【緋彩の瞳】 ラブレター?!怪事件 END

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

ラブレター?!怪事件 END

「ごめんなさい、ルクリリ。私がちゃんと説明をして、渡してあげたらよかったわね」

 ルクリリたちが随分ダージリン様たちにいじられながら、ランチを取っているのを遠くで眺めていた。アッサム様もダージリン様も揃って、ルクリリの器が小さいことや、仲間が嫌がらせをしているなどと考える浅はかさを嘆いておられて、バニラは心がチクチク痛かった。たぶん、ルクリリの反応を楽しまれているだけなのだろう。それでも、バニラが一番悪いのだ。クラスメイトを不審に思ったルクリリは、別に、何も悪くない。


「本当に、まったくだよ。誰もバニラが私を好きだなんて欠片も思わないのだから、ファンレターを預かったって、堂々と言えばよかったのに」
「……そうね。本当にごめんなさい」

 噂はあっという間に学校内に広まっていて、ランチの時もみんな、ルクリリを見て笑っていた。良くも悪くもそれは、本当に愛されキャラと言うことなのだけれど、それでも、ダージリン様と並ぶと、どうにもこうにも風格が違うものだから。もしかしたら、ルクリリはそこを気にしているのかも知れない。ルクリリにはルクリリの良さがあるけれど、やっぱりダージリン様とは全然タイプが違うのだ。学校全体がダージリン様のファンみたいな空気だから、その後を受け継ぐには、それなりの重圧もあるだろう。自信があるのかないのか、ルクリリは必死になっている。それでも、やっぱり、ルクリリは代わりじゃないのだ。比較されることは辛いに違いないだろう。疑心暗鬼にさせたのならば、彼女を支えてあげられていないと言う証拠だ。バニラたちが悪い。
 

 友達は、ルクリリがルクリリらしくいたから、ファンレターを渡そうとしたのだと信じている。内容を見ていないからわからないけれど、黒森峰の試合でバニラを助けている姿は、本当にカッコよかったと、目をキラキラさせていた。

 だから、聖グロの隊長なら誰でも憧れているなんて、そこまでミーハーじゃないと思う。

 たぶん、だけど。



「もういいって。差出人の名前もないし、正直、返事もなんて書いたらいいのかわからないし。受け取ったと言うことだけは、書いた本人に伝えておいて。ありがとうって」
「………わかったわ。伝えておく」


 散々、いじられたルクリリは肩が凝ったアピールをしてグルグルと左肩を回しながら、3年生から逃げるように、一足早く食堂から出て行く。バニラはそれを見送って、疑われたペコにも謝ることにした。


「ペコ」
「………バニラ、ごめんなさい。疑ってしまって」
 食器を片付けて、キャンディ様たちと言葉を交わしていたペコを見つけると、視線が重なって駆け寄ってきたペコは、頭を90度下げてくる。
「何?何のこと?」
「私、バニラが気まずい顔をしていたから、てっきりバニラがその、ルクリリに手紙を書いたものだと思ってしまって、それでその、私だと想われたくもないけれど、犯人をさらしだすのも悪い気がして、でもその……。勝手にラブレターみたいな内容を書いたのだと思ってしまっていて。あの時、素直にバニラに聞いていれば、バニラも気まずい思いをせずに済んだのに………」


 ダージリン様たちがからかっているミーティングの最中、ずっと、チラチラと視線が合っていたのは、そう言う理由だったらしい。最初に気まずい顔を見せたのは、確かにバニラだけど、それでちょっと間違えた方向に理解を示したペコは、無実の証明の上に、バニラが“ラブレター”を書いたと思い込んでいて、色々と気を使ってしまったようだ。

「あの、流石に私がルクリリにラブレターを書くなんて、ありえないと思うわよ?」

 逆立ちしても、脅されても、残念ながら恋愛感情を持ちえない。ルクリリはバニラにとって、隊長というよりも、戦友だ。もちろん、これから隊を率いる立場に立って尊敬しているが、恋などない。

「ですよね……。いえ、ちょっと気まずい顔をしているし、ルクリリは正義感が強いから、絶対にラブレターだとは言わずにファンレターと押し切るかもしれない、みたいなことも思ってしまって」

 何はともあれ、ダージリン様とアッサム様がちゃんと、他校の生徒に間違いないと言ってくださっているし、バニラもプラウダ高校の生徒から預かったものだと、みんなに説明をして、全員がそれを信じてくれたのだ。ペコが気に病むことはない。クランベリーは、プラウダの友達のことを、名前を書き忘れるなんて、彼女らしいと笑っていた。


「ペコって、優しいわね」
「はい?」
「ううん。こっちこそ、騒ぎの発端は、私と私の友達だから」
「その、バニラのお友達は、本当にファンレターを書いたんですか?あのルクリリのことを、本気でカッコいいとか思っているのなら、バニラから目を覚ますように言っておいた方がいいと思いますけれど」


 本気の目で見上げてくるペコは、握りこぶしを両の手で作っている。バニラの友達を真剣に心配しているのか、それとも……何か別の理由でもあるのだろうか。


 まさか、嫉妬とか?
 そんな、まさか。


「私たちはきっと、とても身近過ぎて、ルクリリの良さに気が付いていないだけかもしれないわよ?」
「………見えない部分が大きいって、怖いですよね。ある意味、羨ましいような」



