【緋彩の瞳】 甘い誘い ③

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

甘い誘い ③

ルクリリに案内された1人10,000円のランチの後、ローズヒップが選んだパンケーキ専門店と、もうお腹一杯に満たされて、出来れば学生艦に戻りたいと言う気持ちはあったけれど、ペコが行きたいと言う場所に連れて行ってあげていないことに気づいた。
「ペコ、あなたはどこか行きたいところはあって?」
「えっと、あの、手作り石鹸のお店に」
「石鹸?」
「確か、この辺りにお店があったと思います。凄くいい匂いで、お肌にも優しいっていう」
 鞄からフロアガイドを取り出したペコは、携帯電話にメモを残していたお店の名前を探すように指を動かしている。きっと、最初から行くつもりでいたのだろう。
「そうなの。では、行きましょうか」
「え?いいんですか?」
「もちろんよ」
 素直に喜びを表現して、晴れやかな笑顔になるものだから。本当に愛らしくてついつい頭を撫でてしまう。この素直さと従順さは聖グロの宝だろう。ルクリリとローズヒップも素直ではあるが、何かこう、違うのだ。

「役得だよなぁ、ペコは」
「胡散臭い演技ですわ」

 ちゃっかり高いランチを予約していたルクリリと、お茶と言っているのにパンケーキのお店に引っ張り込んだローズヒップは、頬を膨らませている。ちゃっかり具合で言えば、3人とも甲乙つけがたいが、愛らしさで言えば、ペコにはかなわないだろう。そう言う贔屓目を持ってあげないと、この2人とセットにされているペコの不運も報われないのだから。


「あら、ルクリリも愛らしくニコニコしていれば、頭を撫でて差し上げるわよ」
「……いや、怖いので遠慮します」
「そう?残念だわ」
 ちらりとローズヒップに目を向けると、ペコとは違った満面の笑み。
「どうぞですわ!」
「何も言っていないわよ、ローズヒップ」
 ごめんなさい、と言ったポーズで頭を下げてくれるけれど、その頭を“馬鹿”と言ってルクリリが素晴らしく軽快な音を出して叩いた。


「あら、本当だわ。とてもいい匂い」
「思った以上にいい匂いですね」
 華やかな香りに包まれた店内には、キャンディたち2年生の姿があった。やはり噂になっていたらしく、買いに来たそうだ。アッサムはいろんな種類の石鹸のサンプルを手に取りながら、気分はもうすっかりバスタブに浸かっているようになっていた。お店の中央に実際にどんな匂いがするのか、体験できる場所があり、みんなで輪になって腕まで石鹸を付けてみた。それぞれの手を鼻に近づけて、みんなでいい匂いと何度も何度もいいあう。あの色の石鹸も、この色の石鹸も。次々に手に取って、聖グロの生徒たちがレジにずらりと列を作っていく。みんな、きっと明日は報告会になるはずだ。すべすべになった腕を摩り合ったりするのだろう。

「アッサム様、結構沢山買いましたね」
「えぇ、お土産に」
「ほぅ、なるほど」
「整備科のチャーチル担当の子たちによ?」
「誰に、なんて聞いていませんけど……」

 チャーチル担当の子よりも多い個数を紙袋に入れてもらいながら、グリーンのニヤニヤしているであろう顔に背を向けたまま。別に、ダージリンに買ってあげるのは、何の問題もないわけで、部屋は隣だし、同じチャーチルだし。

「………私、服を見て回ってくるわ」
「では、駐車場で集合と言うことにしましょう」

 1つ90グラム程の石鹸は10個を超えていて、いろんな匂いを確認して、結局どれも気に入ってしまい、1つに選べなかった。チャーチル担当の子たちに配ることも本当のことだけど、5つほどは自分のものだ。アッサムは重たい紙袋を手にしたまま、逃げるようにシナモンたちと離れた。

「あら、とってもいい匂いね」
「本当ですね。あ、これもいい匂いです」
 連れていかれた手作り石鹸のお店は、若い女の子たちでにぎわっていた。ペコは一つ一つを手に取って、ダージリンに向けてくる。あれもこれもどれも、みんな柔らかく鼻をくすぐって、香水とは違う心地のいい匂いだ。お店の中央では、ローズヒップとルクリリが手を洗っていた。
「何をしているの?」
「ダージリン様、この石鹸もいい匂いです」
「あら、実際に使えるのね」
 モコモコとした泡がダージリンの両手を包むように襲って来た。くすぐるように胸に届くいい匂い。この石鹸と同じものをアッサムに買って帰らないと。
「石鹸、楽しいですわ」
「どれほど洗っても、ローズヒップはローズヒップのままだなぁ。上品な香りを身にまとっても、中身がなぁ」
「ルクリリに言われたくありませんわ」
「安心なさい、50歩100歩よ」
 ペコが気を利かせてハンカチを渡してくれたので、それを受け取って、好きなものを買ってあげると伝えた。キラキラした瞳が見上げてきて、すでに目を付けていたらしいものがダージリンの前に差し出される。それを受け取り、ダージリンもまた、アッサムへのものと、自分のもの、別のものを追加してレジに向かう。

「50歩と100歩なら、2倍の差ですわ!」
「私が100歩と言うことじゃない?」
「何ですの?昨日、始末書の刑を食らったくせに」
「ローズヒップもだろう」
 
 いつまで、手を洗っているつもりなのかしら。張り合いながらおでこをこすり合わせるものだから、仲がいいにも程がある。幸い聖グロの制服を着てもいないのだ、少し放っておけばいい。止めるつもりはないし、止めるべき突っ込み役のペコはもう、2人をいないものとしているようだ。

「ペコ、とてもいいお買い物だったわ。あなたはもう満足できた?」
「はい」
「よろしいわ。このお馬鹿たちは放置しておきましょう。行くわよ」
「はい」

 3人とも、一応は目的を達成したみたいなので、お守りもこの辺でいいだろう。アッサム程のサービス過剰はする必要もない。アッサムへのお土産を手に、ペコと一足先にお店を後にした。



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Date:2017/01/25
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