【緋彩の瞳】 祈り

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

祈り

壊れ行くものがあるとすれば
それは、未来だとあなたは言った


嘆きを叫ぶことなどしない
あなたに見せるこの水鏡には

未来など映えなくても


あなたはただ、微笑みもせず
頷きもせず



祈ることが許されるのならば
あなたの死が安らかであるように、と


幾千の星の運命を背負うあなたに
再びの命が与えられるのなら


その傍にいてもいいと
赦しが得られるのなら

誰に祈れば
何に祈れば

月ほど憎いものはない
月ほど美しいものはない

だけど
あなたほど愛しいものはない

届けばいいのにと
私は

あなたに祈るのでしょう



幾千の日々、はるか遠く
水鏡に映るあなたに想いを馳せて








「おはよう、みちるさん」
「………レイ」
「珍しい。いつも私より早起きなのに。どうしたの?ずっと険しい顔して寝てたわ」


紫がかった長い髪
シャラシャラと音を立てて、みちるの頬をくすぐる
緩やかに重い頭をほんの少し振って、眠っていたのだ、と思い出す

鏡に映っていた、マーズ様の顔
強く眩しい焔の瞳
星を焼き尽す魔術を唱える唇
指先から放たれる赦し


遠く、はるか遠く
永遠よりはるか遠く

あの頃、鏡越しにただ
愛していた

ただ、祈り続けた
彼女に、祈りをささげ続けた


「ごめんなさい。何だか変な夢を見て」
「変な夢?」
「………えぇ、そう、夢」

口に出して説明をしても、火野レイにはわからないだろう

あなたは
私の神だったのよ、と


「夢見心地が悪い朝なのね。一日が始まると言うのに」
「レイがキスをしてくれたら、今から幸せな一日が始まるわ」


 
遠く、あなたに捧げた祈り

 
二度目の命など望まなかったのに
あなたをこの世界に引きずり込んだのは、きっと私の祈りのせい

全身に血を浴びても、神であり続けたあなたを
その全てを崇拝していた
そして叶うものなら
その御心に寄り添いたいと祈った


「みちるさん、夢で誰と会っていたの?」
「わからないわ……人じゃないかもしれないわね」
「神様とでも?」
「そうかもしれない」

唇に落とされた赦し
戦神の冷たい唇
焦がれた唇

「みちるさん……夢でマーズに会わないで」
「……えぇ」
「神は罪を犯して下界へ落とされたの」
「私が引きずり落としたのよ」
「…………そうなの?」
「えぇ」


生まれ変わることなど、望まなかったのに


言いたげな瞳から逃れるように、その長い髪を引っ張り抱き寄せ、腕の力を込める

愛していると告げるたびに襲う眩暈
海を漂うようにふわふわと舞う

傍にいてと神に祈った
これからも祈り続けるの

腕の中にいる私の神
私だけの神でいて欲しいと


「じゃぁ、責任を取って」
「急いで朝ごはんを作るわ」
「お弁当もね」
「喜んで」

無邪気を装うレイの瞳
焔の瞳がみちるを捉え

また一つ、罪が増える






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Date:2017/08/02
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