 嫉妬なの?なんて聞いたら、どんな顔をするのだろう。顔を真っ赤にしたら、それはルクリリのことを好きと言うことになるのだろうか、でも本気で怒っても顔を赤くするだろうし。


 ペコはダージリン様から、メンドクサイという称号を、まさか受け継いでいたりなんてこと。


「………まさかね」
「どうしました?バニラ」
「ううん、何でもない」


 何だかメンドクサイ気がして。
 もう何も考えない方がいい。

 豪快シスターズにもバニラにも、1年生たちには色恋なんて、全然似合わないのだから。



「読み返しているんですか?」
「うん。なんて言うか、テンプレート的なファンレターだけど、カッコよかったって書いてある。無様に負けた練習試合なのにね」
「そうですか」
 ローズヒップがお風呂に入っている間、先にお風呂に入って髪を乾かし終わったルクリリが、ベッドに寝そべりながらファンレターを広げているものだから、ペコはそのベッドに座って、それほど嬉しくなさそうな顔を不思議に思って眺めていた。
「カッコよかったって言われてもな」
「嬉しくないんですか?」
「………カッコ悪いことじゃん?状況が判断できずに自分で白旗をあげて試合を放棄するのは、憧れを集める行動だと思わない」
 同じチャーチルの中にいたペコは、ルクリリらしい判断で、誰にでも出来るものではないと素直に尊敬したが、隊員に向かって頭を下げていたルクリリは、そのことでカッコいいと想われたいわけではないだろう。少なくとも、カッコいいと想われたくて取った行動ではないのだから。
「書いている人は第3者の立場ですから、そこまで考えなくてもいいと思いますよ」
「………どうせなら、勝った試合を観てファンレターを書いて欲しいな」
「今のところ、負けだらけですね」
 とはいっても、ダージリン様は強い相手を選んでルクリリに勉強させているのだ。そのがむしゃらになっている姿もきっと、ファンを作ったに違いない。

「あ~ぁ。何だかな。嬉しいような、嬉しくないような。別にファンが欲しいわけじゃないしな。ダージリン様はこういうのをもらって、どうされていたんだろう?」

 ダージリン様宛に届く手紙の類は、危険物が入っていないかのチェックを受けた後、いつも隊長室に届けられていた。ペコの記憶では、ダージリン様が知り合い以外の手紙を開けたことはないはずだ。捨てたかどうかもわからない。読まずに、どこかに置いたままと言う可能性は高いだろう。

「最初で最後の1枚になるかもしれませんよ?」
「うわ~。夏の大会にすら出ていないのに?」
「がっかりしました、なんて言う抗議の手紙が届くかも」
「やめてよ、隊長をやめたくなるじゃん」

 隊長と副隊長は立場が違う。背負うもの、見える世界、何もかもが違う。アッサム様がおっしゃっていた。ペコとローズヒップができることは、隊長を守り、隊長を支え、隊長を尊敬し続けることだと。目に見える重圧よりももっと、見えないものを背負うその姿から、決して目をそらしてはならない、と。

「大丈夫ですよ、ルクリリ。私たちがいるじゃないですか」
 寝そべっているその隣に、ペコも寝転がってみた。知らない誰かがルクリリのファンでいてくれるのなら、せめて、他の学校からはカッコいいルクリリとして見えるように、ちゃんとペコたちが支えてあげないといけない。
「………そうだね。別に他校のファンとかいらないかな。まずは聖グロの生徒に、私がちゃんと隊長何だって言うことを認めてもらう所から始めないとね」
「嫌でも、そうなりますって」
「まったく、卒業間近だと言うのに、ダージリン様はあれだもんな」
「あんな風には無理だと思いますよ。入学した日から有名人だったそうですし」


「あ~~!!!なんだかな~~~!!!!!」


 ルクリリは隊長だ。でも、ルクリリを隊長として支えている土台が脆いから、ルクリリがこんな風に思ってしまうのだ。比較相手がダージリン様なのは、どうしようもないけれど、でも、アッサム様のように、隊長の傍で隊長を信じて、隊長を支え続ける存在になれているかどうか。きっと、ペコとローズヒップは全然足りていない。アッサム様のような、周りの人をうまくコントロールして、隊長が気持ち良く使命を果たせる環境を整えられていない。


「私とローズヒップがもっとしっかりしたら、きっとルクリリも隊長らしくなれますよ」
「…………そうだといいね。期待してる」
「はい」


 ファンレターを電気スタンドのすぐ傍に置いたルクリリは、腕をあげて大きく伸びをした。


「あ~ぁ………ラブレター来ないかな~~!!!」



「無理だと思いますよ」



 来たら来たで、今回以上の騒動になるような気がする。

 果たして、聖グロの戦車道隊長として、そう言う手紙の類は来ない方がいいのか、大量に来た方がいいのか、さっぱりわからない。ニヤニヤしながら、隊長室の椅子でふんぞり返ってラブレターの束を積んでいるなんて。

「何だよ、ちくしょ~!」
「下品な言葉、使わないでください」


 …………そんなルクリリは、やっぱり想像できないのだった。
 


関連記事

*    *    *

Information

Date:2017/01/31
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/854-486b1240
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)