【緋彩の瞳】 ラブレター?!怪事件 ③

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

ラブレター?!怪事件 ③

「な、何で笑うんですか、ダージリン様!」
「いえ、別に笑ってないわよ。どちらの練習試合もカッコよかったわよ、ルクリリ」
「馬鹿にして笑ってるじゃないですか!」
「そんなことないわよ、ねぇ、アッサム?」
 共犯者を増やしたいと思っているのだろうか。アッサムには微笑ましいくらいの感情しかなかったのに、そんな馬鹿にしたような笑いはちょっとかわいそうな気もする。これだから、ダージリンは。
「………ルクリリをカッコいいなんて言うのなら、そもそもうちの生徒からの手紙かどうか、検討した方がよろしいんじゃ」
「アッサム様まで!」
「酷いことを言うわね、アッサム」
「笑う方がよっぽどですけれど、ダージリン」
 シナモンにまぁまぁと止められて、アッサムはムキになる前にため息で言い合いをしそうになるのを止めた。

「と言うことで、どこのどなたなのかと言うことはさておき、応援をしてもらっているのなら、それは素直に受け取ればよろしいんじゃないかしら?」
「でも、ダージリン様みたいに、馬鹿にする意図があるかもしれませんし」

 拗ねた感じにルクリリは腕を組んで見せるけれど、ダージリンのこれは、馬鹿にしているというよりも、“溺愛している”の方が正しい。伝わりにくいのが残念なところ。

「あら、私がルクリリを馬鹿にするために、わざわざ応援していると言う手紙を書いて、下足箱の中に入れた、とでも?」
「げっ?!ダージリン様、マジですの?!!!」
 ローズヒップの驚きの声と、ややこしくなるから黙って欲しいと言わんばかりの、2年生たちのため息に上下する肩。アッサムはローズヒップに向けて、人差し指を唇に当ててアピールして見せた。


 黙りなさい、と。


「ダージリン様が、そんなまどろっこしいことするわけないじゃない」
「そうよ、第一、ダージリン様がわざわざルクリリの下足箱に手紙を入れると思う?場所だってご存じないはずだわ」
「本当は、ルクリリの自作自演じゃないの?」
 1年生たちは手も上げずに、次々に発言し出した。隊長といえどもクラスメイト。彼女たちとルクリリの関係は、ダージリンと3年生のクラスメイトとはずいぶん違うようだ。どっちがいいのか悪いのか。決して3年生の仲は不仲ではない。良くも悪くも、ダージリンは最初からリーダー気質だったし、クラスは全て、ダージリンのことを尊敬していた。戦車道に限って、だけど。
ともあれ、ルクリリの自作自演はあり得ないだろうと信じたいが、アッサムには1年生の教室内での様子はわからない。先輩に見せる態度と、クラスメイトとでは、彼女だって当然違うだろうから、クラスメイトの前でファンレターの存在をアピールして、虚勢を張りたい事情があるなんていう可能性も、ゼロではない。

 ………まぁ、ゼロでしょう。

 アッサムの知っている限り、あの子はつまらない見栄やプライドと言うものがない。そこが良いところだ。ダージリンが溺愛しているのは、そのあたりなのだから。


「そんな自作自演をしたものを、ダージリン様たちの前で見せるわけがないだろ~!」
 顔を赤くして拳を作っても、誰も本気じゃないのだ。もう、これはただの遊び。ややこしくして楽しもうとしている、ダージリンの思うつぼだ。
「そもそも、下足箱に入れると言うことは、戦車道の1年生の誰かって言うのは間違いないんじゃないの?」
 発言したかった様子のグリーンが、ルクリリ“隊長”に向けて手をあげた。
「あら、グリーン。そんなの情報処理部にかかれば一発だわ。その理屈で言えば、ルクリリの出席番号を知りえる人間が全員対象になるわ。戦車道の全学年、情報処理部、ルクリリと交流の深い整備科だって」
「アッサム様は今更、2、3年生まで可能性を広げるおつもりで?」
「…………まぁ、それはないわね」


