貰ったものだそうですが、おススメだって話してくれて。そのお店が東京に1店舗と、横浜にもできたそうです。記憶では、このショッピングモールだったと思います」
 グリーンはその石鹸でお肌をすべすべにして、どうしたいのだろうか。そんな疑問が湧いたけれど、それを聞いたら、質問に質問で返してきてアッサムがムッとするという事態を呼ぶ気がしたので、黙っておいた。シナモンもわりと乗り気な様子なので、興味があるのだろう。いい匂いと言うのがどういうものなのか、アッサムも気になる。

 と言うか、石鹸と言われると、どうしてもさっきの映画の……一緒にお風呂に入るあたりのシーンを思い出してしまうのは、アッサムだけだろうか。きっと、変な意識をし過ぎているのだ。

 そう言えば、あんな風にお風呂に2人で入ったことはない。
 そもそも、キスだって許していない。


「アッサム様、行ってみます?」
「そ、そうね。バニラがおススメというのなら」

 飲み干してしまったダージリンティ。一口残しておけばよかったけれど、空のカップを傾けてしまったのだ。飲んでいるフリをして喉を鳴らして見せておいた。


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Date:2017/01/25
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