【緋彩の瞳】 if.....

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

if.....


「レイ」
いたずらを覚えた幼児のような笑みに罪はないけれど、そうやって名前を呼ぶときはいつだってレイを困らせる。嬉しいような、困ったような。
「何?」
「もしもの話をしてもいい?」
「仮説は嫌い」
速攻で話を切り上げようとすると、頬に空気が溜められてゆく。そういう表情をされたからといってひるんだりはしないけれど。
「まぁ、聞きなさい。お昼ご飯作って差し上げなくてよ?」
「そんな交換条件、たいしたことじゃないわ」
「ずーっとよ?この先二度とレイにご飯なんて作ってあげない」
子供じみたことを言って。レイから作ってなんてお願いしたことは一度もない。勝手に作って強引に食べさせられたことは両手では足りないほどだったけれど。聞く気はないけれど、耳を塞いでも、この耳は彼女の声をキャッチするように作られているから仕方がない。レイはソファーに腰を下ろしたまま口に蓋をした。勝手に話して頂戴っていう合図。
「もしも、電話も通信機もインターネットも使えなくなったら、レイはどうする?」
「何をどうするの?」
向かい合って座ることなどしたことがない、コの字型に並んだ高級ソファー。隣に座るみちるがいつものように髪を撫でてきて。興味ない話をしていても、隣にいてくれたらなんとなく心地がいい。
「だから、あなたはどうやって私に会いに来るの?」
「ここに来たら会えるじゃない」
「あら、私がここにいるとは限らないわよ?」
「待っていれば帰ってくるでしょう?」
「どこかで何かの事件に遭遇しているかもしれない」
「だったら、私も気が付くわよ」
「敵だとは限らないじゃない」
「じゃ、ご愁傷様ね」
「……レイ、なんとしてでも私に会いに来る気はないのね」
何を期待しているのか、わかるようでわからない。
「仮説のことでしょう?そんなことありえないわよ」
「でも、1つだけわかったわ」
みちるの一人で勝手に納得したような頷き。またまた、とんでもないことを考えていそうな瞳。
「何?」
「レイにとって、私たちの愛を確かめるには絶対に何か道具が必要だって言うことね。その程度なのね」
「その程度ってどの程度なのよ」
彼女にとっては挑発しているつもりなんだろうけれど、そんなつまらないことで遊ぶのは好きじゃない。
「あら、わからない?日本中、世界中を飛び回って探し回ってでも、あなたは私を探しに来るつもりはないのでしょう?イージーな通信手段が経たれたら、それで終わりなのでしょう?」
「さぁね?私から言わせてもらえば、みちるさんから私に会いに来るに決まっているのだから、私はここで待っているのが一番確実だと思うけれど?違う?」

あ、拗ねた。

そう思ったけれど、言ってしまったものは取り消すことは出来ない。
「レイの私に対する愛情は、本当に小さいのね」
「自分から話題を振っておいて、勝手に決めないで」
「あら、だってそうでしょう?探しに来てはくれないのでしょう?」
「何なの?だいたい、何も使えない状況に置かれておきながら、みちるさんはホイホイどこかへ遊びに行くわけ?そっちのほうがどうかしているわ」
口を“へ”の字にしたままじっと見つめてくる。
「…もう、この話はやめるわ。がっかりしちゃった」
自分で話を振っておきながら勝手にショックを受けるなんて、案外面白い人ね、なんてレイは無責任に関心をしてみる。ソファーから立ち上がってふらふらキッチンに向かう背中には、期待はずれと大きく書かれてあった。
彼女が望んでいる答えなんて、絶対に言ったりしない。
仮説は嫌い。
だって、もし本当にそうなったら、答えのとおりに動かなきゃいけないなんて。
彼女を驚かせることも出来ないし。
だからそのときになったら、答えを教えてあげないと。
でも、本当に何もしないなんて思っているんだとしたら、それはちょっと心外。身に覚えが沢山あるから仕方ないけれど。
「ちゃんと、探し出してあげるわよ」
本人に聞こえない程度に呟いてみたのに。
「レイ、でも私は絶対にあなたを見つけ出してみせるわよ」
力んだ声がキッチンから飛んできたから、レイは曖昧に頷いて照れを誤魔化すのが精一杯だった。





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Date:2014/02/11
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