 本音を言えば、内容を深く知りたいところ。ルクリリの言う応援していると言ったことだけなのか、それとも、ルクリリが隠しているだけで、本当はラブレターの類なのか。


「あっ!あの!下足箱に書かれてある番号と、私たち戦車道1年生の出席番号って、グチャグチャじゃなかったですか?」
 ニルギリが重要なことを思い出したようだ。1年生たちは、確かにそうだった、とざわざわし始める。


「どういうことなの、ニルギリ?」

 面白くなってきたと言いたげに、キラキラになる瞳。ダージリンは立ちあがって、ついにミーティングルームのホワイトボード前に向かって歩いて行ってしまった。もう、とっくに引退して、隊員の前に立つ役目を終えたと言うのに。なんら試合の反省会と関係のないこんな時まで。いえ、だからこそなのだけど。

「あ、……えっと、ローズヒップが下足箱を2つ分占領しているのと、あと背の低いメンバーで上の方だった人が何人か、場所を変えてもらったり、何だかんだと結構、バラバラなんです。たぶん、ルクリリは出席番号とは違う番号を使っています」
「それは本当なの、ルクリリ?」

 だとしたらもう、それを知っていたうえでルクリリの下足箱に入れたのなら、戦車道1年生の中に“犯人”がいると確定されたようなもの。ペコと、犯人を捜したがるローズヒップ以外。この、どうでもいいようなよくないようなやり取りは、何だったのだろう。

「ほ、本当です。私はえっと、全然違う所を使っています」
「それを知っている人物は?」
「うちのクラスだけ、のはず」
「情報処理部は知っていて?」
 アッサムの隣で、グリーンは腕でバツを作ってダージリンにアピールしている。そんな内部事情をわざわざ調べるほど、情報処理部は暇じゃない。


「………と言うことは、やっぱりこれはその、私って実は嫌われているとかですか?」

 応援していると書かれてあったのに、何を今更ルクリリは落ち込んでいるのだろう。1年生はみんな、微笑ましいくらい凄く仲がいい。ダージリンだって、違う学部の同学年の人からファンレターをもらったこともあるのだから、そう言う類と思えばいいのに。

「あら、嫌われているわけじゃないでしょう?応援されているのでしょう?」
 ダージリンはルクリリの手元の手紙を勝手に奪い、その封筒をマジマジと見つめた。立ち上がってルクリリの隣に行ったのは、現物確認のためなのかもしれない。
「でも、うちのクラスの子は、私のことをルクリリ隊長なんて呼びませんし。こういうのを出して私が浮かれている姿を見て、笑いたい、……とか」
「さぁ、どうかしらね?本気でそう思っているのなら、あなたは人を見る目がないわね。クラスメイトに対して、そう言う疑心暗鬼を抱くなど、隊長の器じゃないわ」
 ルクリリの手元に返した封筒。ダージリンは日ごろ、隊員の日報を読んでいたから、文字を見て誰なのかを調べようとしたのだろうか。

 否、そもそも、1年生だと本当に思っておられるのかどうか。


「…………素直に文面通り、応援されているのだと思ってもいいのですか?」
「さぁ?自分で決めたらいいことよ。私なら、”他校の生徒からもらったファンレター“を、こんな風に晒しだす真似はしないけれど」


 最初からそう思っていたのなら、アッサムがうちの生徒かどうかを検討するべきと言ったときに、どうして賛同してくれなかったのだろう。

 楽しみたいから、でしょうけど。

「えっと、つまりは1年生の誰かが、他校の生徒にファンレターを渡すことをお願いされて、手渡しせずに下足箱に入れた、と言うことなの?」

 シナモンはグリーンに確認を取るように聞いて、グリーンは面白くないけれど、それで合っていると答えた。彼女たちは、どういう結末であれば面白いと思ったのだろう。

 たぶん、アッサムが考えている通り、誰かがラブレターを書いたと言うことであれば、面白かったのだろう。

「と言うことで、他校からファンレターをもらうほど、カッコいいルクリリ隊長。ズタボロに負けたプラウダとの練習試合の反省会を、そろそろ始めたらどうかしら?」
「…………他校の子からだって、ダージリン様は初めからわかっていたんじゃ?」
「当たり前でしょう?この私がまだ在校生としてここにいるのに、ルクリリを隊長と呼ぶ生徒がいると思っているのかしら?明らかに他校の生徒でしょう。騒ぎ立てるほどのことでもなく、すぐにわかることだわ」

