【緋彩の瞳】 だって、恋人でしょ? ③

緋彩の瞳

ダージリン×アッサム〔ガルパン〕

だって、恋人でしょ? ③

バニラ様のケーキが焼き上がり、それからしばらくした後、やっと生地が出来上がったアッサムは、小さなカップにちょっとずつ生地を流し込んでいった。1つ1つ計量をして平等にしようとしたら、オレンジペコ様に不要なことだと止められた。何となく同じでいいと言われて、そう言ういい加減なことが嫌なのだと伝えても、だったら、一番少なさそうなものをバニラ様に渡せばいいことだと言われてしまう。均一に火を通すことが大事だと言えば、そもそも部屋にあるオーブンは、計ったように均一に火を通すことが難しいと言われた。生焼けじゃなければいいでしょうって。

 最後は時計を見なさいと言われ、諦めが付いた。ここまでにすでに、2時間半。本当なら、もう焼き終わっているはず。なんだったら、夕食に向かっている時間。

「バニラ様は?」
「さっさと夕食に行ったわ」
「そうですか」

 お茶を飲んで静かにしておられると思っていたが、いつの間にかいなくなっていたなんて。しかも、ご自分のケーキを放置したまま。お姉さまとの夕食がそんなに大事なのだろうか。

 オーブンに入れて、オレンジペコ様が温度と時間をセットしてくださったので、その間、じっとしゃがみ込んで睨んでいようと思ったら、頭を叩かれた。
「そんなところで見守っていても、どうしようもないわよ」
「………はい」
「片づけてしまいましょう。焼きあがったら、熱を冷ましている間に食事をしましょう」
「はい」

 そう言えばこんな時間なのだから、ダージリンが怒っているかもしれない。夕食は別で食べてと言ってないのだ。ムッとして待っているだろうか。携帯電話を開くと、気が付かなかった着信がいくつも入っていた。掛けてみても、今度は出てくれる様子がない。

 メールが1通入っている。

「先に食べておきます」

 シナモンとそのまま、ご飯を食べに行ったのだろうか。アッサムは出来れば、疲れ果ててしまって食べずに寝てもいいくらいだけれど、まだ、生クリームを表面に塗ったり、木苺を上に乗せたりと、やらないといけないことがあるのだ。

 あんまり、オレンジペコ様からアドヴァイスをもらった覚えがないし、多分、一応は全部自分で作った。ダージリンにも胸を張ってそのことを言える。

「アッサム、遅いわね」
「…………そうですわね」
「電話、したの?」
「出ませんわ」

 アッサムの携帯電話を何度も鳴らしたけれど、一向に出る様子がなかったから、メールだけを残して食堂に向かった。きっとまだ、オレンジペコ様とのケーキ作りが終わっていないのだろう。もうこんな時間だと言うのに。まさか、いろんな人に配るために大量に作っているわけでもないでしょうから、きっとまた、計量に情熱を燃やしているのだろう。とはいえ、そのことを笑いでもしたら最後、明日のヴァレンタインには、手作りのケーキをもらえないことになる。

「バニラ様はどうされましたの?」
「さぁ?どこかに行ってるんじゃないの?」
「そうですか」
「昨日、バニラと遊んだのでしょう?」
「えぇ、ノエルでごちそうになりましたわ」
「バニラは夜遅くまで寝込んでいたわ」
「そうですか。おいしそうに召し上がっておられたのに」

 幹部席に行くと、アールグレイ様がお1人でいらした。ここにダージリンと2人で座ったところで、笑顔を交わして食事をすると言う相手ではないけれど、目が合ったのに別の席に移動なんて出来る訳もなく、する理由も見当たらず、隣同士に座ったまま。


 それにしてもバニラ様、満面の笑みで勝ち誇っていらしたのに、同じように胃もたれで寝込んでいらしたとは。大体、あんな量を食べて無事なわけがないのだ。ご自分ができないことを後輩にやらせようとするなんて、なんて酷い先輩なのだろう。


「あらやだ、2人が仲良く食べているなんて」


 噂をすれば。バニラ様がお1人でやって来られた。ダージリンはお茶を淹れるために一度席を立つ。

「バニラ。オレンジペコはどうしたの?」
「アッサムとデート中よ。あれでは、夕食には間に合わないと思うわ」

 バニラ様、2人がケーキを作っているのを知っておられるご様子。勝手に参加されてきたのだろうか。あまり深く聞くと、また遊ばれてしまいそうなので、知らない振りをしたまま、お茶を出した。

「昨日、2人で映画を観たと言っていたわね」
 アールグレイ様は、どうでもいいと言った感じだ。流石に過保護とはいえ、アッサムがオレンジペコ様と2人でいることまで嫌だなんて思うほどじゃないだろう。アッサムのことだから、イチイチ、アールグレイ様に何をしたのかを話していそうだけれど。と言うか、話しているから、部屋で映画を観たことをご存じでいらっしゃるのだ。
「あらやだ。浮気だわ」
「私もバニラ様と昨日、デートしましたわ。ノエルで仲睦まじく、バーガーを食べたじゃありませんか」
「そうそう、そうだったわね。美味しかったわね」
「えぇ」


 携帯電話が鳴った。きっとアッサムからだろう。夕食をどうするつもりか電話をしていたが、もう先に食べてしまっている。そのことはメールを入れておいた。あの子はあの子で、自分で考えて済ませてくれるだろう。そう言うことでの喧嘩はしないから、特に問題はない。


「明日、ヴァレンタインね」
「そうですわね」
「ダージリンは私に何かくれるの?」
「整備科の1,2年たちが、バニラ様のために色々と用意しているみたいなので。戦車道1年生は、協議の結果、お姉さま方には一切何もしないということになりましたの」
「あらやだ。個人的に何かをしてくれてもいいのよ?」
「遠慮しますわ」

 出来る限り時間を掛けて食事をしても、アッサムもオレンジペコ様も姿を見せる気配はなかった。バニラ様とアールグレイ様も、思い出したときに腕時計を眺めているけれど、20時を回る頃に諦めて、3人で席を立った。

「たぶん、ペコが何か作って食べさせているんじゃない?」
「そうでしょうね、きっと」
「ちょっと、ペコの部屋を見てくる」
「放っておいたら?」
「いいの。ちょっと、用事を残しているから」

 バニラ様はアールグレイ様を置いて、スキップする勢いで先に寮に戻って行かれた。バニラ様はたぶん、アッサムがケーキを作っていることをご存じなのだろう。ダージリンが知らないと思っていて、隠してくださっているのかも知れない。ともあれ、何時間かけて作ったケーキなのだか。オレンジペコ様もお可哀相に。面倒看のいい方だから、最後まで付き合ってくださっているのでしょうけれど、1gの誤差も許せないアッサムに、キレたりされていなければいいのだけれど。


アッサムのケーキが焼き終わり、冷ましている間に夕食を作って食べて、それから丁寧に生クリームを乗せ、木苺を乗せ、1つ1つ箱に入れて。
 真剣な目で几帳面に均一に仕上げるそれを眺めながら、やれやれと何度ため息を吐いただろう。仕上げだけで1時間を費やした。5つの小さめなケーキが並び、ダージリンのものだけが木苺が沢山乗ってある。愛情の差だろう。朝まで冷蔵庫で預かってあげることにして、これでやっとヴァレンタインのケーキは作り終わった。

 バニラとアッサムがそれぞれ用意したのだから、今更オレンジペコが何かを作って渡す必要もなさそうだ。教えた側の人間まで渡したら、2人から睨まれるだろうし。

 アッサムは神経を使い果たしたせいなのか、箱に入れて冷蔵庫に入れたあと、ソファーに座った瞬間眠ってしまった。


「ペコ、ただいま」
「………シー」
「シー?あらやだ………寝てる?」

 バニラが放置したままのケーキは、放っておいたらそのまま乾いてしまうので、オレンジペコが勝手に仕上げのチョコソースをコーティングして、ホールごと箱に入れて冷蔵庫に入れてしまった。結局、半分以上はオレンジペコが作った気がする。バニラは、暇を埋めるためにケーキを作った感じだから、そこまで執着もないだろう。そう言うことで愛情を確認し合うほど、アールグレイとは初々しいものじゃない。

 ……たぶん。

「ケーキは出来上がったの?」
「誰かと違って、全部アッサムの手で作ったわ」
「疲れ果てるくらい、本気だったわけね」
 起きる気配がないので、ブランケットを掛けてそのまま寝かせておいた。バニラとお茶をしながら起きるのを待ってみたけれど、30分経ってもぐっすり眠っている。

「ダージリンに迎えに来させる?」
「いいわ、私が送ってあげる」

 自分のケーキを取りに来たはずのバニラは、部屋に持って帰るとアールグレイに早々にバレるからと、結局、バニラもここにケーキを一泊させる方法を取った。代わりに、目をこすりながらも眠たげなアッサムを背負って、1年生の寮に送ってくれた。妹の世話で馴れているから、なんて。
 バニラのふわふわした髪に顔を押し付けて、がっちり背中にくっついたままのアッサムは、アールグレイの妹分だけど、今だけはバニラの妹のようだ。

「仲がいいのか悪いのか、わからないわね」
「あらやだ、私はアッサムとは仲良しよ」
「昨日はダージリンを虐めていたでしょう?」
「ダージリンで遊んでいたの」
「………はいはい。じゃぁ、お願いね」


 2人を追い出すと、残ったチョコレートの塊がテーブルの上に置かれているのが目についた。こんなブロックのもの、どうやって処理をすればいいのだか。






 バニラ様がアッサムを背負ってダージリンの部屋に来た。一体何事かと思ったけれど、色々あって、オレンジペコ様のお部屋で眠ってしまったらしい。だったらアッサムの部屋に預けたらいいものを、有無を言わせずにダージリンのベッドに寝かせて、ウインク一つ飛ばして帰ってしまうものだから。致し方なく黒いリボンを外してあげて、そのまま寝かせておいた。20分ほどして目を覚ましたアッサムは、まだぼんやりとした顔のまま。
「起きたの?」
「………ダージリン」
「オレンジペコ様のお部屋で寝ていたのを、バニラ様が背負って連れて来て下さったのよ」
「バニラ様?」
 不思議そうに首をかしげているアッサムは、ダージリンの部屋だとわかったようだ。ケーキを作り終わって、疲れて横になったところで記憶が消えてしまったらしい。

「上手くできたの?」
「はい」
「そう。明日、楽しみにしているわね」
「えぇ」
「………もう、このまま泊まっていけばいいわ」

 別に一緒のベッドで眠ることが嫌と言うわけじゃないけれど、今のところまだ、同じベッドで一晩を過ごしたことはない。隣同士の部屋。眠たくなるまでどちらかの部屋でくつろいで、お休みと言って自分たちの部屋に戻るのがパターン化しているのだ。なんとなく、そうなっている。

「でも、お風呂に入ってしまいます」
「ここのを使いなさい。着替えを取ってくるといいわ」
「………じゃぁ、お言葉に甘えて」




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Date:2017/02/20
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