 随分と偉そうに胸を張って、イラっとした表情のルクリリの頭を撫でるその手。無実をアピールしていたペコの肩を叩いて、コントは終わったと言うように、ダージリンは檀上を降りた。



「バニラ。お知り合いには、ちゃんと名前を書かないと、ルクリリからの返事はもらえないと伝えておきなさい」
「…………ご迷惑をおかけしました、ダージリン様」
「あら、とても楽しかったわ」

 どうして、バニラが置いたところまで見抜いてしまったのだろうか。アッサムは全員の背中しか見えていないから、表情まではわからない。壇上に立った時に、明らかに様子が違うということが見て取れたと言うのだろうか。だとしたら、どうしてルクリリには、それがわからなかったのだろう。

「え、バニラが置いたの?!」

 驚いているあたり、表情ではわからなかったようだ。見ていなかっただけかもしれないけれど。

「……………その、中の手紙に名前を書いたって言ってたから。それに、手渡しをして、他の人が誤解をして、変なことになったら嫌だなって思って……騒ぎになるなんて思わなかったの」

 ルクリリは、まだまだ洞察力がない。ダージリンが数分前に立っただけで見抜いたと言うのに。最初から、態度で見抜こうと言うつもりがなかったのだろう。アッサムの隣に戻ってきたダージリンは、してやったりと言わんばかりにアッサムを見つめてくる。



 顔が“褒めて”と言っていた。




「バニラは、相当気まずい顔だったのですか?」
「ここから見ていて、色々と様子がおかしかったのよ」
「バニラの背中が?」
「ペコよ」
「……ペコ?なぜですの?」
「あら、それは私がペコをいつでも良く見ていたと言う、愛のなせる技と言うことね」

 ヤキモチを焼かせたいと思って、そう言う言葉を使っているのが見え見えで、相手をしたくない。ペコに聞けばいいだけのことだ。と言うか、結局、ただのファンレターで、ルクリリが好きだとかのラブレターの類でもないのなら、どうってことのない話だ。

「あぁ、そうですか」
「あら、それだけ?」
「えぇ。ルクリリも成長しましたね。この時期にファンレターとは」
「ラブレターじゃなくてホッとしたのでしょう、アッサムは」
「……さぁ、どうでしょうか?好きだなんて書かれていたら、ちょっと嫉妬したかも知れませんね」
「まったく、放っておけばいいものを」


 積極的に介入したご自分を棚に上げて、そう言うセリフを言うのだから。
 嫌と言うほどわかっているけれど、ダージリンは本当に変な人だ。

「ヤキモチを焼かせようとしたくせに、ヤキモチを焼くって。……メンドクサイ人ですね、ダージリン様って」
 グリーンは呟きながら、微妙な空気のミーティングルームを眺めて、カメラのシャッターを押した。

 書いた本人が名前を書かなかったと言うことも、かなりのミスだけど、そもそもそう言う手紙を受け取って、大げさに反応をしたであろうルクリリが、一番悪い。バニラが知り合いから頼まれたからと、手渡しをしたところで、やっぱり騒いだのは間違いないだろう。ルクリリの落ち着きのなさが、大したことじゃないことを事件にしたのだ。

 やっぱりまだ、隊長としての器が足りない。色々と。そして、隊長を支えるべき副隊長と、サポートしていかなければならない、1年生のクラス全員も。


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Date:2017/01/31
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